糖尿病では心筋梗塞や脳梗塞になりやすい?動脈硬化との関係をわかりやすく解説

糖尿病の患者さんから、

「糖尿病になると心筋梗塞になりやすいのですか?」
「血糖値が高いと、なぜ血管が悪くなるのでしょうか?」
「HbA1cだけ良ければ、心臓や脳の病気は防げますか?」

と聞かれることがあります。

糖尿病では、網膜症、腎臓病、神経障害などの合併症だけでなく、動脈硬化によって心臓や脳の血管の病気が起こるリスクにも注意が必要です。

代表的なのが、

心筋梗塞
脳梗塞

などです。

ただし、

「糖尿病になったら心筋梗塞や脳梗塞になる」という意味ではありません。

大切なのは、血糖値だけを見るのではなく、血圧やコレステロール、喫煙なども含めて血管を守っていくことです。

動脈硬化とは?

動脈は、心臓から全身へ血液を運ぶ血管です。

健康な動脈には弾力がありますが、さまざまな原因によって血管の壁が傷み、硬くなったり狭くなったりすることがあります。

これを動脈硬化といいます。

動脈硬化が進むと、血管の内側にコレステロールなどがたまり、血液の流れが悪くなります。

さらに血栓によって血管が突然詰まると、重大な病気につながることがあります。

糖尿病と動脈硬化にはどんな関係がある?

高血糖の状態が長く続くことは、血管に負担をかけ、動脈硬化に関係します。

しかし、動脈硬化を進める原因は糖尿病だけではありません。

たとえば、

  • 高血圧
  • LDLコレステロールなどの脂質異常
  • 喫煙
  • 肥満
  • 加齢
  • 腎臓病

なども関係します。

これらが重なるほど、心血管疾患のリスクは高くなります。

そのため糖尿病治療では、

「血糖値だけ良くすればよい」

という考え方では十分ではありません。

心筋梗塞とは?

心臓の筋肉に血液を送っている血管を冠動脈といいます。

冠動脈が血栓などによって詰まり、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなる病気が心筋梗塞です。

典型的には、

強い胸の痛みや圧迫感
胸が締めつけられる感じ
冷や汗
吐き気
息苦しさ

などが現れることがあります。

胸の強い症状が続く場合には、救急対応が必要です。

糖尿病では胸が痛くないこともある?

ここは特に覚えておいてほしいところです。

糖尿病性神経障害などの影響によって、心臓に問題が起きても典型的な胸痛を感じにくい場合があります。

そのため、

「胸が痛くないから心臓は大丈夫」

とは必ずしも言えません。

突然の強い息苦しさ、冷や汗、吐き気、これまでにない強いだるさなどがある場合にも注意が必要です。

症状だけで自己判断せず、心筋梗塞が疑われるような急な症状があれば救急要請を含めて速やかに医療機関へ相談してください。

脳梗塞とは?

脳梗塞は、脳へ血液を送る血管が詰まり、脳の一部に十分な血液が届かなくなる病気です。

突然、

顔の片側がゆがむ
片方の手足に力が入らない・しびれる
言葉が出にくい、ろれつが回らない

などの症状が出ることがあります。

このような症状は、様子を見て翌日まで待つものではありません。

脳梗塞は治療開始までの時間が重要です。

突然このような症状が現れた場合には、すぐに救急要請を考えてください。

足の血管にも動脈硬化は起こる?

動脈硬化は心臓や脳だけに起こるものではありません。

足へ血液を送る動脈が狭くなったり詰まったりする病気を、**末梢動脈疾患(PAD)**といいます。

歩くとふくらはぎなどが痛くなり、休むと楽になる症状がみられることがあります。

さらに進行すると、安静にしていても足が痛くなったり、傷が治りにくくなったりすることがあります。

これは前の記事で説明した糖尿病足病変とも深く関係します。

神経障害で傷に気づきにくいことに加えて血流も悪いと、足の傷がさらに治りにくくなることがあります。

HbA1cを下げれば心筋梗塞を防げる?

