糖尿病の薬が増えたのは悪化したから?薬が追加される理由をわかりやすく解説

糖尿病の治療を続けていると、

「今まで1種類だった薬が2種類になった」
「また薬が増えてしまった」
「薬が増えたということは、糖尿病が重症になったの?」
「自分の努力が足りなかったのでは?」

と不安になることがあります。

確かに、血糖値が高くなったことをきっかけに薬が追加されることはあります。

しかし、

「薬が増えた=糖尿病が急に重症になった」

とは限りません。

また、

「薬が増えた=患者さんの努力が足りなかった」

ということでもありません。

糖尿病の薬を追加する理由は一つではないからです。

なぜ糖尿病では薬が増えることがあるの?

2型糖尿病では、血糖値が上がる原因が一つだけとは限りません。

たとえば、

インスリンが十分に分泌されない
インスリンが効きにくくなる
肝臓から糖が出すぎる
食後の血糖値が上がりやすい
腎臓での糖の扱いが変化する

など、さまざまな仕組みが関係しています。

糖尿病の薬には、それぞれ異なる働きがあります。

そのため、

一つの薬をどんどん増やすより、働きの異なる薬を組み合わせる

ことがあります。

薬が2種類になったからといって、単純に「病気が2倍悪くなった」ということではありません。

HbA1cが上がったから薬が増えることはあります

もちろん、血糖管理が十分でなくなったため薬を追加することもあります。

たとえば、

以前はHbA1c 6%台だったのに、最近は7%台後半が続いている

といった場合です。

食事や運動を見直すことも大切ですが、それだけで改善するとは限りません。

2型糖尿病では、時間の経過とともにインスリンを分泌する力が低下することがあります。

つまり、

同じ生活を続けていても、以前と同じ治療では血糖値を保ちにくくなることがあります。

これは必ずしも「本人が頑張らなかったから」ではありません。

年齢とともに治療が変わることもあります

糖尿病は長く付き合っていく病気です。

50歳のときに合っていた治療が、70歳になっても最適とは限りません。

年齢とともに、

腎機能
体重
筋肉量
食事量
活動量
ほかの病気
使用している薬

などが変化します。

そのため、薬を追加することもあれば、逆に減らすこともあります。

糖尿病治療は一度決めたら一生同じではありません。

その時の体の状態に合わせて調整していくものです。

血糖値だけを見て薬を選ぶ時代ではありません

現在の糖尿病治療では、HbA1cだけを見て薬を選ぶわけではありません。

患者さんによっては、

心臓を守ること
腎臓を守ること
低血糖を避けること
体重への影響を考えること

なども重要になります。

そのため、

HbA1cがそれほど高くなくても、患者さんの状態を考えて薬を追加・変更する場合があります。

「血糖値がそれほど悪くないのに薬が増えた」

という場合には、

「この薬は何のために追加されたのですか?」

と主治医に聞いてみてください。

薬を追加した目的が分かると、治療への不安が少なくなることがあります。

腎臓を守るために薬が追加されることもあります

糖尿病のある方では、腎臓の状態も非常に重要です。

腎機能や尿アルブミンなどを確認しながら治療します。

現在では、一部の糖尿病薬は血糖値を下げるだけではなく、患者さんの状態によっては腎臓や心臓を守ることも考えて選択されます。

その代表の一つがSGLT2阻害薬です。

ですから、

「HbA1cはそれほど変わっていないのに薬が追加された」

という場合でも、血糖値以外の目的があるかもしれません。

薬が増えるより、1種類を最大量にした方がいい?

これも一概には言えません。

糖尿病薬にはそれぞれ、

作用する仕組み
期待できる効果
副作用
低血糖の危険性
体重への影響

などの違いがあります。

一つの薬だけを増量するよりも、作用の異なる薬を組み合わせた方が適している場合があります。

反対に、薬を整理した方がよい場合もあります。

「薬の数が少ないほど良い治療」とは限りません。

重要なのは数ではなく、その患者さんに必要な薬を適切に使用しているかどうかです。

薬が増えたら副作用も増える?

