糖尿病の薬で低血糖になる?低血糖を起こしやすい薬と起こしにくい薬

糖尿病の薬を始めるとき、

「血糖値が下がりすぎるのが怖い」
「糖尿病の薬を飲んでいると低血糖になるの?」
「低血糖が心配だから、薬はできるだけ飲みたくない」

と不安になる方がいます。

確かに、糖尿病治療では低血糖に注意が必要です。

しかし、

すべての糖尿病薬が同じように低血糖を起こすわけではありません。

低血糖を起こしやすい薬もあれば、単独で使用した場合には低血糖を起こしにくい薬もあります。

大切なのは、

「糖尿病の薬は怖い」と考えることではなく、自分が使っている薬の特徴を知ること

です。

低血糖とは?

一般に、血糖値が70mg/dL未満になると低血糖として注意が必要です。症状がなくても血糖値が低くなっている場合があります。

低血糖になると、

冷や汗
手のふるえ
動悸
強い空腹感
ふらつき
集中しにくい

などの症状が現れることがあります。

さらに血糖値が低下すると、

反応がおかしい
意識がもうろうとする
けいれんする
意識を失う

などの重い症状につながることもあります。

低血糖を起こしやすい薬は?

特に注意したいのが、

インスリン

です。

インスリンは血糖値を下げる作用が強く、食事量や運動量などとのバランスが崩れると低血糖を起こすことがあります。

飲み薬では、

SU薬(スルホニル尿素薬)

も低血糖に注意が必要な薬です。

SU薬は膵臓からインスリンを分泌させることで血糖値を下げます。

また、

グリニド薬(速効型インスリン分泌促進薬)

もインスリン分泌を促す薬なので、低血糖に注意が必要です。

低血糖を起こしにくい薬もあります

一方、

メトホルミンなどのビグアナイド薬
DPP-4阻害薬
GLP-1受容体作動薬
SGLT2阻害薬
チアゾリジン薬
α-グルコシダーゼ阻害薬

などは、単独で使用した場合には一般に低血糖を起こしにくい薬です。

たとえばDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、血糖値が高いときにインスリン分泌を促す働きを利用するため、単独使用では低血糖が起こりにくいという特徴があります。

ただし、

「起こしにくい」=「絶対に起こらない」ではありません。

ほかの糖尿病薬との組み合わせによって、低血糖の危険性が変わることがあります。

薬の組み合わせも重要です

単独では低血糖を起こしにくい薬でも、インスリンやSU薬などと一緒に使用すると低血糖に注意が必要になる場合があります。

たとえばDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬も、SU薬などと併用すると低血糖への注意が必要です。

ですから、

薬の名前だけではなく、「何と何を組み合わせて使っているか」

も大切です。

どんなときに低血糖になりやすい?

同じ薬を同じ量使っていても、低血糖が起こりやすくなることがあります。

たとえば、

食事を抜いた
食事量がいつもより少なかった
食事時間が遅れた
いつもより長く運動した
激しい運動をした
飲酒した
体調を崩して食べられなかった

などです。

特にインスリンやSU薬などを使用している方は、食事や運動とのバランスに注意が必要です。

運動した日は低血糖に注意

運動すると筋肉がブドウ糖を利用するため、血糖値が下がりやすくなります。

特に、

インスリンを使用している方
SU薬を使用している方

では注意が必要です。

長時間の運動では、運動中だけでなく運動後に低血糖が起こることもあります。

運動するからといって自己判断で薬やインスリンを減らすのではなく、低血糖を繰り返す場合には主治医に相談してください。

高齢になると低血糖に気づきにくいこともあります

高齢の方では、

「低血糖なのに典型的な症状が出ない」

ことがあります。

ふらつき
ぼんやりする
元気がない
いつもと様子が違う

といった症状として現れる場合もあります。

また、腎機能が低下すると、薬の種類によっては作用が長くなったり、低血糖を起こしやすくなったりすることがあります。

高齢の方や腎機能が低下している方では、

HbA1cをできるだけ低くすることだけを目標にしない

ことも大切です。

低血糖になったらどうする?

