糖尿病の薬を長く飲むと効かなくなる?薬に慣れてしまうの?

糖尿病の患者さんから、

「同じ薬を長く飲んでいると、だんだん効かなくなりますか?」
「薬に体が慣れてしまうのが心配です」
「最初から強い薬を使うと、将来使える薬がなくなりませんか?」
「薬が増えたのは、前の薬が効かなくなったからですか?」

と聞かれることがあります。

長期間薬を使う糖尿病では、こうした心配を持つのは自然なことです。

結論からいうと、

糖尿病の薬を長く飲んだから、単純に体が薬に慣れて効かなくなる、とは限りません。

何年か治療を続けているうちに同じ薬では血糖値を管理しにくくなることはあります。

しかし、その大きな理由の一つは、

薬への「慣れ」ではなく、糖尿病や体の状態が時間とともに変化すること

です。

2型糖尿病は時間とともに変化します

2型糖尿病では、

インスリンが効きにくくなること
インスリンを分泌する力が低下すること

などが血糖値の上昇に関係します。

そして、この状態はずっと一定とは限りません。

長い経過の中で、インスリンを分泌する力が低下してくることがあります。

そのため、

以前は1種類の薬で十分だったのに、数年後には別の薬を追加する

ことがあります。

これは必ずしも、

「同じ薬を飲み続けたから効かなくなった」

という意味ではありません。

「薬に慣れる」のと「糖尿病が変化する」のは違います

たとえば、ある薬を飲み始めてHbA1cが改善したとします。

数年間は安定していたものの、その後少しずつHbA1cが上昇してきました。

このとき、

「体が薬に慣れてしまった」

と思うかもしれません。

しかし実際には、

インスリン分泌の変化
体重の変化
運動量の低下
食生活の変化
加齢
ほかの病気や薬の影響

など、さまざまな理由が考えられます。

HbA1cが上がった=薬への耐性ができた

と単純に考えないことが大切です。

薬を早く始めると、将来効かなくなる?

「まだ軽い糖尿病なのだから、薬はできるだけ後まで取っておいた方がいい」

と考える方もいます。

しかし、

糖尿病薬を温存しておけば、将来もっと効くようになる

という考え方ではありません。

薬が必要な状態なのに、

「将来のために薬を使わない」

ことで高血糖が長期間続く方が問題になることがあります。

糖尿病治療では、その時点の血糖値や体の状態、合併症などを考えて必要な治療を選びます。

「強い薬は最後まで取っておく」必要がある?

糖尿病薬は、

弱い薬から強い薬へ順番に使う

という単純なものではありません。

現在は薬の選択肢が増えています。

患者さんの、

年齢
体重
腎機能
心臓病の有無
低血糖の危険性
血糖値
生活スタイル

などを考えて薬を選びます。

そのため、

「この薬は強いから最後まで使わない」

という考え方だけで治療を決めるわけではありません。

薬が追加されたら、最初の薬は失敗だった?

そうとは限りません。

たとえば、最初の薬で数年間良好な血糖管理ができていたのであれば、その期間、その薬は役割を果たしていたと考えられます。

その後、体の状態が変化したために別の薬を追加することがあります。

これは、

「最初の治療が失敗した」のではなく、「現在の状態に合わせて治療を更新した」

と考える方が分かりやすいでしょう。

薬が増えるのは自分の努力が足りないから?

これも必ずしもそうではありません。

もちろん、食事や運動は糖尿病治療の大切な部分です。

しかし、2型糖尿病は生活習慣だけですべてが決まる病気ではありません。

長く治療を続けていると、十分に気をつけていても治療内容を変更する必要が出てくることがあります。

薬が追加されたことを「自分が頑張らなかった結果」と考える必要はありません。

必要なときに治療を変更することも、糖尿病とうまく付き合う方法です。

逆に薬が減ることもある?

あります。

糖尿病治療は、

一度薬が増えたら、その後は増え続ける

というものでもありません。

たとえば、

体重が減った
食生活が変わった
運動量が増えた
低血糖が起こるようになった
高齢になり治療目標が変わった
腎機能など体の状態が変わった

といった場合には、薬を減らしたり変更したりすることがあります。

つまり、糖尿病の治療は一方向ではありません。

その時々の体の状態に合わせて調整していくものです。

インスリンを始めると飲み薬が効かなくなる?

