糖尿病の薬は何種類まで飲んで大丈夫?薬が多いと体に悪い?

糖尿病の治療を続けていると、

「最初は1種類だったのに、薬が3種類になりました」
「血圧やコレステロールの薬も合わせると、たくさん飲んでいます」
「こんなに薬を飲んで、体に悪くないのでしょうか?」
「薬は少ない方が健康なのでは?」

と心配になることがあります。

特に、長く糖尿病を治療している方では、薬の数が増えることは珍しくありません。

結論からいうと、

「薬が多い=体に悪い」とは限りません。

一方で、

必要性がはっきりしない薬を漫然と増やしてよいわけでもありません。

大切なのは薬の「数」だけではなく、

それぞれの薬に目的があり、現在の自分に必要なのか

ということです。

糖尿病の薬は何種類まで飲んでいいの?

「糖尿病薬は3種類まで」
「5種類以上は危険」

というような、すべての患者さんに当てはまる単純な上限はありません。

糖尿病の薬には、それぞれ異なる働きがあります。

たとえば、

インスリンの働きを改善する
インスリン分泌に作用する
尿へ糖を排泄する
消化管や食欲などに作用する
糖の吸収をゆっくりにする

などです。

一つの薬だけでは十分な効果が得られない場合、作用の異なる薬を組み合わせることがあります。

したがって、

薬が2種類、3種類になったことだけで「治療がおかしい」と考える必要はありません。

薬が増えたのは糖尿病が重症になったから?

必ずしもそうではありません。

2型糖尿病では、時間の経過とともに体の状態やインスリンを分泌する力が変化することがあります。

また、

体重
食事量
運動量
年齢
腎機能
ほかの病気

なども変化します。

そのため、以前と同じ治療では血糖管理が難しくなり、薬を追加することがあります。

さらに現在では、糖尿病薬の中には、血糖値を下げることだけではなく、心臓や腎臓を守る目的も考えて選ばれる薬があります。

つまり、

薬が増えた=HbA1cが悪くなったから

だけではありません。

糖尿病なのに、なぜ血圧やコレステロールの薬も必要なの?

糖尿病治療の目的は、HbA1cを下げることだけではありません。

大切なのは、

心筋梗塞
脳卒中
腎臓病
そのほかの合併症

などをできるだけ防ぐことです。

そのため、患者さんによっては、

糖尿病薬
血圧の薬
コレステロールなど脂質の薬

を一緒に使用します。

薬の数だけを見ると多く感じますが、

それぞれ違う目的で将来のリスクを減らそうとしている

場合があります。

「薬をたくさん飲むと肝臓や腎臓が悪くなる」は本当?

これも一概には言えません。

薬の中には、腎機能や肝機能に応じて量を調整したり、使用を避けたりするものがあります。

そのため、糖尿病診療では定期的に血液検査などを行いながら薬を選びます。

一方で、

薬を飲んでいること自体が、必ず肝臓や腎臓を傷めるというわけではありません。

むしろ、糖尿病や高血圧を十分に治療しないことで腎臓などに負担がかかる場合もあります。

さらに、一部の糖尿病薬は腎臓や心臓を守る目的でも使用されています。

それなら薬は多くても気にしなくていい?

そういう意味でもありません。

薬が増えると、

飲み間違い
飲み忘れ
重複
薬同士の相互作用
副作用

などに注意する必要があります。

特に、

複数の医療機関から薬を処方されている
市販薬も使っている
サプリメントも飲んでいる

という方では、全体を一度整理することが大切です。

ポリファーマシーとは?

薬が多い状態について、ポリファーマシーという言葉があります。

ただし、

「薬が何種類以上なら、それだけでポリファーマシーだから悪い」

と考えるのは適切ではありません。

問題なのは単純な薬の数ではなく、

薬が多いことで副作用が起きている
同じような薬が重複している
飲み方が複雑になりすぎている
現在は必要性が低くなった薬が残っている

など、薬による不利益が生じている状態です。

必要な薬が複数あることと、不適切な多剤併用は同じではありません。

高齢になると薬が増えやすいのはなぜ?

年齢とともに、

糖尿病
高血圧
脂質異常症
心臓病
腎臓病
骨の病気

など、複数の病気を治療することが増えます。

その結果、薬の種類も増えやすくなります。

一方、高齢になると腎臓や肝臓の働き、体格、食事量などが変化し、若いころと同じ薬や量が適切とは限らなくなることがあります。

そのため、

薬を追加することだけでなく、減らせないか定期的に見直すこと

も大切です。

HbA1cが良くなったら薬を減らせる?

減らせる場合はあります。

体重が変化した
食事や運動習慣が変わった
低血糖が増えた
年齢や腎機能が変化した

などによって、治療を軽くできることがあります。

ただし、

HbA1cが良い=薬が不要

とは限りません。

薬を使用しているからこそ、良いHbA1cを維持できている可能性もあります。

また、血糖値以外の目的で使用している薬もあります。

薬を減らせるかどうかは、主治医と相談して判断しましょう。

「できるだけ薬をゼロにする」が糖尿病治療の目標?

