eGFRが60未満と言われたら?腎臓病の可能性と受診の目安を専門医が解説

まず知ってほしい3つのこと

  1. eGFRは腎臓の働きを表す目安です。
  2. eGFRが60未満でも、1回の検査だけで慢性腎臓病と診断できるとは限りません。
  3. 腎臓の状態は、尿アルブミンや尿蛋白、過去の検査結果と合わせて評価します。

健康診断や血液検査で、

「eGFRが60未満です」

「腎機能が少し低下しています」

と言われたことはありませんか?

検査結果に「eGFR 58」「eGFR 55」などと書かれていると、

「腎臓病になってしまったの?」

「このまま腎機能が下がっていくの?」

「将来、透析が必要になるの?」

と心配になる方もいると思います。

まず知っておいていただきたいのは、eGFRが1回だけ60未満だったからといって、それだけで慢性腎臓病(CKD)と診断されるわけではないということです。

一方、eGFRが60未満という結果は、腎臓の状態を確認する大切なサインでもあります。

大切なのは、数値だけを見て判断するのではなく、以前からの変化や尿検査の結果、糖尿病・高血圧の有無などを合わせて考えることです。

この記事では、eGFRが60未満だったときの数値の見方、慢性腎臓病との関係、受診の目安について解説します。

eGFRが60未満とはどういう意味?

eGFRは、腎臓が血液をろ過する力を推定した数値です。

一般的には、数値が低いほど腎臓のろ過能力が低下していることを示します。

成人のeGFRは、次のように区分されます。

GFR区分eGFR(mL/分/1.73m²)腎機能の目安
G190以上正常または高値
G260~89正常または軽度低下
G3a45~59軽度~中等度低下
G3b30~44中等度~高度低下
G415~29高度低下
G515未満末期腎不全

eGFRが60未満の場合は、G3a、G3b、G4、G5のいずれかに該当します。

ただし、これは腎機能の程度を表す区分であり、この数字だけで腎臓病の原因や今後の経過が決まるわけではありません。

eGFRの基本的な意味や正常値、年齢による変化については、別の記事で詳しく解説しています。

eGFRが58・55・50だったら、どのくらい心配?

健康診断でよく見かける数値を例に考えてみましょう。

eGFRが58の場合

eGFR 58は、GFR区分ではG3aに該当します。

60を少し下回っていますが、この数字だけで腎機能低下の原因や今後の進行を判断することはできません。

以前から同じくらいの数値で安定しているのか、今回初めて低下したのかが重要です。

また、尿たんぱくや尿アルブミンに異常がないかも確認します。

eGFRが55の場合

eGFR 55もG3aに該当します。

以前から55前後で安定している場合と、以前は80だったのに短期間で55まで低下した場合では、考え方が異なります。

特に短期間で大きく低下した場合は、急な腎機能低下の原因を確認する必要があります。

eGFRが50の場合

eGFR 50もG3aに該当します。

eGFR 58や55と同じ区分ですが、腎機能の状態や今後の経過は、尿検査や過去からの変化などによって異なります。

「50だから必ず進行する」というわけではありません。

一方で、eGFR 60未満が持続している場合には、慢性腎臓病として定期的な評価や管理が必要になります。

数字だけで将来を決めつけない

同じeGFR 55でも、

  • 数年間ほぼ変わらない方
  • 徐々に低下している方
  • 尿アルブミンが多い方
  • 糖尿病や高血圧がある方

では、腎機能低下のリスクが異なります。

eGFRは「現在の状態」を知るための指標であり、1回の数値だけで将来を予測するものではありません。

eGFRが60未満なら慢性腎臓病(CKD)?

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の障害や腎機能の低下が慢性的に続いている状態です。

一般的には、次のいずれかが3か月以上続いている場合にCKDと診断されます。

  • eGFRが60 mL/分/1.73m²未満
  • 尿たんぱく、尿アルブミンなど、腎障害を示す所見がある

つまり、eGFRが60未満の状態が3か月以上続いていれば、尿たんぱくが陰性でもCKDに該当します。

一方、健康診断で初めてeGFRが58だった場合、その結果だけでは慢性的な腎機能低下なのか、一時的な変化なのかはわかりません。

そのため、以前の検査結果を確認したり、必要に応じて再検査を行ったりします。

ただし、「CKDの診断には3か月以上の持続を確認する」ということは、「3か月間は受診しなくてよい」という意味ではありません。

短期間で大きく低下している場合や、体調不良を伴う場合には、早めの評価が必要です。

尿たんぱくが陰性なら大丈夫?

