血液検査の結果を見て、
「前回はeGFRが65だったのに、今回は45まで下がっています」
「急に腎臓が悪くなったのでしょうか?」
「このまま透析になってしまうのでしょうか?」
と心配になることがあります。
eGFRが急に低下した場合、脱水や体調不良などによる一時的な変化のこともあれば、早めに原因を調べる必要があることもあります。
大切なのは、1回の数字だけで判断するのではなく、
- 以前のeGFRと比べてどのくらい変化したか
- 血清クレアチニンがどのように変化したか
- 発熱、下痢、嘔吐、食欲低下などがなかったか
- 新しく始めた薬がないか
- 尿量や体重、むくみに変化がないか
- 尿たんぱくや血尿がないか
を確認することです。
eGFRとは?
eGFRは「推算糸球体ろ過量」のことで、腎臓が血液をろ過する力を推定した値です。
血液検査で測定する血清クレアチニン値に、年齢や性別などを加えて計算します。
eGFRが低いほど、腎臓のろ過する力が低下している可能性があります。
ただし、eGFRは腎臓の働きを直接測定した値ではなく、クレアチニンから計算した「推定値」です。
そのため、体調や筋肉量、食事、薬などの影響によって変動することがあります。
eGFRが急に下がるのは、クレアチニンが上がるから
一般的に、血清クレアチニンが上昇すると、計算上のeGFRは低下します。
たとえば、脱水によって腎臓へ流れる血液が一時的に減ると、クレアチニンが上がり、eGFRが下がることがあります。
体調が回復し、脱水などの原因が改善すると、クレアチニンとeGFRが元に戻ることもあります。
一方で、腎炎、尿路の閉塞、重い感染症などによって、実際に腎臓が急速に傷んでいる場合もあります。
なお、クレアチニンが急速に変化している最中は、体内の状態が安定していないため、表示されたeGFRが実際の腎機能を正確に表さないことがあります。
どのくらい下がったら注意が必要?
eGFRには、ある程度の検査上・生物学的な変動があります。
KDIGO 2024 CKDガイドラインでは、慢性腎臓病のある方で、前回からeGFRが20%を超えて変化した場合には、通常の変動範囲を超えている可能性があり、評価が必要とされています。
たとえば、
- eGFR 60から48へ低下:20%の低下
- eGFR 60から42へ低下:30%の低下
です。
ただし、20%という数字だけで緊急性が決まるわけではありません。
元の腎機能、低下した期間、症状、薬の変更、尿検査の結果などを含めて判断します。
eGFRが少し下がっただけでも、尿がほとんど出ない、呼吸が苦しいなどの症状があれば、早めの受診が必要です。
eGFRが一時的に下がる主な原因
脱水
eGFRが急に下がる原因として、よくみられるものの一つが脱水です。
- 発熱
- 下痢や嘔吐
- 食事や水分が取れない
- 暑い場所で大量に汗をかいた
- 利尿薬を使用している
といった場合には、体内の水分が不足し、腎臓へ流れる血液が減ることがあります。
ただし、心不全や高度の腎臓病などで水分制限を受けている方は、自己判断で大量の水を飲まず、医療機関へ相談してください。
発熱や感染症
肺炎、尿路感染症、インフルエンザなどの感染症では、発熱、脱水、血圧低下などが重なり、腎機能が一時的に悪化することがあります。
糖尿病のある方では、感染症をきっかけに血糖値も上昇しやすくなります。
血圧の低下
血圧が下がりすぎると、腎臓へ十分な血液が届かなくなり、eGFRが低下することがあります。
ふらつき、立ちくらみ、強いだるさがある場合は、血圧も確認しましょう。
薬の影響
次のような薬が関係することがあります。
- 一部の鎮痛薬
- 利尿薬
- 血圧を下げる薬
- 腎臓から排泄される薬
- 一部の抗菌薬
- 造影剤
- 市販薬やサプリメント
特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる一部の鎮痛薬は、脱水時などに腎機能を悪化させることがあります。
ただし、処方薬を自己判断で中止するのも危険です。
新しく始めた薬、市販薬、サプリメントを含め、使用しているものを医師または薬剤師に伝えてください。
尿の通り道の閉塞
尿管結石、前立腺肥大、腫瘍などにより尿の通り道が塞がると、腎機能が急に低下することがあります。
尿が出にくい、尿量が急に減った、腰や脇腹が痛いといった症状がある場合には注意が必要です。
心不全などによる血流の変化
心臓の働きが低下すると、腎臓へ流れる血液が減ったり、体内に水分がたまったりして、腎機能が悪化することがあります。
むくみ、急な体重増加、息苦しさがある場合には、単純な脱水とは限りません。
急性腎障害とは?
数時間から数日程度の短期間に腎機能が急に悪化する状態を「急性腎障害(AKI)」と呼びます。
医学的には、血清クレアチニンが、
- 48時間以内に0.3 mg/dL以上上昇した
- 7日以内に以前の1.5倍以上に上昇した
または、尿量が明らかに減少した場合などに、急性腎障害を疑います。
急性腎障害は、早く原因を見つけて対応することで回復することがあります。
一方、対応が遅れると重症化したり、その後に慢性腎臓病が残ったりすることもあるため、急激な変化を放置しないことが大切です。
慢性腎臓病との違い
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の構造や機能の異常が原則として3か月以上続いている状態です。
| 状態 | 主な時間経過 |
|---|---|
| 急性腎障害 | 数時間~数日で腎機能が悪化 |
| 急性腎臓病 | 3か月未満の腎機能・腎構造の異常 |
| 慢性腎臓病 | 腎臓の異常が3か月以上持続 |
そのため、eGFRが1回低かっただけでは、慢性腎臓病と確定できません。
一方、以前からeGFR低下や尿アルブミン、尿たんぱくなどが続いている場合は、慢性腎臓病が背景にあり、そこへ脱水や感染症などが重なって急に悪化した可能性もあります。
腎臓を守る薬を始めた後にeGFRが下がることもある?
