糖尿病の薬を飲むと太る?体重が増えやすい薬・減りやすい薬はある?

糖尿病の薬を始めるとき、

「糖尿病の薬を飲むと太ると聞いた」
「薬を始めてから体重が増えた気がする」
「やせる糖尿病の薬もあるの?」
「体重が増えるなら薬を飲みたくない」

と心配される方がいます。

結論からいうと、

糖尿病の薬がすべて体重を増やすわけではありません。

糖尿病薬には、

体重が増えることがある薬
体重への影響が比較的小さい薬
体重減少につながることがある薬

があります。

また、同じ薬でも体重への影響には個人差があります。

大切なのは、

「太るか、やせるか」だけで糖尿病薬の良し悪しを決めないこと

です。

なぜ糖尿病の治療で体重が増えることがあるの?

血糖値が非常に高い状態では、体内で利用しきれない糖が尿に排泄されます。

そのため、高血糖が強い方では、

「たくさん食べているのに体重が減ってきた」

ということがあります。

治療によって血糖値が改善すると、尿へ失われていたエネルギーが減り、体重が戻ることがあります。

つまり、

治療後の体重増加が、すべて薬の副作用とは限りません。

高血糖によって減っていた体重が、本来の状態へ戻っている場合もあります。

体重が増えることのある糖尿病薬は?

糖尿病薬の中には、体重増加につながることがあるものがあります。

代表的なのは、

インスリン

です。

インスリンによって血糖値が改善すると、糖をエネルギーとして利用しやすくなります。

また、低血糖を避けるために間食が増えるなど、治療に伴う食事の変化が体重に影響することもあります。

しかし、

「インスリンを使うと必ず太る」

わけではありません。

必要なインスリンを体重増加への不安だけで自己判断で減らすことは危険です。

SU薬でも体重が増えることがあります

SU薬(スルホニル尿素薬)は、膵臓からのインスリン分泌を促す薬です。

このタイプの薬でも、患者さんによっては体重が増えることがあります。

また、低血糖を起こす可能性があるため、

「低血糖が怖くて、いつも多めに食べている」

という状態になると、それが体重増加につながることもあります。

低血糖を繰り返している場合には、食事を増やして対応し続けるのではなく、治療内容を主治医と見直すことが大切です。

チアゾリジン薬でも体重が増えることがあります

チアゾリジン薬は、インスリンを効きやすくする薬です。

この薬では、体重が増加することがあります。

また、体液がたまってむくみが生じる場合があります。

したがって、

「薬を始めて急に体重が増えた」

「足がむくむようになった」

「息苦しさがある」

などの場合には、単なる食べ過ぎと決めつけず、医療機関へ相談してください。

体重が減ることのある糖尿病薬は?

一方、体重減少につながることがある糖尿病薬もあります。

代表的なのが、

GLP-1受容体作動薬

です。

食欲や胃腸の働きなどに作用し、患者さんによっては体重減少につながります。

また、

SGLT2阻害薬

でも体重が減少することがあります。

尿中へブドウ糖を排泄する作用があるためです。

ただし、

これらの薬を使えば誰でも同じようにやせるわけではありません。

効果には個人差があります。

「やせる薬なら、その薬が一番いい」の?

そうとは限りません。

糖尿病薬を選ぶときには、体重だけでなく、

血糖値
年齢
腎機能
心臓病の有無
低血糖の危険性
副作用
ほかに使用している薬
患者さんの生活状況

などを考えます。

体重減少が期待できる薬であっても、すべての患者さんに適しているわけではありません。

反対に、体重が増える可能性のある薬でも、その患者さんにとって必要なことがあります。

「やせる薬=良い薬」「太る薬=悪い薬」ではありません。

やせている糖尿病患者さんでは話が違います

糖尿病というと、

「太っている人の病気」

というイメージを持つ方がいます。

しかし、実際にはやせている糖尿病患者さんもいます。

特に高齢の方では、

体重が少ない
食事量が少ない
筋肉量が減っている

といったことがあります。

このような方にとっては、

さらに体重を減らすことが必ずしも良いことではありません。

筋肉量まで減ってしまえば、体力低下や転倒などにつながることもあります。

糖尿病治療では、

「体重は低ければ低いほどよい」わけではありません。

高齢者では「やせすぎ」にも注意

高齢になると、体重だけでなく筋肉量も重要になります。

体重が減ったとしても、

脂肪が適度に減ったのか
筋肉が減ったのか

によって意味が違います。

「糖尿病だからもっとやせなければ」

と食事を減らしすぎると、低栄養や筋力低下につながる場合があります。

特に高齢の方では、

血糖値・体重・栄養・筋肉を一緒に考える

ことが大切です。

薬で体重が減れば食事制限は必要ない?

