自宅で血糖値を測って、
「300mg/dLを超えています。救急車を呼んだ方がいいですか?」
「食べすぎただけなので様子を見てもいいですか?」
「薬をもう1回飲めば下がりますか?」
「運動して下げた方がいいですか?」
と心配になることがあります。
血糖値300mg/dLは、確かに高い値です。
しかし、
「300mg/dLを1回超えたら全員が救急受診」
という単純なルールではありません。
一方で、血糖値が高いだけでなく、嘔吐、脱水、呼吸の異常、意識の変化などがある場合には、緊急の治療が必要になることがあります。
大切なのは、数字だけでなく全身の状態を見ることです。
- まず、血糖値300mg/dLは高い?
- 1回だけ300mg/dLを超えたら?
- 高血糖になる原因は食べすぎだけではありません
- こんな症状がある場合は注意
- すぐに救急対応が必要なのは?
- 糖尿病性ケトアシドーシスとは?
- 1型糖尿病では特に注意
- ケトン体を測った方がいい?
- SGLT2阻害薬を使っている場合にも注意
- 2型糖尿病でも危険な高血糖はある?
- 水をたくさん飲めば下がる?
- スポーツドリンクを飲めばいい?
- 薬を追加して飲んでもいい?
- インスリンを追加してもいい?
- 運動して血糖値を下げてもいい?
- 食事を抜けばいい?
- 300mg/dLが何日も続いている場合は?
- 「何mg/dLなら救急」という数字だけを覚えなくていい
- 今日覚えてほしい3つのこと
- まとめ
まず、血糖値300mg/dLは高い?
はい。一般的にはかなり高い血糖値です。
ただし、
食後なのか
発熱しているのか
糖尿病の薬を飲み忘れたのか
1型糖尿病なのか2型糖尿病なのか
インスリンを使用しているのか
などによって意味は変わります。
したがって、
300mg/dLという数字だけで緊急度を判断することはできません。
1回だけ300mg/dLを超えたら?
まず体調を確認してください。
特に症状がなく、普段はもっと低い方が一度だけ高値になった場合には、測定条件を確認することも大切です。
手に食べ物や糖分が付着していると、実際より高い値が出ることがあります。
予想外に高い場合には、手を石けんなどで洗い、よく乾かしてから、必要に応じてもう一度測定します。
それでも高い場合には、
「なぜ高くなったのか」
を考えます。
高血糖になる原因は食べすぎだけではありません
血糖値が300mg/dLを超えると、
「昨日甘いものを食べたからだ」
と思うかもしれません。
もちろん食事は血糖値に影響します。
しかし、高血糖の原因には、
感染症
発熱
脱水
強い身体的ストレス
糖尿病薬の飲み忘れ
インスリンの不足
ステロイドなどの薬剤
などもあります。
特に、
「あまり食べていないのに血糖値が非常に高い」
場合には、体調不良などが隠れていないか注意します。
こんな症状がある場合は注意
著しい高血糖では、
強いのどの渇き
尿が非常に多い
強い倦怠感
吐き気
嘔吐
腹痛
脱水
などがみられることがあります。
さらに状態が悪化すると、
呼吸の様子がおかしい
意識がもうろうとする
呼びかけへの反応がおかしい
などが起こることがあります。
このような症状がある場合には、単に「血糖値が高かった」と考えて様子を見るべきではありません。
すぐに救急対応が必要なのは?
血糖値の数字にかかわらず、
意識がもうろうとしている
呼びかけへの反応がおかしい
強い呼吸困難や明らかな呼吸の異常がある
ぐったりして自力で対応できない
といった場合には、緊急の対応が必要です。
また、繰り返し嘔吐して水分がとれない場合や、急速に全身状態が悪くなっている場合も、早急な医療評価が必要です。
「300mg/dLを超えたかどうか」だけでなく、患者さん自身の状態を優先して判断します。
糖尿病性ケトアシドーシスとは?
高血糖で特に注意したい病気の一つが、**糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)**です。
インスリンが著しく不足すると、体はブドウ糖を十分にエネルギーとして利用できなくなります。
その結果、脂肪が分解されてケトン体が増え、体が酸性に傾く危険な状態になることがあります。
症状として、
強い口渇
多尿
吐き気・嘔吐
腹痛
強い倦怠感
特徴的な深い呼吸
意識障害
などがみられることがあります。
特に1型糖尿病では重要な緊急合併症です。
1型糖尿病では特に注意
1型糖尿病では、インスリンが大きく不足すると比較的短期間でケトアシドーシスへ進む可能性があります。
そのため、
「食べられないからインスリンを全部やめておこう」
という対応は危険です。
高血糖が続く場合には、主治医から指示されている方法に従って血糖値やケトン体を確認します。
基礎インスリンを自己判断で中断しないことが重要です。
ケトン体を測った方がいい?
