糖尿病の薬は旅行にどう持っていく?国内・海外旅行での注意点

糖尿病の薬を飲んでいる方から、

「旅行のとき、薬は何日分持っていけばいいですか?」
「海外旅行では時差がありますが、いつ飲めばいいですか?」
「薬をスーツケースに入れても大丈夫ですか?」
「旅行先で薬をなくしたらどうすればいいですか?」

と聞かれることがあります。

糖尿病があっても、多くの場合、準備をしておけば旅行を楽しむことができます。

大切なのは、

「旅行だから特別なことをする」というより、いつもの治療を安全に続けられるよう準備しておくこと

です。

糖尿病があっても旅行していい?

糖尿病があるというだけで、旅行をあきらめる必要はありません。

ただし旅行中は、

食事の時間が変わる
外食が増える
いつもより歩く
逆に長時間座っている
睡眠時間が変わる
薬を飲む時間がずれる

など、普段とは違う生活になります。

そのため、血糖値もいつもと違った動きをすることがあります。

旅行前に少し準備しておくと安心です。

薬は旅行日数ぴったりではなく、少し余裕を持って

旅行には、予定している日数分だけではなく、少し余裕を持って薬を準備しておくと安心です。

交通機関の欠航や遅延、悪天候などで予定どおり帰宅できないこともあります。

特に海外旅行では、簡単に同じ薬を入手できるとは限りません。

長期旅行の場合には、出発前の診察で、

「○日間旅行します」

と主治医に伝えておきましょう。

薬はできれば自分の手元にも持っておく

飛行機を利用する場合、必要な薬をすべて預け入れ荷物だけに入れてしまうと、

荷物が届かない
到着が遅れる

といったトラブルの際に困ります。

そのため、旅行中に必要な糖尿病薬は、すぐ確認できるよう自分の手元にも準備しておくと安心です。

航空会社や渡航先によって持ち込みの規則が異なる場合がありますので、特別な医療用品を携行する場合は事前に確認してください。

お薬手帳を持っていきましょう

旅行先で体調を崩したときに、

「白い糖尿病の薬を飲んでいます」

だけでは、どの薬なのか分かりません。

薬には、

薬の名前
成分
量
1日の回数

などの情報があります。

お薬手帳や現在の処方内容が分かるものを持っていくと、旅行先で受診した場合にも役立ちます。

スマートフォンなどに薬の情報を控えておく方法もあります。

ただし、できれば薬の正式な名称と用量が分かるようにしておきましょう。

薬は元の包装のまま持っていった方がいい?

特に海外旅行では、何の薬か確認できる状態にしておくことが大切です。

薬だけをまとめて別の容器に入れると、

「これは何の薬だったかな?」

と自分でも分からなくなることがあります。

また、海外で説明が必要になったときにも薬の情報が分かりにくくなります。

長期の海外旅行では、必要に応じて主治医や薬剤師に、

「薬の名称が分かる書類を用意した方がよいですか?」

と相談しておくとよいでしょう。

海外旅行では薬の名前に注意

日本の商品名が、そのまま海外で通じるとは限りません。

そのため、海外へ行く場合には、

商品名だけでなく、有効成分の一般名も分かるようにしておく

と役立ちます。

たとえば旅行先で薬を紛失した場合、現地の医療機関で治療内容を説明しやすくなります。

ただし、同じ成分名でも国によって承認されている薬や用量などが異なることがあります。

現地で自己判断で似た薬を購入して代用することは避けましょう。

時差がある場合、薬は日本時間のまま飲む?

ここは少し注意が必要です。

海外旅行では、

「日本では朝8時だから、現地では夜中でも薬を飲まなければ」

と考えるかもしれません。

しかし、薬によって対応は異なります。

食事に合わせて使用する薬もあれば、服用間隔を考える必要がある薬もあります。

したがって、

「時差が何時間なら○時間ずらす」という共通ルールはありません。

時差の大きい国へ旅行する場合には、出発前に、

「この薬は現地時間でいつ飲めばいいですか?」

と主治医や薬剤師に確認してください。

食事に合わせる薬は特に注意

旅行では、

朝食が遅くなる
昼食を抜く
機内食を食べる
夕食が深夜になる

など、食事時間が変わりやすくなります。

糖尿病薬の中には食事との関係が重要な薬があります。

そのため、

時計の時間だけを見て薬を飲み、食事は何時間もあとになる

といったことには注意が必要です。

特に低血糖を起こす可能性のある治療をしている方は、事前に服用方法を確認しておきましょう。

旅行中はいつもより歩くことがあります

観光旅行では、

「普段は3,000歩くらいなのに、旅行では1万歩以上歩いた」

ということもあります。

活動量が増えることで、血糖値がいつもより低くなる場合があります。

特にインスリンや低血糖を起こす可能性のある薬を使用している方は注意してください。

ブドウ糖など、低血糖に対応できるものを携帯しておく

と安心です。

逆に旅行中は血糖値が上がることもあります

旅行中は、

外食
デザート
飲酒
睡眠不足
長時間の移動

などが重なり、血糖値が高くなることもあります。

だからといって、

「旅行中だから薬を増やしておこう」

と自己判断で追加することは避けてください。

また、

「食べた分を取り戻すために何時間も歩こう」

と無理な運動をする必要もありません。

旅行中の一時的な血糖値だけに振り回されないことも大切です。

旅行中くらい食事を楽しんでもいい?