適切な血糖管理は大切です。

しかし、

心筋梗塞や脳梗塞の予防は、HbA1cだけでは考えません。

血圧が高ければ血圧を管理する。

LDLコレステロールなどに問題があれば脂質管理を行う。

喫煙している場合には禁煙を考える。

腎臓病があれば、その状態も考慮する。

このように、複数の危険因子を総合的に管理することが重要です。

コレステロールも重要なの?

重要です。

特にLDLコレステロールは動脈硬化と深く関係します。

糖尿病の患者さんでは、血糖値だけでなく、

LDLコレステロール
HDLコレステロール
中性脂肪

なども定期的に確認します。

治療目標は全員同じではありません。

すでに冠動脈疾患などがあるか、ほかの危険因子がどの程度あるかなどによっても考え方が変わります。

そのため、

「基準値の範囲だから絶対に大丈夫」

と数字だけで自己判断せず、自分の目標値を主治医に確認するとよいでしょう。

血圧も糖尿病の治療なの?

血圧管理も、糖尿病患者さんの血管を守るうえで非常に重要です。

糖尿病と高血圧が一緒にあると、心血管疾患だけでなく腎臓病の進行にも関係します。

そのため診察では、

「HbA1cはいくつだったか」

だけでなく、

「血圧はどうだったか」

にも目を向けてみてください。

禁煙には意味がある?

あります。

喫煙は動脈硬化や心血管疾患の重要な危険因子です。

糖尿病がある方では、血糖管理とともに禁煙も非常に重要な対策になります。

「長年吸っているから、今さらやめても意味がない」

と考える必要はありません。

自分だけで禁煙することが難しい場合には、医療機関に相談する方法もあります。

運動は血管を守るためにも大切

運動というと、

「血糖値を下げるため」

と考えがちです。

しかし、運動には血糖だけでなく、体力、体重、血圧などにも良い影響が期待できます。

つまり、

運動はHbA1cのためだけにするものではありません。

これまでの記事でお伝えしてきたように、最初から激しい運動をする必要はありません。

無理なく続けられる身体活動を増やしていくことが大切です。

ただし、心臓病がある方や運動時に胸痛・強い息切れなどがある方は、運動の方法について主治医へ相談してください。

「血糖値は良いのに薬が増えた」のはなぜ?

HbA1cが目標範囲なのに、

「血圧の薬が追加された」
「コレステロールの薬を勧められた」

ということがあります。

すると、

「糖尿病が悪くなったのですか?」

と思うかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

糖尿病治療の最終的な目的は、単に検査値を良くすることではなく、将来の合併症をできるだけ防ぎ、健康な生活を続けることです。

血圧や脂質を治療することも、そのための大切な一部です。

今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病では、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈硬化による病気にも注意が必要です

② 血管を守るには、HbA1cだけでなく血圧・脂質・喫煙なども一緒に考えます

③ 突然の胸部症状や、顔・手足・言葉の異常が出た場合は、様子を見ず速やかな対応が必要です

まとめ

糖尿病の合併症というと、

網膜症
腎臓病
神経障害

がよく知られています。

しかし、糖尿病では心臓や脳、足の太い血管を守ることも大切です。

そして、動脈硬化を予防するために見るのは血糖値だけではありません。

血糖、血圧、脂質、喫煙などを総合的に考える。

これが大切です。

すべての数字を完璧にしようと考える必要はありません。

一つの検査値だけにとらわれず、自分にとって重要な危険因子を主治医と一緒に確認し、一つずつ整えていきましょう。

糖尿病治療の目的は、

「良いHbA1cを取ること」そのものではなく、その先にある心臓・脳・腎臓・目・足を守り、これからの生活を守ること

なのです。

参考文献・情報源

  1. 日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024
    糖尿病診療ガイドライン2024(日本糖尿病学会)

2. 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター.糖尿病の慢性合併症について
糖尿病の慢性合併症(糖尿病情報センター)