風邪をひいたとき、
「糖尿病があるけれど、市販の風邪薬を飲んでも大丈夫?」
「いつもの糖尿病の薬と一緒に飲んでいい?」
「熱があるので痛み止めを飲みたいけれど、腎臓に悪くない?」
「薬局で普通に売っている薬なら安全ですよね?」
と迷うことがあります。
結論からいうと、
糖尿病があっても使用できる市販薬はたくさんあります。
しかし、
「市販薬だから誰でも安全」というわけではありません。
糖尿病そのものだけでなく、
腎臓病
高血圧
心臓病
使用している糖尿病薬
ほかに飲んでいる薬
などによって注意点が変わります。
大切なのは、
「糖尿病だから市販薬を使ってはいけない」と考えることでも、「市販薬だから大丈夫」と考えることでもありません。
自分の病気と薬に合ったものを選ぶことです。
風邪をひくと血糖値が上がることがあります
風邪やインフルエンザなどで体調を崩すと、普段と同じ食事をしていなくても血糖値が高くなることがあります。
感染症などのストレスによって、血糖値を上げる方向に働くホルモンが増えるためです。
そのため、
「ほとんど食べていないのに血糖値が高い」
ということもあります。
これは市販薬の影響とは限りません。
風邪そのものによって血糖値が上昇している可能性もあります。
まず「総合感冒薬」に注意しましょう
ドラッグストアには「かぜ薬」「総合感冒薬」として、さまざまな製品があります。
こうした薬には、一つの製品の中に、
熱や痛みを抑える成分
鼻水を抑える成分
咳を抑える成分
痰を出しやすくする成分
など、複数の成分が入っていることがあります。
そのため、
商品名だけではなく、どんな成分が含まれているか
を確認することが大切です。
特に、別の解熱鎮痛薬などを一緒に使用すると、同じ成分を重複して服用してしまう場合があります。
解熱鎮痛薬は飲んでもいい?
発熱や頭痛、のどの痛みがあると、解熱鎮痛薬を使いたくなることがあります。
糖尿病があるからといって、すべての解熱鎮痛薬が使用できないわけではありません。
ただし、注意したいのが腎機能です。
一部の解熱鎮痛薬、特にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、状況によって腎臓に影響を与えることがあります。
特に、
腎機能が低下している
脱水している
嘔吐や下痢がある
食事や水分が十分にとれない
高齢である
心不全がある
といった場合には注意が必要です。
糖尿病のある方では腎臓病を合併していることもあるため、
「痛み止めだから気軽に何日も飲み続ける」
のではなく、腎機能に不安がある場合には医師や薬剤師に確認してください。
アセトアミノフェンなら絶対安全?
解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンが使われることがあります。
腎臓への影響などの点からNSAIDsとは特徴が異なりますが、
「アセトアミノフェンなら、どれだけ飲んでも安全」ではありません。
用量を守る必要があります。
また、総合感冒薬の中にアセトアミノフェンが含まれていることがあります。
そこへ別のアセトアミノフェン製剤を追加すると、知らないうちに同じ成分を重複してしまう可能性があります。
複数の風邪薬や解熱鎮痛薬を一緒に使う場合には、成分を確認しましょう。
咳止めや鼻炎薬にも注意が必要?
市販の咳止めや鼻炎薬にも、さまざまな成分があります。
製品によっては、
眠気
動悸
口の渇き
などが起こることがあります。
高血圧や心臓病、緑内障、前立腺の病気などがある方では、成分によって注意が必要になることもあります。
糖尿病以外の病気についても、薬剤師に伝えることが大切です。
「糖尿病用の風邪薬」はあるの?
糖尿病患者さん全員に共通して、
「この風邪薬なら必ず安全」
という一つの薬があるわけではありません。
同じ糖尿病でも、
若く腎機能が正常な方
高齢の方
インスリンを使用している方
腎機能が低下している方
心臓病がある方
では条件が違います。
そのため、市販薬を購入するときには、
「糖尿病があります。普段この薬を飲んでいます」
と薬剤師や登録販売者に伝えて選ぶのが安心です。
お薬手帳を薬局でも見せましょう
お薬手帳は病院だけで使うものではありません。
ドラッグストアや薬局で市販薬を購入するときにも役立ちます。
お薬手帳があれば、
糖尿病薬
血圧の薬
心臓の薬
腎臓病に関連する薬
その他の処方薬
との重複や組み合わせを確認しやすくなります。
スマートフォンのお薬手帳を利用している場合には、それを見せてもよいでしょう。
市販薬を飲んだら血糖値が高くなった?