薬の種類が増えると、確認すべきことが増えるのは確かです。

そのため医師は、

腎機能
肝機能
低血糖
脱水
体重変化
消化器症状

など、薬に応じた副作用にも注意しながら治療します。

ほかの病院から処方されている薬や、市販薬、サプリメントを使用している場合にも伝えてください。

お薬手帳を一つにまとめておくことも役立ちます。

薬が多くて飲むのが大変なら相談していい

糖尿病だけでなく、

高血圧
脂質異常症
心臓病
腎臓病

などの治療をしていると、薬が増えることがあります。

朝、昼、夕と薬があり、

「もう何をいつ飲めばいいのか分からない」

という状態になることもあります。

そのようなときは、

「薬が多くて管理するのが大変です」

と伝えてください。

これは治療上、とても大切な情報です。

治療内容によっては、服用回数を減らしたり、薬を整理したりできる場合があります。

薬が増えるのが嫌だから、食事をもっと厳しくすればいい?

「薬を増やしたくないから、ご飯をもっと減らします」

という方もいます。

しかし、薬を減らすことだけを目的に極端な食事制限をすることはおすすめできません。

特に、

高齢の方
やせている方
食事量が少ない方

では、過度な食事制限によって栄養不足や筋肉量の低下につながることがあります。

糖尿病治療の目的は、

薬をゼロにすることではありません。

将来の合併症を減らしながら、できるだけ健康な生活を続けることが大切です。

運動をもっと頑張れば薬を減らせる?

運動は糖尿病治療の大切な柱です。

しかし、

「薬が増えたのは運動が足りなかったから」

と考える必要はありません。

運動を続けていても、年齢や糖尿病の経過によって治療内容が変わることがあります。

また、薬を減らすために急に激しい運動を始めると、けがや低血糖につながることもあります。

薬を減らすための運動ではなく、健康を長く保つための運動

と考える方がよいでしょう。

薬を追加したら、ずっと飲み続けるの?

必ずしもそうとは限りません。

その後、

血糖値が改善した
体重が変化した
生活習慣が変わった
腎機能が変化した
副作用がみられた
年齢とともに治療目標が変わった

などによって、薬を減らしたり変更したりすることがあります。

一方、必要な薬を長期間続けることもあります。

大切なのは、

「一度始めたから一生」でも、「できるだけ早くやめる」でもなく、その時の状態に合っているかを定期的に見直すこと

です。

HbA1cが良くなったら薬を自分で減らしていい?

これは避けてください。

薬を飲んでいる状態でHbA1cが改善している場合、

「薬が効いているから良い値になっている」

可能性があります。

薬を自己判断で減らしたり中止したりすると、再び血糖値が上がることがあります。

また、血糖値以外の目的で使用している薬もあります。

HbA1cが改善したときこそ、

「この薬は今後どうしますか?」

と主治医と相談してください。

薬が増えたときに聞いてほしい3つの質問

薬が追加されたとき、何となく受け取るだけでなく、次のように聞いてみるとよいでしょう。

  • この薬は何のために追加するのですか?
  • 低血糖など、特に注意することはありますか?
  • 体調が悪いときはどうすればいいですか?

薬の名前をすべて暗記する必要はありません。

「何のための薬なのか」

を大まかに知っておくだけでも、治療を続けやすくなります。

薬が増えたときに覚えておきたい3つのポイント

① 薬が増えたからといって、必ずしも糖尿病が急に重症化したわけではありません

② 血糖値だけでなく、腎臓・心臓・低血糖などを考えて薬が追加されることがあります

③ 薬の数そのものより、「今の自分に必要な薬なのか」が大切です

まとめ

糖尿病の薬が増えると、

「また悪くなってしまった」

と落ち込む方がいます。

しかし、

薬の数は糖尿病の成績表ではありません。

2型糖尿病は長く経過する病気であり、年齢や体の状態によって必要な治療は変わります。

また現在では、血糖値を下げることだけでなく、腎臓や心臓を守ること、低血糖を避けることなども考えて薬を選びます。

ですから、薬が追加されたときには、

「自分の努力が足りなかったのだ」

と考えるより、

「今の自分には、なぜこの薬が必要なのだろう?」

と考えてみてください。

そして分からなければ、主治医や薬剤師に聞いてみましょう。

糖尿病治療で大切なのは、

できるだけ薬を少なくすることではなく、必要な治療を安全に、無理なく続けることです。

薬が増える日もあれば、減る日もあります。

その時々の体の状態に合わせながら、治療を続けていきましょう。