薬を使わずに良好な状態を保てるのであれば、それは一つの選択肢です。

しかし、

「薬を飲んでいる=治療に失敗している」

わけではありません。

薬をゼロにすることだけを目標にして、

食事を極端に減らす
無理な運動をする
必要な薬を自己判断でやめる

ことの方が問題になる場合があります。

糖尿病治療の本当の目的は、

薬の数をゼロにすることではなく、できるだけ健康に生活し、合併症を防ぐこと

です。

薬が多すぎると思ったら、主治医に聞いてもいい?

もちろんです。

「先生が出した薬だから、減らしたいと言いにくい」

と感じる必要はありません。

むしろ、

「この薬は何のために飲んでいますか?」
「今も全部必要ですか?」
「もう少し飲み方を簡単にできますか?」

と聞くことは大切です。

薬を減らすことが難しい場合でも、なぜ必要なのか分かるだけで納得して続けやすくなることがあります。

1日3回の薬を1回にまとめられることもある?

薬によっては、治療を簡単にできる場合があります。

たとえば、

服用回数を減らす
配合剤を利用する
一包化する

などが選択肢になることがあります。

ただし、すべての薬をまとめられるわけではありません。

「薬が多くて飲むのが大変」

という場合には、我慢せず主治医や薬剤師に伝えてください。

配合剤とは?

2種類以上の有効成分を1錠にまとめた薬があります。

これを配合剤といいます。

たとえば、別々に2錠飲んでいた薬を、条件が合えば1錠の配合剤に変更できることがあります。

薬そのものを減らしているわけではありませんが、飲む錠剤の数を減らせることがあります。

一方で、細かく量を調整しにくくなることもあるため、患者さんごとに判断します。

飲み忘れが多いのは意志が弱いから?

そうとは限りません。

朝・昼・夕・寝る前に複数の薬があり、さらに食前・食後の違いまであれば、誰でも間違えやすくなります。

薬が多くて管理が難しい場合には、

お薬手帳
薬の一包化
服薬カレンダー
スマートフォンのアラーム

などを利用する方法があります。

そして何より、

「飲み忘れることがあります」と医師や薬剤師に伝えること

が重要です。

実際の生活に合わない治療方法なら、見直せる可能性があります。

複数の病院に通っている人は特に注意

糖尿病は内科、腰痛は整形外科、心臓は循環器科など、複数の医療機関を受診している方もいます。

この場合、それぞれの医師が他院の薬を正確に把握していないと、似た薬が重複する可能性があります。

お薬手帳はできるだけ一つにまとめて、すべての医療機関や薬局で見せる

ようにしましょう。

市販薬やサプリメントについても伝えてください。

自分で「この薬はいらなそう」と減らしていい?

自己判断で中止することはおすすめできません。

症状がないから不要に見えても、

血圧を下げる
腎臓を守る
心血管疾患を予防する

などの目的で使われている場合があります。

反対に、

「以前は必要だったけれど、今は見直せる」

という薬が見つかることもあります。

だからこそ、

自分で減らすのではなく、一緒に見直す

ことが大切です。

薬を見直すときに聞いてみたい4つのこと

① この薬は何のために飲んでいますか?

目的を確認します。

② 今も必要ですか?

年齢や体の状態が変われば、必要性も変化することがあります。

③ 飲み方を簡単にできますか?

回数や錠数を減らせる場合があります。

④ この薬を減らした場合、何に注意すればいいですか?

減量・中止後に確認すべき血糖値や症状などを聞いておきます。

今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病薬に「何種類以上なら危険」という単純な上限があるわけではありません

② 大切なのは薬の数ではなく、それぞれの薬に現在も必要な目的があるかどうかです

③ 薬が多くて負担なら、自己判断で中止せず「減らせないか、簡単にできないか」と相談しましょう

まとめ

糖尿病の治療を続けていると、薬が増えることがあります。

さらに高血圧や脂質異常症、心臓病、腎臓病などの治療が加われば、薬の数はさらに多くなります。

しかし、

「薬が多い=悪い治療」ではありません。

必要な薬を複数使うことで、血糖だけでなく心臓や腎臓などを守っている場合があります。

一方で、

薬が重複していないか
今も必要なのか
副作用がないか
飲み方が複雑すぎないか

を定期的に確認することも大切です。

糖尿病治療の目標は、

「薬をゼロにすること」ではありません。

必要な治療をできるだけ無理なく続けながら、低血糖や合併症を防ぎ、健康な生活を長く続けることです。

「薬が多すぎる気がする」

と思ったときは、自分で減らすのではなく、

「この薬は今も必要ですか?」

と主治医や薬剤師に聞いてみてください。

それは治療に反対することではなく、自分の治療を一緒に見直すための大切な質問です。

参考文献・情報源