インスリンを始めたからといって、それまでの飲み薬がすべて効かなくなるわけではありません。

2型糖尿病では、

インスリンと飲み薬を組み合わせる
インスリン量を減らす
状態によってはインスリンを中止して飲み薬中心に戻す

など、さまざまな治療方法があります。

一方、1型糖尿病では基本的に継続したインスリン治療が必要です。

インスリンを始めることを「飲み薬が全部効かなくなった最終段階」と考える必要はありません。

薬を休めば、また効くようになる?

「しばらく薬を休めば、体がリセットされてまた効くのでは?」

と考える方もいます。

しかし、

薬を自己判断で休むことはおすすめできません。

薬を中止すると血糖値が上昇することがあります。

「薬を休ませるための休薬期間」を自分で作る必要はありません。

治療を変更したい場合には、血糖値やHbA1cを確認しながら主治医と相談してください。

HbA1cが上がったら、まず薬を増やすの?

必ずしもそうではありません。

HbA1cが上昇したときには、

薬をきちんと飲めているか
食事が変わっていないか
運動量が減っていないか
体重が変わっていないか
感染症などがなかったか
ほかの薬が追加されていないか

なども確認します。

また、一回のHbA1cだけでなく、時間的な変化を見ることも重要です。

原因を考えたうえで、

今の薬を続ける
量を調整する
別の薬を追加する
薬を変更する

などを判断します。

「薬を増やす前に、もっと食事を頑張ります」はだめ?

食生活を見直すことは大切です。

しかし、

「薬を増やしたくないから、炭水化物をほとんど食べない」
「もっと体重を落とさなければ」
「毎日激しい運動をしなければ」

と無理をする必要はありません。

極端な食事制限や運動は、

低血糖
栄養不足
筋肉量の低下

などにつながる場合があります。

生活改善と薬物療法は、どちらか一方を選ぶものではありません。

無理なく続けられる生活と、必要な薬を組み合わせることが大切です。

同じ薬を何年も飲んでいて大丈夫?

その薬が現在も必要で、安全に使用できているのであれば、長期間使用すること自体が問題とは限りません。

一方で、

年齢
腎機能
肝機能
体重
低血糖
ほかの病気
使用しているほかの薬

などは時間とともに変化します。

そのため、

「長く使っているからそのまま」ではなく、現在も自分に合っているかを定期的に確認する

ことが大切です。

薬を変えると言われたら確認してみましょう

主治医から、

「薬を追加しましょう」
「薬を変更しましょう」

と言われたときには、

「なぜ変更するのですか?」

と聞いて大丈夫です。

さらに、

「この薬にはどんな目的がありますか?」
「低血糖は起こりやすいですか?」
「腎臓や心臓への効果も考えて選んでいるのですか?」
「今までの薬はどうするのですか?」

などを確認すると、治療の意味が分かりやすくなります。

糖尿病治療は「使える薬を消費していく」ものではありません

糖尿病治療を、

1番目の薬が効かなくなる
↓
2番目の薬を使う
↓
それも効かなくなる
↓
最後にインスリン

という一本道のように考える必要はありません。

実際の治療はもっと柔軟です。

薬を追加することもあれば、

減らす
変更する
組み合わせる
インスリンを利用する

こともあります。

そして近年は、血糖値だけではなく、心臓や腎臓などを含めて治療を考えることが重要になっています。

今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病の薬を長く飲むと、単純に「体が慣れて効かなくなる」わけではありません

② 同じ薬で血糖管理が難しくなる背景には、糖尿病や体の状態の変化が関係していることがあります

③ 薬は「将来のために温存する」のではなく、その時点の自分に必要な治療を選ぶことが大切です

まとめ

糖尿病の薬を長く飲んでいると、

「このまま使っていたら、いつか効かなくなるのでは?」

と心配になることがあります。

確かに、何年か経つと同じ治療では血糖管理が難しくなることがあります。

しかし、それを単純に、

「薬に体が慣れてしまった」

と考える必要はありません。

特に2型糖尿病では、病気そのものや体の状態が時間とともに変化します。

その変化に合わせて、

薬を追加する
変更する
減らす
インスリンを利用する

など、治療も変えていきます。

糖尿病治療は、

「使える薬を一つずつ使い切っていく治療」ではありません。

また、

「薬を増やさずに我慢できた人ほど優秀」という治療でもありません。

大切なのは、薬の数ではなく、

現在の自分に合った治療を、無理なく安全に続けることです。

参考文献・情報源

この記事は糖尿病の自然経過と薬物療法の考え方を扱っていますので、個別参考文献は以下の2つ程度で十分です。

  • 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』
  • 日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド2024』