糖尿病のために運動を始めて、
「毎日歩いているのに血糖値があまり変わらない」
「1か月頑張ったのにHbA1cが下がらない」
「運動しても効果がないのでは?」
「もっと激しい運動をしないといけない?」
と思ったことはないでしょうか。
せっかく運動を始めたのですから、数字がよくなってほしいと思うのは当然です。
しかし、
運動を始めたら、すぐに血糖値やHbA1cが大きく改善するとは限りません。
また、血糖値やHbA1cに大きな変化が見られなくても、
「運動には意味がなかった」
ということではありません。
糖尿病の運動は、1回の血糖値や1回のHbA1cだけで評価するものではないのです。
運動したら、その日の血糖値は必ず下がる?
運動すると筋肉がブドウ糖を利用するため、血糖管理の改善につながります。
しかし、
運動した日の血糖値が必ず下がるわけではありません。
血糖値には、
食事
薬やインスリン
運動の種類や強さ
睡眠
ストレス
体調
さまざまなホルモン
など、多くのものが影響しています。
さらに、強い運動では一時的に血糖値が上がることもあります。
そのため、
「30分歩いたのに血糖値が下がらなかった」
という一回の結果だけで、運動の効果を判断する必要はありません。
HbA1cはすぐには変わりません
HbA1cは、その日に測った血糖値とは違います。
最近の血糖状態をある程度まとめて反映する指標です。
そのため、
「今週から運動を始めたから、来週にはHbA1cが大きく下がる」
というものではありません。
生活習慣の変化がHbA1cに表れるまでには時間がかかります。
だからこそ、
短期間で結果が出ないからといって、すぐに運動をやめる必要はありません。
1か月運動してHbA1cが変わらなかったら?
「1か月も頑張ったのにHbA1cが同じだった」
とがっかりする方もいます。
しかし、HbA1cは運動だけで決まるものではありません。
たとえば、
運動量は増えたけれど食事量も増えた。
仕事が忙しく睡眠不足だった。
体調を崩した時期があった。
糖尿病そのものが変化している。
など、さまざまなことが影響します。
「HbA1cが変わらない=運動が効かなかった」
と単純には判断できません。
運動の効果は「血糖値」だけではありません
運動というと、
「血糖値を下げるためにするもの」
というイメージが強いかもしれません。
しかし、運動にはそれ以外にも大切な意味があります。
たとえば、
筋力を保つ。
体力を保つ。
心臓や血管の健康につなげる。
歩く力を保つ。
日常生活を動きやすくする。
気分転換になる。
などです。
つまり、血糖値が大きく変わらなかったとしても、体には別のよい変化が起こっている可能性があります。
「階段が楽になった」も大切な効果
運動を始めて、
「体重は変わらない」
「HbA1cもほとんど変わらない」
という場合でも、
「以前より長く歩けるようになった」
「階段を上るのが楽になった」
「疲れにくくなった」
「外出する機会が増えた」
という変化があるかもしれません。
これらも立派な成果です。
特に年齢を重ねると、
「将来も自分の足で生活できること」
は非常に大切です。
HbA1cだけでは表せない運動の価値にも目を向けてみましょう。
体重が減らなくても意味があります
運動を始めると、
「体重も減るはず」
と期待する方も多いと思います。
しかし、運動したからといって、必ず体重が減るわけではありません。
体重は食事量、水分、筋肉量、年齢などさまざまな影響を受けます。
また、運動すると食欲が増える方もいます。
だから、
「体重が減らない=運動に意味がない」
ではありません。
体重計の数字だけで運動を評価しないことが大切です。
効果が出ないから運動量を倍にする?
