自宅で血糖値を測っていると、
「昨日は120mg/dLだったのに、今日は170mg/dLでした」
「同じ朝ごはんなのに血糖値が違います」
「何も変えていないのに高くなりました」
「血糖値が安定しないのは糖尿病が悪化したからですか?」
と心配になることがあります。
しかし、
血糖値は毎日まったく同じになるものではありません。
食事が同じでも、運動、睡眠、体調、ストレスなどによって血糖値は変化します。
大切なのは、1回の数字だけで「良くなった」「悪くなった」と判断しないことです。
血糖値は常に変化しています
血糖値は一日の中でも変化します。
食事をすると上がり、インスリンなどの働きによって下がります。
さらに、
運動
睡眠
ストレス
体調
薬
飲酒
など、さまざまな影響を受けます。
そのため、昨日と今日で血糖値が違うこと自体は珍しくありません。
同じものを食べても血糖値が違うのはなぜ?
「昨日とまったく同じ朝食なのに、今日は血糖値が高い」
ということもあります。
食事以外にも、
前日の夕食
前日の運動量
睡眠時間
起床時間
体調
精神的なストレス
などが影響するからです。
さらに、同じ料理に見えても、実際の量や調理方法が少し違うこともあります。
血糖値は食べ物だけで決まっているわけではありません。
睡眠不足でも血糖値は変わる?
睡眠不足や生活リズムの乱れは、血糖管理に影響することがあります。
「昨日はあまり眠れなかった」
という日に、いつもより血糖値が高くなることがあっても不思議ではありません。
ただし、
「血糖値を下げるために必ず○時間寝なければならない」
と考える必要はありません。
血糖管理だけでなく、体調を整えるという意味でも、できる範囲で睡眠を確保することが大切です。
ストレスでも血糖値は上がる?
上がることがあります。
強い緊張や精神的・身体的ストレスがかかると、血糖値を上げる方向に働くホルモンが増えることがあります。
たとえば、
仕事が非常に忙しかった
大切な予定があった
強い痛みがあった
手術を受けた
といった状況でも血糖値が変化することがあります。
「いつもと同じものしか食べていないのに高い」
という場合には、食事以外の要因も考えてみましょう。
風邪をひいただけでも高くなる?
発熱や感染症などでも血糖値が上昇することがあります。
体は病気と闘うためにさまざまな反応を起こします。
その結果、食事量が減っているにもかかわらず血糖値が高くなることがあります。
これは前の記事で説明したシックデイでも重要なポイントです。
運動した翌日も影響する?
運動はそのときだけではなく、その後の血糖値にも影響することがあります。
普段よりたくさん歩いた日や長時間運動した日には、その後の血糖値がいつもより低くなる場合があります。
特にインスリンや低血糖を起こす可能性のある薬を使用している方では、運動後しばらくしてからの低血糖にも注意します。
一方、非常に激しい運動では、一時的に血糖値が上昇することもあります。
つまり、
「運動したら必ずその場で血糖値が下がる」わけではありません。
朝の血糖値は特に変わりやすい?
朝の血糖値には、夕食だけでなく夜間から早朝の体の働きも関係します。
人間の体は、食べていない時間にも血糖値を保つため、肝臓から糖を供給しています。
また、早朝にはホルモンの影響などで血糖値が上がることがあります。
いわゆる**暁現象(dawn phenomenon)**もその一つです。
そのため、
「朝の血糖値が高い=昨夜食べすぎた」
とは限りません。
測定そのものにも多少のばらつきがあります
家庭用の血糖測定器で測る値にも、一定の測定誤差があります。
また、
手に糖分などが付着している
採血や測定の方法が適切でない
測定器や試験紙の扱いに問題がある
などによって、予想外の値になることもあります。
「いつもの自分の血糖値と明らかに違う」
という場合には、手を洗って十分に乾かしたうえで、必要に応じて測り直すことも一つの方法です。
1回高かったら薬を増やした方がいい?
