糖尿病で目が悪くなるのはなぜ?糖尿病網膜症をわかりやすく解説

糖尿病の患者さんから、

「糖尿病になると目が悪くなるのですか?」
「よく見えているので眼科には行かなくても大丈夫ですか?」
「視力が落ちていなければ網膜症はありませんか?」
「糖尿病網膜症になると失明するのでしょうか?」

と聞かれることがあります。

糖尿病では、目に合併症が起こることがあります。

代表的なものが糖尿病網膜症です。

しかし、

糖尿病になったら必ず視力が低下するわけではありません。

大切なのは、見え方に異常が出てから眼科を受診するのではなく、症状がない時期から定期的に目の状態を確認することです。

糖尿病網膜症とは?

目の奥には、網膜という薄い組織があります。

網膜は、目に入ってきた光を感じ取り、その情報を脳へ伝える重要な役割をしています。

網膜には非常に細い血管がたくさんあります。

高血糖の状態が長く続くと、こうした細い血管が障害され、出血したり、血液の成分が漏れたりすることがあります。

これが糖尿病網膜症です。

血糖値が高いと、なぜ目に影響するの?

糖尿病では、長期間の高血糖によって全身の血管が影響を受けます。

特に網膜のような細い血管が多い場所では、その影響が合併症として現れることがあります。

糖尿病網膜症には血糖管理だけでなく、

糖尿病になってからの期間
血圧
腎臓病などの合併症

といったさまざまな要因が関係します。

そのため、

「最近のHbA1cが良かったから、目は絶対に大丈夫」

とは言い切れません。

網膜症になると、すぐ視力が落ちる?

ここが非常に大切です。

初期の糖尿病網膜症では、自覚症状がほとんどないことがあります。

つまり、

よく見える
目がかすまない
痛くない

からといって、網膜症がないとは限りません。

「見えにくくなったら眼科へ行こう」

では、発見が遅くなることがあります。

だからこそ、糖尿病では症状がなくても眼科で定期的に目の状態を確認することが重要なのです。

糖尿病網膜症はどのように進むの?

糖尿病網膜症は、一般に進行の程度によって段階的に評価されます。

初期には網膜の小さな血管に変化が起こり、点状の出血などがみられることがあります。

さらに進行すると、網膜の血流が悪くなる部分が増えていきます。

重症になると、酸素不足を補おうとして新生血管と呼ばれる異常な血管が作られることがあります。

この新生血管は非常にもろく、出血などの原因になることがあります。

突然見えにくくなることもある?

進行した網膜症では、突然見え方が変化することがあります。

たとえば、目の中に出血すると、

黒い点やゴミのようなものがたくさん見える
黒い影が見える
急にかすむ
急に視力が低下する

といった症状が現れることがあります。

また、網膜が引っ張られて網膜剥離を起こす場合もあります。

このような急な見え方の変化がある場合には、早めに眼科を受診してください。

糖尿病黄斑浮腫とは?

糖尿病では、網膜症とは別に覚えておきたい状態として糖尿病黄斑浮腫があります。

黄斑は、網膜の中でも細かいものを見るために特に重要な部分です。

血管から水分などが漏れて黄斑がむくむと、

物がかすんで見える
ゆがんで見える
視力が低下する

などの症状が出ることがあります。

糖尿病による視力低下を考えるうえで、網膜症とともに重要な病気です。

視力検査だけでは分からないの?

「健康診断で視力1.0だったから大丈夫」

と思うかもしれません。

しかし、初期の網膜症では視力が保たれていることがあります。

そのため、糖尿病患者さんの目の評価では、視力だけでなく眼底の状態を確認することが重要です。

必要に応じて眼底検査や画像検査などが行われます。

眼科はどのくらいの間隔で受診すればいい?

眼科を受診する頻度は、すべての患者さんで同じではありません。

糖尿病の種類、網膜症の有無や程度、血糖状態、妊娠などによって変わります。

一度眼科を受診したら、

「次はいつ受診すればよいですか?」

と確認しておくとよいでしょう。

網膜症がある場合には、眼科医から指示された受診間隔を守ることが特に大切です。

内科でHbA1cを測っていれば眼科は必要ない?

必要です。

内科で行う血液検査と、眼科で行う目の検査は役割が違います。

HbA1cを測れば血糖管理の状態は分かりますが、それだけでは網膜の状態は分かりません。

糖尿病治療では、

内科で血糖や血圧などを管理する
+
眼科で網膜の状態を確認する

という両方が重要です。

血糖値を良くすれば網膜症は防げる?

適切な血糖管理は、糖尿病網膜症の発症や進行を抑えるために重要です。

また、血圧などを適切に管理することも大切です。

ただし、

「HbA1cをできるだけ低くすればよい」

という意味ではありません。

低血糖を繰り返すほど厳しく治療する必要はなく、その人に合った目標で安全に管理していきます。

血糖値を急に下げるのは問題ない?

血糖状態が長期間かなり高かった方では、治療によって血糖値が急速に改善した際に、網膜症が一時的に悪化することがあります。

これは、

「血糖値を下げない方がよい」

という意味ではありません。

特にすでに網膜症がある方や、血糖状態が非常に悪い状態から治療を始める場合には、内科と眼科が連携して治療を進めることが大切です。

自己判断で薬やインスリンを減らして調整する必要はありません。

網膜症が見つかったら失明する?

網膜症が見つかったからといって、必ず失明するわけではありません。

網膜症の程度によっては経過を観察することもあります。

進行した場合には、

レーザー治療
目の中への薬剤注射
手術

などの治療が行われることがあります。

治療方法は網膜症や黄斑浮腫の状態によって異なります。

大切なのは、

治療が必要になる前の段階も含めて、眼科で継続的に確認すること

です。

「見えているから大丈夫」が一番の落とし穴

糖尿病網膜症について患者さんに最も覚えてほしいのは、

初期には自覚症状がないことがある

という点です。

腎臓病と少し似ています。

腎臓病では、症状がなくても血液検査や尿検査を行います。

網膜症でも、見え方に問題がなくても眼科で確認します。

つまり糖尿病の合併症では、

「症状がない=合併症がない」ではありません。

今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病になっても、必ず目が悪くなったり失明したりするわけではありません

② 糖尿病網膜症は、初期には自覚症状がほとんどないことがあります

③ 「見えにくくなってから」ではなく、症状がないうちから定期的に眼科を受診することが大切です

まとめ

糖尿病では、高血糖が長く続くことで網膜の細い血管が障害され、糖尿病網膜症が起こることがあります。

しかし、

糖尿病になったら必ず視力が低下するわけではありません。

そして最も重要なのは、

「よく見えているから大丈夫」と判断しないことです。

初期の糖尿病網膜症では、自覚症状がないことがあります。

HbA1cが良くても、内科へ定期的に通院していても、それだけでは網膜の状態は分かりません。

内科で血糖や血圧などを管理しながら、眼科で目の状態を確認する。

この両方が大切です。

糖尿病の合併症を必要以上に怖がる必要はありません。

症状が出る前から定期的に確認し、必要なときに適切な治療につなげること。

それが目を守るための大切な一歩です。

参考文献・情報源