糖尿病ではなぜ足の傷に注意するの?糖尿病足病変とフットケアをわかりやすく解説

糖尿病の患者さんから、

「糖尿病になると、どうして足を毎日見た方がいいのですか?」
「小さな靴ずれくらいなら放っておいても大丈夫ですか?」
「足が痛くないので問題ないと思うのですが……」

と聞かれることがあります。

糖尿病では、足の小さな傷や靴ずれが思った以上に悪化することがあります。

これには主に、

神経障害
血流障害
感染

が関係しています。糖尿病情報センター

だからといって、

「糖尿病になったら足に傷を作ってはいけない」

と必要以上に怖がる必要はありません。

大切なのは、足に少し関心を持ち、小さな異常を早く見つけることです。

糖尿病足病変とは?

糖尿病の患者さんに起こる足のトラブルを、広く糖尿病足病変と呼びます。

たとえば、

靴ずれや傷
たこ
足の変形
感染
潰瘍(かいよう)

などがあります。

重症になると組織が傷んで壊疽(えそ)に至ることもありますが、すべての糖尿病患者さんに起こるわけではありません。糖尿病情報センター

重要なのは、

「小さな足のトラブルを、小さいうちに見つける」

ことです。

なぜ糖尿病では足の傷が問題になるの?

糖尿病で足の傷に注意する理由は、一つではありません。

まず重要なのが糖尿病性神経障害です。

神経障害によって足の感覚が鈍くなると、

「靴が当たっている」
「足に傷ができている」
「熱いものに触れている」

といったことに気づきにくくなります。

つまり、傷そのものよりも、

「傷があることに気づかず、歩き続けてしまう」

ことが問題になる場合があります。糖尿病情報センター

血流が悪いと傷が治りにくくなる

糖尿病では動脈硬化が進み、足の血流が低下していることがあります。

傷を治すためには、血液によって酸素や栄養が運ばれる必要があります。

ところが足の血流が悪くなると、傷が治りにくくなります。

つまり糖尿病では、

傷ができる
→ 気づきにくい
→ 治りにくい

という条件が重なることがあるのです。糖尿病情報センター

感染にも注意が必要です

傷口から細菌が入り、感染を起こすこともあります。

特に、

赤くなってきた
腫れてきた
熱を持っている
膿が出る
傷が広がってきた

といった変化がある場合は、放置しないことが大切です。

糖尿病情報センターでも、足に傷がある場合や、赤く腫れている場合などには医療機関への相談が勧められています。糖尿病情報センター

「痛くないから大丈夫」ではありません

これは前回の神経障害の記事ともつながる大切なポイントです。

普通なら足に傷ができると、

「痛いから見てみよう」

となります。

ところが神経障害で感覚が低下していると、大きな傷でもあまり痛みを感じないことがあります。

したがって、

痛みの強さと、傷の重症度が一致しないことがあります。

糖尿病で足の感覚が低下している方では、痛みだけを目安にしないことが重要です。日本デザイン学会

毎日、足を見てみましょう

難しいことをする必要はありません。

お風呂に入るときや靴下を履くときなどに、足を少し見る習慣をつけるだけでも役立ちます。

確認したいのは、

  • 傷や靴ずれがないか
  • 赤くなっていないか
  • 腫れていないか
  • 水ぶくれがないか
  • たこができていないか
  • 皮膚の色が変わっていないか

といった点です。

足の裏は自分では見にくいため、鏡を使ったり、必要であれば家族などに見てもらったりする方法もあります。

「痛くなったら見る」のではなく、「痛くなくても時々見る」

という習慣が足を守ることにつながります。糖尿病情報センター

靴も大切です

靴が足に合っていないと、同じ場所に繰り返し圧力がかかり、靴ずれや傷の原因になります。

特に神経障害があると、

「靴がきつい」
「小石が入っている」

といったことにも気づきにくくなる場合があります。

靴を履く前に中に異物がないか確認し、自分の足に合った靴を選ぶことが大切です。

新しい靴を履くときには、最初から長時間履き続けず、足に赤みや靴ずれができていないか確認するとよいでしょう。

裸足で歩いてもいい?