健康診断で、

「eGFRは55だけれど、尿たんぱくは陰性だった」

という場合もあると思います。

尿たんぱくが陰性であることは大切な情報ですが、それだけで腎臓に問題がないとは判断できません。

腎臓の状態を知る検査には、それぞれ異なる役割があります。

  • eGFR: 腎臓が血液をろ過する力を推定する
  • 尿たんぱく: 尿にたんぱく質が漏れていないかを調べる
  • 尿アルブミン: 尿に漏れるアルブミンを、より詳しく評価する

特に糖尿病のある方では、尿アルブミンの検査が重要です。

通常の尿たんぱく検査では陰性でも、尿アルブミンの検査で異常が見つかることがあります。

また、尿アルブミンが増えていなくても、eGFRが低下している場合があります。

そのため、糖尿病のある方では、eGFRと尿アルブミンを組み合わせて確認することが大切です。

年齢が高ければ、eGFRが60未満でも問題ない?

eGFRは、一般的に年齢とともに低下する傾向があります。

そのため、高齢になるほどeGFRが60未満の方は増えてきます。

ただし、

「年齢のせいだから気にしなくてよい」というわけではありません。

例えば、同じeGFR 55でも、年齢、尿たんぱく、血圧、糖尿病の有無などによって、必要な対応は異なります。

また、高齢の方では筋肉量が少ないため、血液中のクレアチニンが低めになり、クレアチニンから計算したeGFRが実際の腎機能より高く推定される場合もあります。

必要に応じて、シスタチンCなど別の検査を用いて腎機能を評価することもあります。

年齢だけで判断するのではなく、検査結果を総合的に確認することが大切です。

eGFRが60未満なら、将来透析になる?

「eGFRが60未満になったら、いずれ透析になるのでしょうか?」

と心配される方もいます。

しかし、eGFRが60未満だからといって、必ず透析が必要になるわけではありません。

慢性腎臓病の経過には個人差があります。

長期間ほぼ同じ腎機能で経過する方もいれば、腎機能が徐々に低下していく方もいます。

今後のリスクを考えるうえでは、eGFRだけでなく、尿アルブミンや尿たんぱくの程度、腎機能低下の速さ、糖尿病や高血圧などの状態が重要です。

また、透析を開始するかどうかは、eGFRの数字だけで決まるものではありません。

腎機能の低下に伴う症状や、体内の水分・電解質の状態などを総合的に判断します。

eGFRが60未満という結果だけで、将来の透析を心配しすぎる必要はありません。

ただし、腎臓の状態を定期的に確認し、必要な治療を続けていくことは大切です。

健康診断でeGFRが60未満だったら、どうすればいい?

健康診断で初めてeGFRが60未満と指摘された場合は、次の点を確認しましょう。

1.以前の検査結果と比較する

まず確認したいのは、過去のeGFRです。

例えば、

  • 1年前:62 → 今回:58
  • 1年前:80 → 今回:58

では、同じeGFR 58でも意味が異なります。

以前から少しずつ低下しているのか、今回大きく変化したのかを確認することが大切です。

なお、短期間で大きく低下している場合には、急な腎機能低下の原因を調べる必要があります。

その場合の詳しい考え方は、別の記事で解説しています。

2.尿検査の結果を確認する

尿たんぱくや尿アルブミンに異常がないかを確認します。

特に糖尿病のある方では、尿アルブミンの検査が重要です。

3.血圧や糖尿病の状態を確認する

高血圧や糖尿病は、慢性腎臓病と深く関係しています。

血圧や血糖が適切に管理されているかも確認しましょう。

4.医療機関で相談する

eGFRが60未満と指摘された場合は、かかりつけ医や内科で相談するとよいでしょう。

糖尿病で通院している方は、糖尿病を診てもらっている医師に検査結果を見せてください。

必要に応じて再検査を行い、腎機能の変化や尿検査の結果などを確認します。

eGFRが60未満なら、いつ受診すればいい?

