高齢になってから運動を始めても遅くない?糖尿病と筋力低下をわかりやすく解説

糖尿病の運動について、

「もう高齢だから、今さら運動しても意味がない」
「若いころのようには歩けない」
「転ぶのが心配なので、あまり動かない方がいいのでは?」

と思っている方もいるかもしれません。

確かに、年齢を重ねると若いころと同じように運動することは難しくなります。

しかし、

高齢になったからといって、体を動かす意味がなくなるわけではありません。

むしろ高齢になるほど、糖尿病の血糖値だけではなく、筋力や歩く力を保つことも大切になってきます。

目標は激しい運動をすることではありません。

これからも自分らしい生活を続けるために、できる範囲で体を動かすことです。

年齢とともに筋肉は減りやすくなります

年齢を重ねると、少しずつ筋肉量や筋力が低下しやすくなります。

さらに、

「転ぶのが怖いから外に出ない」
「疲れるからあまり歩かない」

という生活が続くと、体を動かす機会が減り、さらに筋力が低下することがあります。

筋力が低下すると、

立ち上がる。
歩く。
階段を上る。
買い物に行く。

といった、これまで普通にできていたことが少しずつ大変になる場合があります。

高齢者の運動では、血糖値を下げることだけでなく、生活する力を保つことも大切な目的です。

「サルコペニア」という言葉を聞いたことがありますか?

高齢になると、筋肉量や筋力、身体機能が低下する「サルコペニア」が問題になることがあります。

糖尿病のある高齢者でも注意したい状態です。

ただし、

「サルコペニアにならないために激しい筋トレをしなければ」

と考える必要はありません。

まず大切なのは、必要以上に動かない生活にならないことです。

できる範囲で歩いたり、日常生活の中で筋肉を使ったりすることから考えてみましょう。

高齢者では「体重を減らす」だけを目標にしない

糖尿病というと、

「体重を減らしましょう」

というイメージが強いかもしれません。

もちろん、体重を減らすことが治療に役立つ方もいます。

しかし、高齢者では事情が異なることがあります。

無理な食事制限で体重を減らすと、脂肪だけではなく筋肉まで減ってしまう可能性があります。

特に、もともとやせている方や食事量が少なくなっている方では注意が必要です。

「糖尿病だから、やせればやせるほどよい」わけではありません。

体重だけではなく、食事をきちんととれているか、筋力が低下していないかという視点も大切です。

ウォーキングだけでいい?

歩くことは、とてもよい運動です。

しかし、高齢者では筋肉を保つための運動も考えてみましょう。

だからといって、スポーツジムで重いバーベルを持ち上げる必要はありません。

たとえば、

・安全な椅子からゆっくり立って座る
・支えにつかまって、かかとを上げ下げする
・家の中で少し歩く
・日常生活の中で立ったり動いたりする

といった方法もあります。

大切なのは、何回できたかを競うことではありません。

「今までより少し筋肉を使う機会を増やす」

ところから始めればよいのです。

10分歩けなくても大丈夫

「30分歩きましょう」と言われても、高齢の方には難しいことがあります。

そんなときに、

「30分できないから運動しても意味がない」

と考える必要はありません。

10分でも構いません。

10分が難しければ、もっと短い時間から始めても構いません。

朝に少し歩く。
昼にも少し動く。
家の中で体を動かす。

という方法もあります。

できない時間を数えるより、できることを探してみましょう。

若い人と同じ運動をする必要はありません

運動の適切な量や強さは、人によって違います。

80歳の方が、40歳のころと同じ運動をする必要はありません。

また、同じ80歳でも、

毎日元気に外出している方と、歩くことに不安がある方では適した運動が違います。

年齢だけではなく、

現在の体力、筋力、持病、関節の状態、転倒の危険などを考えて運動を選ぶ

ことが大切です。

人と比べる必要はありません。

「転ぶのが怖い」場合はどうする?

転倒は高齢者にとって大きな問題です。

転倒して骨折すると、それをきっかけに歩く力が低下することがあります。

そのため、

「運動のためなら多少危なくても歩いた方がいい」

という考え方はおすすめできません。

ふらつきがある方は、無理に一人で屋外を歩かないようにしましょう。

椅子や手すりなどを利用して安全に体を動かす方法もあります。

転倒を繰り返している場合や、歩くことに強い不安がある場合には、主治医や理学療法士などに相談するとよいでしょう。

足の状態にも注意しましょう

糖尿病では、神経障害によって足の感覚が低下していることがあります。

高齢者では、視力の低下などによって足の小さな傷に気づきにくいこともあります。

ウォーキングをする方は、

足に傷がないか、靴ずれしていないか

を確認する習慣をつけましょう。

足に傷や潰瘍がある場合には、無理に歩数を増やさず、医療機関に相談してください。

低血糖にも注意が必要です

インスリンや低血糖を起こす可能性のある薬を使用している方では、運動によって低血糖が起こることがあります。

高齢者では、低血糖がふらつきや転倒につながることもあります。

運動中に冷や汗、ふるえ、強い空腹感、ふらつきなどを感じた場合には、無理に続けないでください。

低血糖を起こす可能性のある方は、ブドウ糖などを携帯しておくと安心です。

薬やインスリンを自己判断で変更せず、運動時の注意について主治医と確認しておきましょう。

「今日はできなかった」でも大丈夫

高齢になると、体調には日によって差が出ることがあります。

昨日は20分歩けたけれど、今日は疲れている。

そんな日もあります。

毎日同じ運動をしなければならないわけではありません。

疲れている日は休む。

元気な日は少し歩く。

また次の日に始める。

それでも十分です。

運動を続けるということは、一度も休まないことではなく、休んでもまた戻ってくることです。

「血糖値」だけではなく「できること」を見てみましょう

高齢者の糖尿病治療では、HbA1cの数字だけを見るのではなく、

「自分で歩ける」
「自分で立ち上がれる」
「買い物に行ける」
「好きな場所へ出かけられる」

といったことも、とても大切です。

運動を続けても体重やHbA1cが大きく変わらないこともあります。

それでも、

「以前より歩くのが楽になった」

のであれば、それも大切な成果です。

高齢者の運動で覚えておきたい3つのポイント

① 高齢になってからでも、体を動かすことには意味があります

② 血糖値だけでなく、筋力や歩く力を保つことも大切です

③ 若い人と比べず、自分の体力に合った安全な運動を続けましょう

まとめ

「もう年だから運動しても遅い」

と考える必要はありません。

高齢になれば、若いころと同じように動けなくなるのは自然なことです。

だからこそ、

速く歩くことより、歩き続けられること。

体重を減らすことだけでなく、筋肉を保つこと。

運動の数字を達成することより、自分の生活を守ること。

を大切にしてみましょう。

運動は、若い人だけのものではありません。

糖尿病のためだけに行うものでもありません。

これからも自分の足で、自分らしい生活を続けるために。

無理なく、安全に、自分にできる運動を続けていきましょう。