糖尿病の治療をしていると、「HbA1cは7%未満を目指しましょう」と言われることがあります。
でも、なぜ7%なのでしょうか。
HbA1cを下げること自体が、糖尿病治療の本当の目的ではありません。
大切なのは、将来の糖尿病合併症をできるだけ防ぎ、健康な人と変わらない生活の質と寿命を目指すことです。
この記事では、HbA1cの治療目標と、なぜ血糖値を良好な状態に保つことが大切なのかを、できるだけわかりやすく説明します。
糖尿病治療の本当の目的は?
糖尿病治療の目的は、単に血糖値やHbA1cの数字を下げることではありません。
血糖値が高い状態が長く続くと、少しずつ血管が傷つき、将来さまざまな合併症が起こりやすくなります。
代表的なものには、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害があります。また、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化による病気のリスクにも関係します。
そのため糖尿病治療では、血糖値だけでなく、血圧、コレステロール、体重、喫煙などにも注意しながら、将来の合併症をできるだけ防いでいきます。
HbA1cを良好な状態に保つことは、そのための大切な手段の一つです。
ただし、HbA1cは低ければ低いほどよいわけではありません。治療によって低血糖が増えたり、治療そのものが大きな負担になったりすることは避ける必要があります。
無理なく、安全に、自分に合った目標を長く続けることが大切です。
なぜ「HbA1c 7%未満」が一つの目標なの?
HbA1cは、過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する指標です。
糖尿病では、血糖値が高い状態が長く続くほど、網膜症、腎症、神経障害などの合併症が起こりやすくなります。
そこで、糖尿病の合併症を予防するための血糖管理目標として、一般的にはHbA1c 7.0%未満が一つの目安とされています。
ここで大切なのは、
「一度だけ7%未満になればよい」という意味ではない
ということです。
HbA1cが7%未満になった月があっても、その後8%、9%という状態が長く続けば、十分な合併症予防にはつながりません。
反対に、毎回完璧な数字を目指す必要もありません。
大切なのは、無理のない治療を続けながら、できるだけ長い期間、良好な血糖状態を保つことです。
7%は「合格・不合格」の線ではありません
「HbA1cが7.1%だったから失敗した」
「6%台だから安心」
というように考える必要はありません。
HbA1cと合併症のリスクは、7%を境に突然変わるわけではありません。7%は、治療を考えるうえでのわかりやすい目安の一つです。
また、治療目標はすべての患者さんで同じではありません。
年齢、糖尿病になってからの期間、使用している薬、低血糖の危険性、ほかの病気、生活状況などによって、目標を個別に考える必要があります。
特に高齢の方や重い低血糖を起こす危険性が高い方では、無理にHbA1cを下げることがかえって危険な場合があります。
「7%未満にすること」そのものが目的ではなく、安全に良好な血糖状態を長く維持し、将来の合併症をできるだけ減らすことが目的です。
なぜ「長く続ける」ことが大切なの?
糖尿病の合併症は、血糖値が一度高くなったから、すぐに起こるものではありません。
血糖値が高い状態が何年も続くことで、少しずつ血管や神経に負担がかかり、合併症につながっていきます。
そのため、HbA1cを一度だけ良くすることよりも、良い状態をできるだけ長く続けることが大切です。
たとえば、
6.8% → 6.9% → 6.7% → 7.0%
のように比較的安定している場合と、
6.8% → 8.2% → 6.9% → 8.5%
のように高い時期を繰り返している場合では、同じように「6%台になったことがある」といっても意味が違います。
糖尿病治療では、ある1回の検査結果だけを見るのではなく、数か月、数年という長い期間で血糖を良好な状態に保つことを考えていきます。
ただし、そのために無理な食事制限をしたり、低血糖を繰り返したりする必要はありません。
「一時的に頑張ってHbA1cを下げる」のではなく、自分に合った治療を無理なく続ける。
これが糖尿病とうまく付き合っていくための大切な考え方です。
HbA1cだけを見ればよいの?
いいえ。HbA1cは糖尿病治療でとても重要な検査ですが、HbA1cだけで血糖の状態をすべて判断できるわけではありません。
HbA1cは、最近の血糖値を平均的にみる指標です。そのため、同じHbA1c 7.0%でも、血糖の動き方は人によって違います。
たとえば、
Aさん:100 → 140 → 160 → 120 mg/dL
のように比較的安定している人と、
Bさん:60 → 250 → 70 → 280 mg/dL
のように、低血糖と高血糖を繰り返している人が、似たHbA1cになることがあります。
つまり、
HbA1cが目標範囲に入っていても、低血糖や大きな血糖変動が隠れていることがあります。
そのため実際の治療では、HbA1cだけでなく、必要に応じて日々の血糖測定やCGM(持続血糖測定)の結果、低血糖の有無なども確認します。
また、糖尿病の合併症を防ぐために大切なのは血糖だけではありません。
血圧、LDLコレステロールなどの脂質、体重、喫煙、腎機能なども一緒に管理することが重要です。
糖尿病治療は、単に「HbA1cという数字を下げる治療」ではありません。
血糖を安全に良い状態に保ちながら、血圧や脂質なども含めて、将来の合併症をできるだけ防ぐことが本当の目的です。
今日覚えてほしい3つのこと
① HbA1c 7%未満は多くの人にとって一つの目安
② ただし、目標値は一人ひとり違う
③ 一度下げることより、安全に良い状態を長く続けることが大切