受診の必要性や時期は、eGFRの数値だけでは決まりません。

以前からの変化や尿検査、体調などによって異なります。

例えば、次のような場合には早めの相談が必要です。

  • 短期間でeGFRが大きく低下している
  • 尿たんぱくや尿アルブミンが多い
  • 血尿がある
  • 尿量が急に減った
  • 強いむくみや息苦しさがある
  • 腎機能低下の原因がはっきりしない

特に尿量が極端に少ない、息苦しい、意識の状態がおかしいなどの場合は、速やかな医療機関での評価が必要です。

また、eGFRが30未満の場合には、一般的に腎臓専門医への相談が重要になります。

ただし、eGFRが30以上でも、尿検査の異常や腎機能低下の速さによって、専門医への紹介が必要になる場合があります。

「eGFRが55だから急がなくてよい」「60未満だからすぐに重い病気」というように、数字だけで決めないことが大切です。

eGFRが60未満のとき、生活で気をつけること

eGFRが60未満だった場合、腎臓を守るために生活習慣を見直すことも大切です。

ただし、すべての方に同じ食事制限や治療が必要になるわけではありません。

血圧や血糖を適切に管理する

糖尿病や高血圧がある方では、血糖や血圧を適切に管理することが重要です。

治療目標は年齢や腎機能、ほかの病気などによって異なります。

塩分のとりすぎを避ける

塩分のとりすぎは血圧を上げる要因になります。

無理のない範囲で減塩を意識しましょう。

極端な食事制限をしない

腎機能が低下しているからといって、自己判断でたんぱく質や食事量を極端に減らすことはおすすめできません。

特に高齢の方では、栄養不足や筋肉量の低下につながることがあります。

薬やサプリメントを自己判断で変更しない

一部の薬やサプリメントは、腎機能に影響する場合があります。

ただし、腎臓を守る目的で使用する薬もあります。

薬を自己判断で中止したり変更したりせず、主治医や薬剤師に相談してください。

まとめ|eGFRが60未満でも、数字だけで将来は決まらない

eGFRが60未満という結果は、腎臓のろ過能力が低下している可能性を示す大切なサインです。

ただし、1回の検査だけで慢性腎臓病と診断されるわけではありません。

大切なのは、

  • 以前から低い状態が続いているか
  • 短期間で大きく低下していないか
  • 尿たんぱくや尿アルブミンはどうか
  • 糖尿病や高血圧などがあるか

を合わせて考えることです。

また、eGFRが60未満だからといって、必ず透析が必要になるわけではありません。

検査結果を見て不安になったときも、1回の数字だけで将来を決めつける必要はありません。

現在の腎臓の状態を主治医と確認しながら、これからできることを考えていきましょう。

腎臓を守るために大切なのは、数字を必要以上に怖がることではなく、変化を知り、適切な対応を続けていくことです。


よくある質問(FAQ)

eGFRが58なら腎臓病ですか?

eGFR 58はGFR区分ではG3aに該当します。ただし、1回の検査だけで慢性腎臓病とは診断できません。3か月以上続いているか、尿検査の異常があるかなどを確認します。

eGFRが55なら透析になりますか?

eGFR 55という数値だけで透析が必要になることは通常ありません。腎機能の経過には個人差があり、適切な管理によって進行を遅らせられる場合があります。

eGFRが50なら重い腎臓病ですか?

eGFR 50はG3aに該当します。腎機能の低下はありますが、この数値だけで今後の進行や透析の必要性を判断することはできません。尿検査や過去からの変化なども重要です。

eGFRが60未満でも尿たんぱくが陰性なら大丈夫ですか?

尿たんぱくが陰性でも、eGFRが60未満の状態が3か月以上続いていればCKDに該当します。また、糖尿病のある方では、通常の尿たんぱく検査が陰性でも尿アルブミンに異常がある場合があります。

eGFRが60未満なら再検査が必要ですか?

初めて60未満になった場合や、以前から大きく低下した場合には、医療機関で再検査の必要性や時期を相談してください。短期間で大きく低下している場合には、早めの評価が必要です。


参考文献・参考資料

  1. 日本腎臓学会 編.CKD診療ガイド2024.東京医学社,2024.
  2. 日本腎臓学会 編.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,2023.
  3. 日本腎臓学会 編.患者さんとご家族のためのCKD療養ガイド2024.東京医学社,2024.
  4. 日本糖尿病学会 編・著.糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂,2024.
  5. KDIGO. Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. 2024.

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。検査結果や治療については、主治医・医療機関にご相談ください。