自己判断で増やさないでください。
たとえば、いつも120mg/dL前後なのに、一度だけ200mg/dL近くになったとしても、その数字だけで治療を変更するとは限りません。
食事や体調など一時的な原因があるかもしれません。
1回の高値を見て、処方された薬を追加したり、インスリン量を自己流で変更したりしないことが大切です。
もちろん、あらかじめ主治医から血糖値に応じたインスリン調整方法などを指示されている場合には、その指示に従ってください。
高かった翌日は食事を減らした方がいい?
これも必要とは限りません。
血糖値が高かったから、
「今日はご飯を抜こう」
「夕食を半分にしよう」
と極端に調整すると、治療内容によっては低血糖につながることがあります。
1回の数字を翌日の極端な食事制限で「帳尻合わせ」するより、
なぜ高かったのかを考える
方が役立ちます。
では、どんな見方をすればいい?
血糖値を見るときは、一つの数字よりパターンを見ることが大切です。
たとえば、
「最近1週間、朝だけ高いことが多い」
「夕食後だけ毎回高くなる」
「運動した日の夜に低くなる」
「仕事が忙しい日に高くなる」
といった傾向です。
こうした情報が分かると、主治医も治療を考えやすくなります。
血糖測定は、
自分を採点するためではなく、血糖値のパターンを知るための道具
と考えるとよいでしょう。
HbA1cも一緒に考えます
自宅での血糖値は、その瞬間の数字です。
一方、HbA1cはある程度長い期間の血糖状態を反映します。
そのため、
今日の血糖値が高かった
↓
糖尿病が急に悪化した
とは限りません。
逆に、自宅で測った数回の血糖値が良くても、HbA1cが高い場合には、測定していない時間帯に血糖値が上昇している可能性などを考えます。
血糖値とHbA1cは、どちらか一方だけではなく組み合わせて見ることが大切です。
いつもより高い状態が続く場合は?
一度だけではなく、
「最近ずっと高い」
「以前より明らかに高くなった」
という場合には、主治医へ相談してください。
食事や運動だけでなく、
薬の飲み方
体重の変化
感染症
ほかの薬の影響
糖尿病の状態の変化
などを確認します。
「自分の努力が足りなかった」
と決めつける必要はありません。
すぐに相談した方がよい高血糖もあります
血糖値の多少の変動は珍しくありませんが、すべての高血糖を様子見してよいわけではありません。
高血糖に加えて、
強い口渇
尿が非常に多い
吐き気・嘔吐
腹痛
強い倦怠感
水分がとれない
いつもと違う呼吸の苦しさ
などがある場合には、早めに医療機関へ相談してください。
特に、意識がもうろうとしている、反応がおかしい、強い呼吸困難がある場合には緊急の対応が必要です。
血糖値に一喜一憂しなくて大丈夫
血糖測定を始めると、
110mg/dL → うれしい
180mg/dL → 落ち込む
というように、数字がその日の「成績表」のように感じられることがあります。
でも、血糖値はあなたの努力を採点している数字ではありません。
高い日があれば、
「今日はなぜ高かったのかな?」
と考えるための情報として使えばよいのです。
一つの数字に振り回されず、流れを見ることが大切です。
今日覚えてほしい3つのこと
① 血糖値は毎日まったく同じになるものではありません
② 同じ食事でも、運動・睡眠・ストレス・体調などによって血糖値は変わります
③ 1回の数字より、「いつ、どんなときに高い・低いのか」というパターンを見ることが大切です
まとめ
血糖値は日によって変化します。
昨日と今日で違うからといって、
すぐに糖尿病が悪化したという意味ではありません。
食事だけでなく、
運動
睡眠
ストレス
体調
薬
朝のホルモンの変化
など、さまざまな要因が血糖値に影響します。
だからこそ、血糖測定で大切なのは、
「今日の数字が良かったか悪かったか」ではなく、「どんなときに血糖値が変化するのか」を知ることです。
一度高かったから食事を抜く。
薬を追加する。
急に激しい運動をする。
このような自己流の「帳尻合わせ」は避けましょう。
血糖値は成績表ではなく、治療を考えるための情報です。
一つ一つの数字に振り回されず、長い目で自分の血糖値のパターンを見ていきましょう。