これも違います。

体重減少につながる薬を使用していても、

「薬でやせるから好きなだけ食べてよい」

というわけではありません。

一方で、

「もっと薬を効かせたいから食事を極端に減らす」

必要もありません。

糖尿病の食事は、

極端に減らすのではなく、無理なく続けられる食べ方を考える

ことが基本です。

薬を使っても体重が減らないのは効いていないから?

体重減少が期待できる薬を使っていても、体重があまり変わらない方もいます。

だからといって、

薬がまったく効いていないとは限りません。

血糖値への効果と体重への効果は同じではありません。

また、薬によっては心臓や腎臓への効果も考えて使用することがあります。

体重だけで薬の効果を判断しないようにしましょう。

体重が減りすぎる場合にも相談を

糖尿病治療中に体重が減ると、

「糖尿病には良いことだから」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、

短期間で体重が大きく減った
食欲がない
食事が十分にとれない
筋力が落ちた
強いだるさがある

といった場合には注意が必要です。

薬の影響だけでなく、ほかの病気が隠れていることもあります。

意図していない体重減少が続く場合には、主治医へ相談してください。

急に体重が増えた場合も「太った」とは限りません

反対に、短期間で体重が急に増えた場合にも注意が必要です。

脂肪が短期間で急激に増えたのではなく、体内に水分がたまっている可能性があります。

特に、

足がむくむ
息苦しい
横になると苦しい
短期間で体重が増えた

などがある場合には、心臓や腎臓などの問題が関係することもあります。

単なる食べ過ぎと考えず、医療機関へ相談してください。

「薬を飲んで太ったからやめる」は避けましょう

薬を始めたあと体重が増えると、

「この薬のせいだからやめよう」

と思うかもしれません。

しかし、自己判断で中止すると血糖値が悪化する可能性があります。

まず、

本当に薬による体重増加なのか
高血糖が改善して体重が戻ったのか
食事量が変化したのか
むくみではないか

などを確認することが大切です。

そのうえで、必要であれば治療内容を見直します。

「薬を使わずにやせた方がいい」とは限りません

体重が多い2型糖尿病の方では、適切な減量によって血糖値が改善することがあります。

しかし、

薬を使わず、自分の努力だけでやせることが優れた治療

というわけではありません。

食事、運動、薬物療法は対立するものではなく、組み合わせて考えるものです。

必要な薬を使用しながら生活習慣を整えることも、立派な糖尿病治療です。

体重だけでなく「続けられる治療」を考える

糖尿病治療では、

HbA1c
血糖値
体重

といった数字がどうしても気になります。

もちろん、どれも大切です。

しかし、治療は何年、何十年と続くことがあります。

そのため、

「一番体重が減る治療」より、「安全に長く続けられる治療」

という視点も大切です。

体重が気になる場合には、

「この薬は体重にどんな影響がありますか?」

と主治医や薬剤師に聞いてみてください。

糖尿病薬と体重について覚えておきたい3つのポイント

① 糖尿病薬がすべて体重を増やすわけではありません

② 体重が増えることのある薬も、減ることのある薬もありますが、「やせる薬=良い薬」とは限りません

③ 高齢者ややせている方では、体重減少だけでなく筋肉や栄養状態にも注意することが大切です

まとめ

糖尿病の薬には、体重への影響にも違いがあります。

インスリンや一部の糖尿病薬では体重が増えることがあり、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬などでは体重が減ることがあります。

しかし、

「太る薬は悪い、やせる薬は良い」

と単純に考えることはできません。

糖尿病治療で大切なのは、

血糖値だけでも、体重だけでもありません。

年齢、腎機能、心臓病、低血糖の危険性、栄養状態なども含めて、その人に合った治療を考えます。

そして、体重が増えたとしても、

「自分の努力が足りなかった」

と決めつける必要はありません。

反対に、体重が減ったからといって、

「治療がすべてうまくいっている」

とも限りません。

大切なのは、

体重の数字だけではなく、健康な状態を保ちながら無理なく治療を続けることです。

薬を始めてから体重が気になる場合には、自己判断で薬を中止せず、

「この体重の変化は薬と関係がありますか?」

と主治医に相談してみてください。