糖尿病の患者さんから、
「糖尿病になると、いずれ透析になるのですか?」
「腎臓が悪くなっているかどうかは、どうすれば分かりますか?」
「血糖値が良ければ腎臓は大丈夫ですか?」
「尿たんぱくが出たら、もう腎臓はかなり悪いのでしょうか?」
と聞かれることがあります。
糖尿病は、腎臓病の重要な原因の一つです。
しかし、
糖尿病になったら必ず腎臓が悪くなり、透析になるわけではありません。
腎臓の変化を早い段階で見つけ、血糖だけでなく血圧なども含めて治療することで、腎臓を守ることが大切です。
腎臓は何をしているの?
腎臓というと、
「尿を作る臓器」
というイメージが強いかもしれません。
もちろんそれも大切な働きですが、腎臓にはほかにも、
体の余分な水分や老廃物を排泄する
ナトリウムやカリウムなどのバランスを調整する
血圧の調節に関わる
赤血球を作るためのホルモンを分泌する
骨やミネラルの状態を調節する
など、さまざまな役割があります。
そのため腎臓の働きが大きく低下すると、全身に影響が及びます。
なぜ糖尿病で腎臓が悪くなるの?
高血糖が長期間続くと、腎臓にある細い血管や、血液をろ過する仕組みに負担がかかります。
さらに、
高血圧
肥満
喫煙
脂質異常症
なども腎臓病の進行に関係します。
つまり、糖尿病の腎臓病は、
「血糖値だけの問題」ではありません。
血糖、血圧、体重、生活習慣などを総合的に考えることが大切です。
「糖尿病性腎症」とは?
糖尿病が原因となって起こる代表的な腎臓の合併症を、糖尿病性腎症と呼びます。
典型的には、初期には尿中にアルブミンというたんぱく質が少量出るようになり、進行すると尿たんぱくが増え、やがて腎臓の働きが低下していきます。
しかし、実際の糖尿病患者さんの腎臓病は必ずしもこの典型的な経過をたどるとは限りません。
「糖尿病関連腎臓病」という考え方もあります
最近では、糖尿病患者さんにみられる腎臓病をより広く捉えて、糖尿病関連腎臓病として考えることがあります。
なぜなら、糖尿病の患者さんの中には、
「尿たんぱくはそれほど多くないのに、腎機能が低下していく」
という方もいるからです。
年齢、高血圧、動脈硬化など、糖尿病以外のさまざまな要因が腎臓に影響することもあります。
したがって、
「尿たんぱくがないから腎臓は絶対に大丈夫」
とは言い切れません。
腎臓が悪くなると症状が出る?
初期の腎臓病では、ほとんど症状がないことが珍しくありません。
腎機能がかなり低下してから、
むくみ
だるさ
食欲低下
息切れ
などが現れることがあります。
しかし、
症状が出てから腎臓病を見つけるのでは遅いことがあります。
そのため糖尿病では、症状がなくても定期的に腎臓の状態を確認することが重要です。
腎臓はどうやって調べるの?
糖尿病患者さんの腎臓を評価するときに、特に重要なのが血液検査と尿検査です。
血液検査では、クレアチニンなどから**eGFR(推算糸球体濾過量)**を計算し、腎臓が血液をろ過する能力の目安にします。
尿検査では、尿中にアルブミンやたんぱく質が出ていないかを調べます。
つまり、
「腎臓の働き」と「尿にたんぱくが漏れていないか」の両方を見る
ことが大切です。
eGFRとは?
健康診断や血液検査の結果に、
eGFR 72
eGFR 48
などと書かれていることがあります。
eGFRは、腎臓のろ過機能を推定した数字です。
一般にeGFRが低いほど腎機能が低下している可能性があります。
ただし、eGFRは年齢などの影響も受けます。
1回の値だけで判断するのではなく、
以前と比べてどう変化しているか
を見ることも重要です。
尿アルブミンとは?
腎臓のフィルターに障害が起こると、通常は尿にあまり出ないアルブミンが尿中へ漏れることがあります。
そのため、尿中アルブミンは糖尿病による腎障害を早期に発見するための重要な検査です。
ただし、一度高かったからといって、それだけで腎症が進行していると決めるわけではありません。
運動、発熱、感染症などによって一時的に増えることもあります。
必要に応じて繰り返し確認します。
尿たんぱくが出たら透析になる?
