糖尿病の治療をしていると、血糖値がいつもより高くなり、「このままで大丈夫だろうか」と心配になることがあります。
血糖値は、食事、運動、体調、ストレス、薬など、さまざまな要因によって変化します。
そのため、血糖値が一度高かっただけで、すぐに糖尿病が悪化したと判断する必要はありません。
一方で、高い血糖値が長く続いている場合や、著しい高血糖とともに体調が悪くなっている場合には注意が必要です。
この記事では、高血糖とはどのような状態なのか、どんな症状が現れるのか、血糖値が高かったときにどう考えればよいのかを、わかりやすく説明します。
高血糖とは?
高血糖とは、血液中のブドウ糖が必要以上に多くなっている状態です。
血糖値は食事の前後で変化するため、「何mg/dL以上ならすべて高血糖」と一つの数字だけで判断するものではありません。
たとえば、食後には健康な人でも血糖値が上昇します。糖尿病では、その上昇が大きくなったり、上がった血糖値が下がりにくくなったりします。
また、1回の血糖値だけではなく、血糖値が高い状態がどの程度続いているのかを見ることも重要です。
そのため糖尿病の治療では、日々の血糖値だけでなく、最近の血糖状態を反映するHbA1cなども合わせて確認します。
高血糖ではどんな症状が出るの?
血糖値が多少高くても、自覚症状がほとんどないことがあります。
これが糖尿病の注意すべき点の一つです。
血糖値がさらに高くなると、
・のどが渇く
・水分をたくさん飲む
・尿の回数や量が増える
・疲れやすい、だるい
・体重が減る
・目がかすむ
などの症状が現れることがあります。
高血糖が著しい場合には、脱水が進んだり、意識状態が悪くなったりすることもあります。
「症状がないから血糖値は大丈夫」とは限らないため、定期的に血糖値やHbA1cを確認することが大切です。
なぜ血糖値が高くなるの?
血糖値が高くなると、「食べすぎたからかな」と考える方も多いかもしれません。
もちろん食事は血糖値に大きく影響しますが、高血糖の原因は食事だけではありません。
たとえば、
・いつもより食事量が多かった
・甘い飲み物や間食を多くとった
・運動量が少なかった
・糖尿病薬を飲み忘れた
・インスリンを打ち忘れた、または必要量が不足した
・発熱や感染症などで体調を崩した
・手術やけがなど、体に大きな負担がかかった
・強いストレスがかかった
・ステロイドなど血糖値を上げることのある薬を使用した
など、さまざまな原因があります。
特に知っておいてほしいのが、風邪や発熱、感染症などで体調を崩したときには、食事をあまりとっていなくても血糖値が上がることがあるということです。
体調を崩すと、体を守るために血糖値を上げる方向に働くホルモンが増えるためです。
そのため、
「食べていないから血糖値も下がるはず」
とは限りません。
糖尿病の方が発熱、嘔吐、下痢などで体調を崩した日のことを「シックデイ」と呼びます。
シックデイには、普段とは違った血糖管理が必要になることがあります。
血糖値が高かったらどうする?