風邪薬を飲んだあと血糖値が高くなると、
「薬のせいだ」
と思うことがあります。
しかし、先ほど説明したように、
風邪や感染症そのものが血糖値を上昇させることがあります。
また、食事量、活動量、脱水なども血糖値に影響します。
一回の血糖値だけで原因を決めつけないことが大切です。
「糖質ゼロ」の薬を探した方がいい?
シロップやのど飴などでは糖質を気にする方もいます。
もちろん、糖分を大量に摂取することは避けたいところですが、
風邪の治療中に少量使用する医薬品の糖質だけを過度に心配する必要はありません。
むしろ、
薬の有効成分
ほかの薬との組み合わせ
腎機能
体調
などを確認することの方が重要な場合があります。
「糖尿病だから絶対に糖分の入った薬は使えない」と考える必要はありません。
風邪のとき、糖尿病の薬はいつも通り飲む?
ここはとても重要です。
風邪をひいても、
糖尿病薬をすべて自己判断で中止するわけではありません。
一方、
発熱
嘔吐
下痢
食欲低下
水分がとれない
などがある場合には、薬によって対応を変更することがあります。
これは以前の記事で説明したシックデイです。
薬によって対応が違うため、
「風邪だから糖尿病薬を全部休む」
「いつもの薬だから、食べられなくても全部飲む」
のどちらも自己判断では行わないようにしましょう。
特にインスリンを使用している方は注意
インスリンを使用している方では、
「食欲がないからインスリンも全部やめよう」
と考えないでください。
特に1型糖尿病では、インスリン不足によって糖尿病性ケトアシドーシスにつながる危険があります。
体調が悪いときのインスリンの使い方について、あらかじめ主治医から指示を受けておくことが大切です。
水分をたくさんとれば大丈夫?
発熱などでは脱水予防が重要です。
しかし、
糖尿病だから、とにかく大量の水を飲めばよい
というわけではありません。
特に、
心不全
高度の腎機能低下
透析治療中
などで水分量について指示を受けている方は、その指示に従ってください。
また、糖分を多く含む清涼飲料水を大量に飲むと、血糖値をさらに上げることがあります。
市販薬だけで様子を見ない方がよい症状
風邪だと思っていても、医療機関を受診した方がよい場合があります。
たとえば、
高熱が続く
呼吸が苦しい
胸が痛い
嘔吐を繰り返す
水分がとれない
強いだるさが続く
血糖値が非常に高い状態が続く
意識がもうろうとする
などです。
特に、糖尿病がある方では感染症をきっかけに血糖管理が大きく崩れることがあります。
「ただの風邪だろう」と無理に我慢しないことも大切です。
意識障害や強い呼吸困難などがある場合には、救急対応が必要です。
市販薬を何日も飲み続けていい?
市販薬は、症状を一時的に和らげる目的で使用するものが多くあります。
市販薬を使っていても症状が改善しない場合に、
「もう少し強い薬を追加しよう」
「別の風邪薬も一緒に飲もう」
と自己判断で薬を増やしていくのは避けましょう。
症状が続く場合には、病気そのものの診断が必要になることがあります。
市販薬を選ぶときの3つのポイント
① 「糖尿病があります」と薬剤師や登録販売者に伝える
できれば、腎臓病や心臓病などほかの病気についても伝えましょう。
② お薬手帳を見せる
処方薬との重複や組み合わせを確認しやすくなります。
③ 複数の風邪薬・解熱鎮痛薬を自己判断で組み合わせない
商品名が違っていても、同じ成分が含まれていることがあります。
まとめ
糖尿病があっても、市販の風邪薬を使用できる場合はたくさんあります。
しかし、
「市販薬だから安全」
「糖尿病だから市販薬は全部だめ」
のどちらも正しくありません。
特に大切なのは、
糖尿病だけでなく、腎機能や心臓病、現在使用している薬まで含めて考えることです。
市販薬を購入するときには、
「糖尿病があります。この薬を飲んでいます」
と伝えて、お薬手帳を見せるのがおすすめです。
そして風邪をひいたときには、市販薬だけでなく糖尿病のシックデイへの対応も忘れないようにしましょう。
糖尿病があるからといって、風邪薬を必要以上に怖がる必要はありません。
一方で、自己判断でいくつもの薬を組み合わせる必要もありません。
分からないときに薬剤師や主治医へ確認することも、安全に糖尿病治療を続けるための大切な方法です。