意識があり、安全に飲み込める場合には、ブドウ糖などの速やかに吸収される糖質を摂取します。

可能であれば血糖値を確認し、その後も症状や血糖値を確認します。

以前の記事でもお伝えしたように、低血糖への対応方法については普段から主治医や医療スタッフと確認しておくと安心です。

なお、α-グルコシダーゼ阻害薬を使用している場合の低血糖には、砂糖ではなくブドウ糖を使用することが重要です。 この薬は砂糖などの分解・吸収を遅らせるためです。

意識がない人に食べ物を与えてはいけません

低血糖が重くなると、

意識がもうろうとする
けいれんする
意識を失う

ことがあります。

このような場合、

無理に口からブドウ糖や飲み物を与えてはいけません。

誤嚥する危険があります。

周囲の人は救急対応を行い、グルカゴンを処方され、その使用方法について指導を受けている場合には、その指示に従います。

低血糖が怖いから血糖値を高めにしておけばいい?

低血糖を経験すると、

「もう低血糖になりたくないから、血糖値は高いくらいでいい」

と思うことがあります。

その気持ちは自然ですが、低血糖を避けるために慢性的な高血糖をそのままにすることが最善とは限りません。

大切なのは、

低血糖を我慢することでも、高血糖にしておくことでもありません。

低血糖を繰り返すのであれば、

薬の種類
薬の量
食事時間
運動量
腎機能
血糖管理の目標

などを見直す必要があるかもしれません。

低血糖が起きたら「失敗」ではありません

低血糖になると、

「食事の管理が悪かった」
「運動しすぎた」
「自分の治療がうまくできていない」

と思ってしまう方がいます。

しかし、低血糖は治療内容と生活のバランスが合わなくなっていることを知らせるサインでもあります。

特に低血糖を繰り返す場合には、

「もっと自分が気をつけなければ」だけで終わらせず、治療そのものを見直せないか相談する

ことが大切です。

低血糖が心配なら、自分の薬を確認してみましょう

診察時に、

「私の薬は低血糖を起こしやすい薬ですか?」

と聞いてみてください。

これはとても大切な質問です。

薬の名前をすべて覚える必要はありません。

お薬手帳を利用して、自分が低血糖に注意すべき治療を受けているのか知っておくだけでも役立ちます。

低血糖について覚えておきたい3つのポイント

① 糖尿病の薬すべてが同じように低血糖を起こすわけではありません

② 特にインスリン、SU薬、グリニド薬では低血糖に注意が必要です

③ 低血糖を繰り返す場合には、自己判断で薬を減らすのではなく、治療内容を主治医と見直しましょう

まとめ

糖尿病の薬を使用すると、

「血糖値が下がりすぎるのでは?」

と心配になるかもしれません。

しかし、糖尿病薬によって低血糖の起こりやすさは大きく異なります。

インスリンやSU薬、グリニド薬では特に注意が必要ですが、多くの糖尿病薬は単独使用では低血糖を起こしにくいという特徴があります。

ですから、

「糖尿病の薬は低血糖になるから怖い」

と一括りに考える必要はありません。

まず、

「自分が使っている薬は低血糖を起こしやすいのか」

を知ることから始めましょう。

そして低血糖を繰り返すのであれば、自分を責めたり、自己判断で薬を中止したりするのではなく、主治医と治療方法を見直します。

糖尿病治療では、

血糖値を下げることと、低血糖を避けることの両方が大切です。

安全に、そして無理なく続けられる治療を目指していきましょう。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著.糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂,2024.
  2. 国立国際医療センター 糖尿病情報センター.低血糖.
  3. 国立国際医療センター 糖尿病情報センター.血糖値を下げる飲み薬.