血糖値がいつもより高いと、不安になってしまうかもしれません。
しかし、1回の高い血糖値だけを見て、自己判断で薬やインスリンを大きく増減することは避けましょう。
まず、
・食事の内容や量はいつもと違わなかったか
・薬の飲み忘れやインスリンの打ち忘れはなかったか
・発熱や感染症など体調の変化はないか
・運動量がいつもより少なくなかったか
などを振り返ってみます。
そして、血糖値が高い状態が続く場合には、記録をつけて主治医に相談しましょう。
水分をとることも大切です
高血糖になると尿の量が増え、体から水分が失われやすくなることがあります。
水分をとれる状態で、医師から水分制限を指示されていなければ、水やお茶など糖分を含まない飲み物で適切に水分を補給することが大切です。
ジュースやスポーツドリンクには糖分を多く含むものがあり、高血糖時には血糖値をさらに上げることがあるため注意しましょう。
こんなときは早めに医療機関へ
高血糖では、血糖値の数字だけでなく、体調の変化にも注意することが大切です。
高血糖に加えて、
・強い口渇が続く
・尿が非常に多い
・吐き気や嘔吐がある
・水分を十分にとれない
・強いだるさがある
・呼吸が苦しい、またはいつもと違う
・意識がもうろうとする
などの症状がある場合には、著しい高血糖や脱水などを起こしている可能性があります。
特に、意識状態が悪い場合や水分をとれないほど体調が悪い場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。
高血糖を予防するために大切なこと
高血糖を防ぐために大切なのは、毎日の血糖値を完璧にすることではありません。
血糖値は食事や運動だけでなく、体調やストレスなどによっても変化します。
「なぜ今日は高かったのだろう?」と振り返り、自分の血糖値がどのようなときに上がりやすいのかを知っていくことが大切です。
① 食事は「完璧」より「続けられること」を大切に
糖尿病だからといって、好きなものをすべて禁止する必要はありません。
大切なのは、食事の量やバランスを意識しながら、無理なく続けられる食生活をつくることです。
血糖値が高かったからといって、次の食事を極端に減らしたり、食事を抜いたりすると、かえって血糖値が不安定になることがあります。
1回の血糖値に一喜一憂せず、長い目で考えていきましょう。
② 無理のない範囲で体を動かす
運動は、血糖管理に役立つ大切な治療の一つです。
ウォーキングなどの有酸素運動だけでなく、日常生活の中で座っている時間を減らしたり、こまめに体を動かしたりすることも大切です。
ただし、体調が悪いときや血糖値が著しく高いときには、無理に運動することが適切でない場合があります。
「血糖値が高いから運動して下げよう」と無理をせず、体調に合わせて行いましょう。
③ 薬やインスリンは決められた方法で使用する
糖尿病薬やインスリンは、血糖値を適切に保つために使用します。
飲み忘れや打ち忘れに気づいた場合も、自己判断で次の薬を2回分飲んだり、インスリンを大幅に増やしたりしないようにしましょう。
対処方法は薬の種類によって異なります。
わからない場合には、主治医や薬剤師に確認してください。
④ 体調が悪い日は、いつも以上に注意する
発熱、感染症、嘔吐、下痢などで体調を崩したときには、食事をあまりとっていなくても血糖値が高くなることがあります。
一方で、食事がとれないために低血糖を起こす場合もあります。
このような「シックデイ」では、普段とは違った対応が必要になることがあります。
特にインスリンを使用している方は、食事がとれないからといって自己判断でインスリンをすべて中止すると危険な場合があります。
体調が悪いときの薬やインスリンの扱いについては、あらかじめ主治医と相談しておきましょう。
血糖値は「1回の数字」だけで考えない
血糖値は一日の中でも変化します。
同じ人でも、
・何を食べたか
・食後どのくらいたったか
・どのくらい体を動かしたか
・よく眠れたか
・体調はどうか
・ストレスがかかっていないか
などによって変わります。
そのため、1回だけ高い血糖値が出たからといって、それだけで糖尿病が悪化したとは限りません。
反対に、症状がなくても高い血糖値が繰り返されている場合には、治療を見直した方がよいことがあります。
日々の血糖値とともにHbA1cなども確認しながら、主治医と一緒に治療を考えていくことが大切です。
今日覚えてほしい3つのこと
① 血糖値は食事だけでなく、運動、体調、ストレス、薬などさまざまな原因で高くなる
② 1回の高い血糖値だけで慌てて、自己判断で薬やインスリンを大きく変更しない
③ 高血糖とともに嘔吐、強いだるさ、脱水、意識の変化などがある場合には、早めに医療機関へ相談・受診する
血糖値が高いと、「自分の生活が悪かったのではないか」と考えてしまうことがあります。
しかし、血糖値はさまざまな要因によって変動します。
大切なのは一つ一つの数字を完璧にすることではなく、血糖値の変化を知り、必要なときに適切に対応することです。
高血糖が続いている場合や、いつもと違う体調の変化がある場合には、自己判断で治療を変更せず、主治医に相談してください。