これは注意が必要です。
「HbA1cが下がらないから、30分のウォーキングを1時間にしよう」
「もっと速く走ろう」
と考える方もいます。
しかし、
効果が見えないからといって、運動量を急に増やす必要はありません。
運動量を急に増やせば、
膝や腰を痛める
足に靴ずれができる
疲労がたまる
低血糖を起こす
などの問題が起こることがあります。
最初から頑張りすぎると、結局運動そのものをやめてしまうことにもつながります。
「もっと頑張る」前に生活全体を見てみる
血糖値やHbA1cが思うように改善しない場合には、
「運動が足りない」
と決めつけるのではなく、生活全体を見てみましょう。
食事はどうだったか。
間食が増えていないか。
睡眠はとれているか。
薬をきちんと使えているか。
体調に変化はないか。
運動だけを増やすより、別のところを見直した方がよい場合もあります。
糖尿病は、運動だけで治療する病気ではありません。
糖尿病は時間とともに変化することもあります
長く糖尿病と付き合っていると、
「以前と同じ生活をしているのに血糖値が上がってきた」
ということがあります。
2型糖尿病では、時間の経過とともにインスリンを分泌する力などが変化することがあります。
そのため、
血糖値が上がった原因を、すべて「運動不足」や「自分の努力不足」にする必要はありません。
生活を見直しても血糖値やHbA1cが高い状態が続く場合には、治療の見直しが必要なこともあります。
主治医に相談してください。
HbA1cだけを追いかけすぎない
糖尿病の診察では、HbA1cはとても大切な検査です。
しかし、
HbA1cだけが糖尿病治療のすべてではありません。
血圧や脂質。
体重。
筋力や体力。
低血糖がないか。
無理なく生活できているか。
こうしたことも大切です。
HbA1cをよくするために運動を頑張りすぎて、毎日の生活が苦しくなってしまっては長続きしません。
数字が変わらない時期もあります
運動を続けていると、
最初は血糖値が改善したのに、その後あまり変わらなくなることもあります。
それを、
「もう運動は効いていない」
と考える必要はありません。
よい状態を維持することも、運動の大切な役割の一つです。
数字がさらに下がらなくても、
体力や筋力を保てている。
体重の増加を抑えられている。
生活の中で体を動かす習慣が残っている。
それ自体に意味があります。
「いつ効果が出る?」に一つの答えはありません
運動の効果が表れるまでの時間は、人によって違います。
もともとの血糖状態。
運動習慣。
食事。
治療内容。
年齢。
体力。
行っている運動。
さまざまな条件が違うからです。
そのため、
「○週間運動すればHbA1cが○%下がる」
という形で全員に当てはめることはできません。
大切なのは、短期間の結果を求めすぎず、自分の体の変化を少し長い目で見ていくことです。
運動を続けてもHbA1cが高いときは?
運動を続け、食事にも気をつけているのにHbA1cが高い。
そんな場合には、
「もっと頑張らなければ」
と一人で抱え込まないでください。
薬の調整が必要な場合もあります。
また、血糖値とHbA1cが合わないように見える場合には、貧血など赤血球の状態やほかの要因が関係することもあります。
「頑張っているのに数字が改善しない」
ということ自体を主治医に伝えてください。
薬やインスリンを自己判断で変更するのではなく、治療全体を一緒に見直すことが大切です。
運動の効果について覚えておきたい3つのポイント
① 運動を始めても、血糖値やHbA1cがすぐに大きく改善するとは限りません
② 運動には、血糖値だけでなく筋力・体力・将来の生活を守る意味があります
③ 数字が改善しないからと運動を急に増やさず、食事や薬を含めて治療全体を見直しましょう
まとめ
運動を始めたのに、血糖値があまり変わらない。
HbA1cも思ったほど下がらない。
そんなとき、
「こんなに頑張っているのに意味がない」
と思うかもしれません。
でも、運動の効果は血糖値やHbA1cだけではありません。
以前より歩きやすくなった。
疲れにくくなった。
筋力を保てている。
外出する習慣ができた。
それも大切な変化です。
そして、糖尿病の血糖値は運動だけで決まるものではありません。
数字が改善しないときに必要なのは、「もっと頑張ること」とは限りません。
食事、運動、睡眠、薬、そして現在の糖尿病の状態。
治療全体を見直すことも大切です。
運動を、
「HbA1cを下げるための短期決戦」
にしないでください。
何か月、何年先も自分の体で生活していくために、
すぐに結果が出なくても、無理なく続けられる運動を。
それが糖尿病と長く付き合っていくための大切な考え方です。