1型糖尿病などで、主治医から血中または尿中ケトン体の測定を指示されている方は、高血糖や体調不良時に測定が役立つことがあります。
特に、
高血糖が続く
発熱している
吐き気・嘔吐がある
食事がとれない
などの場合です。
どの血糖値でケトン体を測るか、どの値なら医療機関へ連絡するかについては、あらかじめ自分のシックデイルールを確認しておきましょう。
SGLT2阻害薬を使っている場合にも注意
SGLT2阻害薬を使用している方では、少し特殊な注意が必要です。
この薬を使用している場合、ケトアシドーシスが起きても、血糖値が典型的なDKAほど高くならないことがあります。
そのため、
「300mg/dLを超えていないからケトアシドーシスではない」
とは言い切れません。
吐き気、嘔吐、腹痛、強い倦怠感などがある場合には、血糖値だけで判断せず医療機関へ相談してください。
2型糖尿病でも危険な高血糖はある?
あります。
特に高齢の2型糖尿病患者さんなどでは、著しい高血糖と脱水によって**高浸透圧高血糖状態(HHS)**という重篤な状態になることがあります。
感染症などをきっかけに起こることもあります。
非常に強い脱水や意識の変化などを伴うことがあり、緊急の治療が必要です。
したがって、
「2型糖尿病だから高血糖だけでは危険にならない」
ということではありません。
水をたくさん飲めば下がる?
高血糖では尿量が増え、脱水になりやすいため、水分摂取が重要になることがあります。
意識がはっきりしていて飲水でき、水分制限を受けていない方では、水分をとることが大切です。
ただし、
「血糖値が高いから大量の水を飲めば治る」
ということではありません。
また、
心不全
高度な腎機能低下
透析治療中
などで水分制限を指示されている方は、自己判断で大量に飲まないでください。
スポーツドリンクを飲めばいい?
高血糖時に糖分の多い飲料を大量に飲むと、さらに血糖値が上昇することがあります。
一方、嘔吐や下痢などの状況では、水分や電解質の補給方法を個別に考える必要があります。
「脱水だからスポーツドリンクをたくさん飲む」
と一律に考えず、糖尿病や腎臓・心臓の状態も含めて判断します。
薬を追加して飲んでもいい?
自己判断で追加しないでください。
血糖値が300mg/dLだったからといって、
「いつもの薬をもう1錠飲もう」
と処方量以上に服用することは危険です。
薬によっては、あとから低血糖や副作用を起こす可能性があります。
飲み薬を自己流で追加して高血糖を修正しない
ことが大切です。
インスリンを追加してもいい?
主治医から、
「血糖値がこの範囲なら○単位追加する」
という具体的な補正方法を指示されている場合には、その指示に従います。
しかし、そのような指示を受けていない方が、
「300mg/dLだから、とりあえず5単位」
などと自己判断するのは危険です。
インスリンの効き方には個人差があり、過剰に投与すると低血糖につながります。
運動して血糖値を下げてもいい?
著しい高血糖のときに、血糖値を下げる目的で激しい運動をすることはおすすめできません。
特に、
体調が悪い
脱水している
ケトン体が増えている可能性がある
場合には注意が必要です。
「高かった分だけ運動して下げる」という考え方は避けましょう。
食事を抜けばいい?
これも自己流の帳尻合わせはおすすめできません。
高血糖を見て、
「次の食事を抜こう」
とすると、使用している薬やインスリンによっては低血糖を起こす可能性があります。
高血糖が繰り返される場合には、食事を極端に減らすのではなく、原因と治療を見直します。
300mg/dLが何日も続いている場合は?
症状がなくても、著しい高血糖が繰り返される場合には主治医へ相談してください。
原因として、
感染症
薬の飲み忘れ
インスリン量や注射方法の問題
食事や生活の変化
ほかの薬の影響
などを確認します。
「症状がないから次の定期受診まで何週間も待つ」
とはせず、普段より明らかに高い状態が続いている場合には早めに相談することが大切です。
「何mg/dLなら救急」という数字だけを覚えなくていい
患者さんに最も覚えてほしいのはここです。
高血糖の緊急性は、
血糖値+症状+糖尿病の種類+ケトン体+脱水などの状態
を合わせて判断します。
300mg/dLを超えたから必ず救急、というわけではありません。
逆に、300mg/dL未満だから絶対に安全というわけでもありません。
特にSGLT2阻害薬使用中のケトアシドーシスでは、この考え方が重要です。
今日覚えてほしい3つのこと
① 血糖値300mg/dLは高い値ですが、1回の数字だけで緊急性を決めるわけではありません
② 嘔吐、水分がとれない、呼吸の異常、意識の変化などを伴う場合には早急な医療評価が必要です
③ 高血糖を見て、薬・インスリン・運動・食事を自己流で調整しないでください
まとめ
血糖値が300mg/dLを超えると、不安になるのは当然です。
しかし、
「300を超えた=必ず救急」でも、「症状がない=絶対大丈夫」でもありません。
まず、
体調はどうか
水分はとれるか
嘔吐していないか
呼吸はいつもどおりか
意識ははっきりしているか
を確認します。
1型糖尿病ではケトアシドーシスに特に注意し、主治医から指示されている場合にはケトン体も確認します。
2型糖尿病でも、著しい高血糖と脱水によって重篤な状態になることがあります。
そして、
薬を勝手に増やす
インスリンを自己流で追加する
食事を抜く
激しい運動をする
ことで数字だけを下げようとしないでください。
高血糖で大切なのは、「数字を下げること」より先に「危険な状態ではないかを確認すること」です。
迷ったとき、特に普段とは明らかに違う高血糖が続く場合には、早めにかかりつけの医療機関へ相談してください。