尿たんぱくが出たからといって、すぐ透析になるわけではありません。
ここは患者さんにぜひ知っておいてほしいところです。
腎臓病の進行速度には大きな個人差があります。
早い段階から適切に管理することで、腎機能の低下を遅らせられる可能性があります。
「尿たんぱくが出た=もう手遅れ」
ではありません。
むしろ、
腎臓を守る治療を考えるための重要なサイン
と考えましょう。
腎臓を守るには血糖値を下げればいい?
血糖管理は重要です。
しかし、腎臓を守るために考えるのは血糖値だけではありません。
特に重要なのが血圧管理です。
さらに、
禁煙
適切な体重管理
食事
運動
脂質管理
なども、その人の状態に応じて考えていきます。
糖尿病の腎臓病は、
「HbA1cだけを良くすれば終わり」ではない
ということです。
腎臓を守る糖尿病の薬もある?
現在では、血糖値を下げるだけでなく、腎臓や心臓を守る効果が期待される糖尿病治療薬があります。
代表的なものの一つがSGLT2阻害薬です。
患者さんの腎機能やほかの病気などを考慮して使用されます。
また、糖尿病と慢性腎臓病の状態によっては、血圧の薬を含め、腎臓を守ることを目的とした治療を組み合わせることがあります。
ただし、
「腎臓に良い薬だから自分も使った方がいい」
と一律に考えることはできません。
その人の腎機能、血圧、脱水の危険性、ほかの病気や薬などを確認して治療を選びます。
腎機能が悪くなったら糖尿病の薬にも注意
腎臓の働きが低下すると、糖尿病薬の選び方や量を変更する必要がある場合があります。
薬によっては腎機能に応じて減量したり、使用できなくなったりすることがあります。
また、腎機能が低下すると低血糖を起こしやすくなる場合もあります。
そのため、
「何年も同じ薬だから、このままで大丈夫」
とは限りません。
定期的に腎機能を確認しながら治療を続けることが大切です。
腎臓が悪いとHbA1cにも影響する?
高度に腎機能が低下した場合には、貧血や赤血球の状態などによって、HbA1cが実際の血糖状態を正確に反映しにくくなることがあります。
そのため、
「血糖値は高いのにHbA1cが低い」
などの食い違いがみられる場合があります。
特に進行した腎臓病や透析治療中では、HbA1cの数字だけで血糖状態を判断しないことが重要です。
糖尿病になったらいずれ透析になる?
いいえ。糖尿病だから必ず透析になるわけではありません。
糖尿病の患者さんすべてが高度な腎不全まで進行するわけではありません。
大切なのは、
症状がない時期から腎臓の状態を確認し、変化があれば早めに対応することです。
「透析にならないように完璧に管理しなければ」
と必要以上に怖がるのではなく、
定期的に検査を受け、できることを一つずつ続ける
ことが大切です。
今日覚えてほしい3つのこと
① 糖尿病になっても、必ず腎臓が悪くなって透析になるわけではありません
② 腎臓病は初期には症状が乏しいため、eGFRと尿アルブミン・尿たんぱくを定期的に確認することが大切です
③ 腎臓を守るには、血糖だけでなく血圧なども含めて総合的に管理します
まとめ
糖尿病は腎臓病の重要な原因の一つです。
しかし、
「糖尿病=いずれ透析」ではありません。
また、
「尿たんぱくがない=腎臓は絶対に大丈夫」
とも限りません。
糖尿病患者さんの腎臓を守るためには、
血液検査で腎機能を確認すること
尿アルブミンや尿たんぱくを確認すること
血糖を適切に管理すること
血圧なども含めて総合的に管理すること
が大切です。
腎臓病は、かなり進行するまで症状が出ないことがあります。
だからこそ、
「悪くなってから治療する」のではなく、「症状がないうちから確認する」
ことに意味があります。
そして検査で異常を指摘されても、
「もう透析になる」
と考える必要はありません。
腎臓の状態を正しく把握し、その人に合った治療を無理なく続けていきましょう。
