糖尿病の治療を続けていると、
「食事にも気をつけているのに、HbA1cが下がらない」
「薬もきちんと飲んでいるのに、どうして良くならないの?」
と感じることがあります。
HbA1cが思うように下がらないと、
「もっと食事を減らさなければ」
「運動が足りないのでは?」
「自分の努力が足りないのでは?」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、HbA1cは食事だけで決まるものではありません。
食事、運動、薬、インスリンの働き、体調、生活リズムなど、さまざまな要因が血糖値に影響しています。
大切なのは、ただ頑張る量を増やすことではなく、「なぜHbA1cが下がらないのか」を考えることです。
この記事では、HbA1cがなかなか改善しないときに考えたいポイントを、わかりやすく説明します。
HbA1cの変化には少し時間がかかる
まず知っておきたいのは、HbA1cは今日の血糖値だけを表している検査ではないということです。
HbA1cは、過去1~2か月を中心とした最近の血糖状態を反映する指標です。
そのため、食事や運動を見直したり、治療を変更したりしても、その効果がHbA1cに十分表れるまでには時間がかかります。
数日頑張ったからといって、すぐにHbA1cが大きく下がるわけではありません。
反対に、
「今月もHbA1cが下がらなかったから、もっと頑張らなければ」
と急いで生活を厳しくしすぎる必要もありません。
食事だけが原因とは限らない
血糖値が高いと、
「食べすぎたからだ」
と考えがちです。
もちろん、食事の量や内容は血糖値に影響します。
しかし、それだけではありません。
たとえば、
・食事をする時間
・間食や飲み物
・運動量
・睡眠や生活リズム
・発熱や感染症などの体調不良
・ストレス
・糖尿病の治療内容
なども血糖値に影響します。
さらに糖尿病では、インスリンが十分に分泌されなくなったり、インスリンが効きにくくなったりすることがあります。
そのため、
「HbA1cが高い=食べすぎ」
とは限りません。
自分では気づきにくい時間帯に血糖値が上がっていることも
病院で測った血糖値がそれほど高くなくても、別の時間帯に血糖値が上がっていることがあります。
たとえば、朝の空腹時血糖が良好でも、食後に血糖値が大きく上昇していることがあります。
反対に、食後はそれほど高くなくても、朝の血糖値が高い方もいます。
つまり、HbA1cが高いときに大切なのは、
「血糖値が高いかどうか」だけではなく、「いつ血糖値が高くなっているのか」を考えることです。
必要に応じて、自宅で測定した血糖値なども参考にしながら、主治医と原因を考えていきます。
同じ治療を続けていても血糖値が変わることがある
「以前は同じ薬でHbA1cが良かったのに、最近少しずつ上がってきた」
ということもあります。
糖尿病の状態は、ずっと同じとは限りません。
時間の経過とともにインスリンを分泌する力が変化したり、体重や活動量、食生活、体調などが変わったりすることがあります。
そのため、以前うまくいっていた治療が、現在の状態には十分ではなくなることもあります。
これは「治療に失敗した」という意味ではありません。
今の状態に合わせて治療を見直す時期が来ている可能性があります。
薬を飲んでいてもHbA1cが下がらないことはある
糖尿病の薬には、それぞれ異なる働きがあります。
また、同じ薬でも効果の現れ方には個人差があります。
薬をきちんと使用していてもHbA1cが十分に改善しない場合には、治療内容を見直すことがあります。
ただし、
「HbA1cが高かったから、自分で薬を増やそう」
と自己判断で薬の量を変更するのは危険です。
薬の変更や調整については、主治医と相談しましょう。
HbA1cの数字だけがずれている場合もある
もう一つ知っておきたいのが、HbA1cが必ずしも実際の血糖状態と一致するとは限らないということです。
HbA1cは赤血球に含まれるヘモグロビンを利用した検査なので、赤血球の状態などによって影響を受けることがあります。
たとえば、貧血などで赤血球の状態が変化している場合や、出血、輸血などがあった場合には、実際の血糖状態とHbA1cにずれが生じることがあります。
そのため、
「普段の血糖値とHbA1cがどうも合わない」
という場合には、HbA1cだけで判断せず、主治医に相談してください。
「もっと頑張る」前に原因を考えてみよう
HbA1cが下がらないときに、食事をさらに減らしたり、急に運動量を増やしたりする方がいます。
しかし、原因が別のところにあれば、努力を増やしても思ったような効果が得られないことがあります。
それどころか、極端な食事制限や無理な運動によって、低血糖や栄養不足、体調不良につながることもあります。
そこで、
「何をもっと我慢するか」ではなく、「どこに原因がありそうか」
を考えてみましょう。
食事なのか、食事の時間なのか、運動なのか、治療内容なのか、体調の変化なのか。
原因がわかれば、すべてを一度に変えるのではなく、必要なところから少しずつ見直すことができます。
1回のHbA1cだけで判断しない
HbA1cが前回より少し上がると、がっかりすることがあるかもしれません。
しかし、1回の数字だけで治療全体を評価する必要はありません。
大切なのは、
「上がった」「下がった」だけではなく、これまでどのように変化してきたかを見ることです。
そのうえで、血糖値、低血糖の有無、体調、食事や運動、治療内容などを合わせて考えます。
HbA1cは、患者さんを採点するための数字ではありません。
これからの治療を考えるための手がかりの一つです。
今日覚えてほしい3つのこと
① HbA1cは食事だけで決まるものではない
② HbA1cが下がらないときは、「もっと頑張る」前に原因を考える
③ 1回の数字だけではなく、血糖値や体調、治療内容と合わせて変化を見る
HbA1cが思うように下がらないからといって、すぐに食事をさらに減らしたり、無理な運動を始めたりする必要はありません。
まず、
「自分の血糖値は、いつ、なぜ上がっているのだろう?」
と考えてみることが大切です。
原因を一つずつ整理し、自分に必要なところを主治医と一緒に見直していく。
それが、無理なく長く続けられる糖尿病治療につながります。