あります。
ACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬などを開始した後に、腎臓内の血流や圧力が変化し、eGFRが一時的に低下することがあります。
これは必ずしも「薬が腎臓を傷つけた」という意味ではありません。
KDIGO 2024では、こうした薬を始めた後の軽度なeGFR低下は起こり得る変化であり、長期的な心臓・腎臓保護効果が期待される薬を、わずかな低下だけで中止しないことが重要とされています。
一方、開始後にeGFRが30%を超えて低下した場合には、脱水、血圧低下、ほかの薬との組み合わせなどを含めた評価が必要です。
薬を続けるかどうかは、自己判断せず主治医へ確認してください。
eGFRが急に下がったときに確認すること
検査結果を受け取ったら、次の点を確認しましょう。
1.過去の結果と比較する
今回のeGFRだけでなく、過去数回の値とクレアチニンを確認します。
ゆっくり低下していたのか、今回だけ急に下がったのかで考え方が異なります。
2.最近の体調を振り返る
検査前に次のようなことがなかったか確認します。
- 発熱や感染症
- 下痢や嘔吐
- 食欲低下
- 水分摂取量の低下
- 大量の発汗
- 血圧低下
- 急な体重減少または増加
3.薬やサプリメントを確認する
処方薬だけでなく、市販の鎮痛薬、漢方薬、健康食品、サプリメントも医師へ伝えます。
4.尿の変化を確認する
- 尿量が減った
- 尿が出にくい
- 血尿がある
- 泡立ちが続く
- 排尿時に痛みがある
といった変化がないか確認します。
5.医療機関へ連絡する
eGFRの低下が大きい場合や、体調不良を伴う場合は、次回の定期診察まで待たずに医療機関へ連絡してください。
再検査の時期は、低下の程度や症状によって異なります。
医療機関では何を調べる?
eGFRが急に低下した場合には、状況に応じて次のような確認を行います。
- 血清クレアチニンの再検査
- ナトリウムやカリウムなどの電解質
- 血糖値
- 尿たんぱく、尿アルブミン、血尿
- 尿沈渣
- 血圧、体重、むくみ、脱水の有無
- 使用している薬
- 超音波検査による尿路閉塞の確認
- 感染症や心不全の評価
原因によって治療方法が異なるため、「eGFRを上げる薬」を一律に使用するわけではありません。
早めに受診した方がよい症状
次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
- 尿が極端に少ない、またはほとんど出ない
- 息苦しい
- むくみや急な体重増加がある
- 嘔吐や下痢が続き、水分が取れない
- 強いだるさや意識の変化がある
- 高熱が続いている
- 血尿がある
- 強い腰痛や脇腹の痛みがある
- 血圧が非常に低い
- eGFRが短期間に大きく低下した
夜間や休日でも、症状が強い場合は救急受診を検討してください。
糖尿病の薬はどうすればいい?
発熱、下痢、嘔吐、食事が取れないなどのシックデイでは、糖尿病薬や血圧の薬の一部について、一時的な調整が必要になることがあります。
ただし、薬によって対応が異なります。
自己判断で一律に中止したり、反対に無理に飲み続けたりせず、あらかじめ主治医から受けたシックデイの指示に従ってください。
指示を受けていない場合は、処方した医療機関または薬局へ連絡しましょう。
今日覚えてほしい3つのこと
- eGFRが急に下がっても、脱水などによる一時的な変化のことがあります。
- 一方で、急性腎障害や尿路の閉塞など、早めの対応が必要な場合もあります。
- 過去の数値、体調、尿量、薬の変更を確認し、自己判断で薬を中止せず医療機関へ相談しましょう。
まとめ
eGFRが急に低下したからといって、腎機能がそのまま回復しない、あるいはすぐに透析になるという意味ではありません。
脱水、感染症、血圧低下、薬、尿路の閉塞、心不全など、さまざまな原因が考えられます。
一時的な変化か、急性腎障害か、慢性腎臓病が進行しているのかを判断するには、過去の検査結果、クレアチニン、尿検査、体調、薬などを総合して確認する必要があります。
数字だけを見て過度に心配する必要はありませんが、急激な低下を放置しないことも大切です。
特に尿量の減少、息苦しさ、むくみ、嘔吐、発熱などを伴う場合は、早めに医療機関へ相談してください。
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療を目的とするものではありません。体調不良や検査値の急激な変化がある場合は、担当医または医療機関へご相談ください。
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参考文献・情報源
- 日本腎臓学会.CKD診療ガイド2024.
- 日本腎臓学会.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(Suppl 4S):S117-S314.
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney Int Suppl. 2012;2:1-138.
- American Diabetes Association Professional Practice Committee. Chronic Kidney Disease and Risk Management: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1).