足の感覚が低下している方では、裸足で歩くことはおすすめできません。

床に落ちている小さな物を踏んだり、屋外で足を傷つけたりしても気づかないことがあるためです。

特に神経障害がある場合には、

「足を傷つけない環境を作る」

こともフットケアの一つです。

爪はどう切ればいい?

爪を深く切りすぎると、皮膚を傷つける原因になります。

また、巻き爪や厚く変形した爪を無理に自分で処置すると、傷を作ってしまうことがあります。

自分で爪を切ることが難しい場合や、すでに足の感覚・血流に問題がある場合には、医療機関のフットケアなどで相談する方法があります。

たこを自分で削ってもいい?

たこや魚の目を、刃物などを使って自分で削ることは避けましょう。

感覚が低下していると、皮膚を深く傷つけても気づかないことがあります。

また、市販の薬剤などを使用する場合も、糖尿病や血流障害がある方では注意が必要なことがあります。

無理に自分で処置せず、主治医や医療スタッフへ相談してください。

湯たんぽやカイロにも注意

冬になると特に注意したいのが低温やけどです。

神経障害によって温度を感じにくくなっていると、

湯たんぽ
電気あんか
使い捨てカイロ

などによって、本人が気づかないうちにやけどをすることがあります。

糖尿病情報センターでも、感覚が低下している方について、こうした暖房器具によるやけどへの注意を呼びかけています。糖尿病情報センター

「熱くないから大丈夫」と判断しないことが大切です。

どんなときに病院へ相談した方がいい?

足に小さな傷を見つけたからといって、すべてが重症になるわけではありません。

ただし、

傷が治らない
赤みや腫れが広がっている
膿が出ている
皮膚の色が黒っぽく変化している
足が急に冷たくなった、血流低下が疑われる

といった場合には、早めに医療機関へ相談してください。

発熱など全身症状を伴う場合や、急速に悪化している場合には、より迅速な評価が必要です。

フットケア外来とは?

医療機関によっては、糖尿病患者さんを対象としたフットケア外来があります。

足の状態を確認したり、爪や皮膚の手入れ、靴の選び方、自宅での足の観察方法などについて相談できます。

特に、

神経障害がある
足の血流が悪い
以前に足潰瘍を起こしたことがある

といった方では、専門的なフットケアが重要になります。糖尿病情報センター

足を守ることは、歩くことを守ること

糖尿病のフットケアというと、

「足を切断しないため」

という怖い話ばかりが強調されることがあります。

もちろん重症化を防ぐことは重要です。

しかし、もっと身近な目的があります。

それは、

自分の足で歩き続けることです。

歩けることは、運動だけでなく、買い物、仕事、旅行など日常生活そのものにつながっています。

フットケアは特別なことではなく、

これからも自分の足で生活するための習慣

と考えてみてください。

今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病では、神経障害・血流障害・感染などが重なることで、小さな足の傷が悪化することがあります

② 神経障害があると「痛くないから大丈夫」とは限りません

③ 難しいケアより、まず毎日少し足を見ることが大切です

まとめ

糖尿病では、足の小さな傷が問題になることがあります。

しかし、

「糖尿病だから足が怖い」

と考える必要はありません。

大切なのは、

足を見る
足に合った靴を履く
傷を作らないようにする
異常があれば早めに相談する

という基本的なことです。

特に神経障害があると、傷があっても痛みを感じにくい場合があります。

だからこそ、

「痛くなったら気をつける」のではなく、「痛くないときから足を気にかける」。

それが糖尿病のフットケアの基本です。

参考文献・情報源

  1. 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024
  2. 糖尿病情報センター.フットケア
  3. 糖尿病情報センター.糖尿病足病変