旅行の楽しみの一つは食事です。

糖尿病だからといって、

「旅行先でも絶対にいつもの食事以外は食べない」

と考える必要はありません。

一方で、

「旅行だから何をどれだけ食べても大丈夫」

でもありません。

一食だけで完璧に調整しようとするより、

量を少し意識する
ゆっくり食べる
連日食べすぎない

など、旅行全体でバランスを考えましょう。

旅行を楽しむことと糖尿病治療は両立できます。

薬を飲み忘れたら?

旅行中は生活リズムが変わるため、飲み忘れが起こりやすくなります。

飲み忘れたことに気づいても、

次に2回分まとめて飲むことは避けてください。

対応は薬によって異なります。

あらかじめ、

「旅行中にこの薬を飲み忘れたらどうすればいいですか?」

と確認しておくと安心です。

薬をなくしてしまったら?

まず、

薬の名前
用量
服用回数
最後に飲んだ時間

を確認します。

長期間薬を飲めない可能性がある場合には、旅行先の医療機関などへ相談してください。

特に海外では、

「日本で使っていた薬と見た目が似ているから」

という理由で、自己判断で別の薬を購入して服用することはおすすめできません。

お薬手帳や処方内容が分かる資料が、こうしたときに役立ちます。

発熱・下痢・嘔吐が起きたら?

旅行先でもシックデイは起こります。

発熱、下痢、嘔吐などがあり、食事や水分が十分にとれない場合には、いつもと同じように薬を使用してよいとは限りません。

一方で、

糖尿病の薬をすべて一律に中止するわけでもありません。

薬によって対応が異なります。

特に1型糖尿病では、食べられないからといって基礎インスリンまで自己判断で中止すると、糖尿病性ケトアシドーシスにつながる危険があります。

旅行前に、自分のシックデイルールを確認しておくことが大切です。

脱水にも注意しましょう

暑い地域への旅行、長時間の移動、発熱や下痢などでは脱水が起こりやすくなります。

糖尿病薬の中には、脱水時に特に注意が必要な薬もあります。

ただし、

「糖尿病だから水をたくさん飲めばよい」

という一律の考え方も適切ではありません。

心不全や高度な腎機能低下、透析治療中などで水分制限を指示されている方は、主治医から指示された範囲で対応してください。

インスリンを使用している方は別の準備も必要

インスリンを使用している場合には、

インスリン本体
注射針
血糖測定に必要なもの
低血糖時のブドウ糖

なども準備する必要があります。

また、インスリンは高温や凍結を避ける必要があります。

詳しくは、すでに掲載している

「インスリンは冷蔵庫に入れる?外出・旅行するときの保管方法をわかりやすく解説」

も参考にしてください。

海外旅行の前に確認したいこと

海外へ行く場合には、特に次の点を確認しておくと安心です。

  • 旅行期間より少し余裕を持った薬
  • 薬の名前・成分・用量が分かる資料
  • お薬手帳や処方内容
  • 時差がある場合の服薬方法
  • 飲み忘れた場合の対応
  • シックデイ時の対応
  • 低血糖に備えたブドウ糖
  • 必要に応じた医療機器や証明書

持ち込み規則は国や航空会社によって異なることがあります。海外旅行の場合には、渡航先の大使館・領事館や航空会社などの最新情報も確認してください。

旅行前の診察で伝えてください

旅行が決まったら、特に海外旅行や長期旅行の場合には、

「○日から○日まで旅行します」
「時差が○時間あります」
「飛行機に長時間乗ります」

などを主治医に伝えてください。

そして、

「薬は現地でいつ飲めばいいですか?」

と確認しておくと安心です。

薬によっては特別な変更が必要ないこともあります。

大切なのは、自己判断で複雑な調整をしないことです。

今日覚えてほしい3つのこと

① 旅行には、予定日数より少し余裕を持って糖尿病の薬を準備しましょう

② 海外旅行では、薬の商品名だけでなく有効成分・用量が分かるようにしておきましょう

③ 時差がある場合の飲み方は薬によって違うため、自己判断で変更せず事前に確認しましょう

まとめ

糖尿病があるからといって、旅行をあきらめる必要はありません。

大切なのは、

「旅行先でもいつもの治療を安全に続けられる準備をしておくこと」

です。

薬は少し余裕を持って準備し、お薬手帳や処方内容が分かるものも持参しましょう。

海外旅行では、時差や薬の持ち込みについても事前の確認が役立ちます。

そして旅行中は、普段より歩いたり、食事時間が変わったりすることで血糖値が変動することがあります。

旅行中まで完璧な血糖値を目指して、食事を極端に我慢したり、無理に運動したりする必要はありません。

準備するところは準備して、旅行そのものを楽しむ。

それも、長く糖尿病と付き合っていくための大切な考え方です。