糖尿病にサプリメントは効く?健康食品を飲む前に知っておきたいこと

糖尿病の患者さんから、

「血糖値にいいサプリメントを飲んでもいいですか?」
「テレビで糖の吸収を抑える健康食品を見ました」
「薬ではなく、できればサプリメントで治したいです」
「天然成分なら副作用も少ないですよね?」

と聞かれることがあります。

ドラッグストアやインターネットを見ると、

「血糖値が気になる方に」
「糖の吸収をおだやかに」
「健康的な血糖管理をサポート」

など、さまざまな商品があります。

では、こうしたサプリメントや健康食品は、糖尿病の治療に役立つのでしょうか。

結論からいうと、

サプリメントや健康食品を、糖尿病の薬の代わりとして考えることはおすすめできません。

一方で、すべての健康食品を一律に「意味がない」と考える必要もありません。

大切なのは、

「何のために使うのか」「本当に必要なのか」「安全に使えるのか」

を確認することです。

そもそもサプリメントと薬は同じもの?

同じではありません。

一般に、サプリメントは食品として扱われます。

一方、糖尿病の治療薬は、有効性や安全性を確認したうえで医薬品として使用されています。

見た目が錠剤やカプセルでも、

「錠剤だから薬と同じ」ではありません。

また、

「天然成分だから安全」
「食品だから副作用はない」

とも限りません。

健康食品でも、摂りすぎや薬との組み合わせによって健康上の問題が起こることがあります。消費者庁も、錠剤・カプセル状の健康食品では過剰摂取に注意し、複数製品の利用や医薬品との自己判断での併用を避けるよう案内しています。

「血糖値が気になる方に」と書いてあれば糖尿病に効く?

ここは特に注意したいところです。

食品の表示には、

「血糖値が気になる方に」

などと書かれていることがあります。

しかし、

その表示だけで「糖尿病を治療できる」という意味にはなりません。

健康食品は、糖尿病の治療薬とは役割が違います。

血糖値が高い方が、

「この健康食品を飲んでいるから病院の薬はいらない」

と考えて処方薬を中止することは避けてください。

トクホなら糖尿病に効く?

「特定保健用食品(トクホ)」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

また、

「機能性表示食品」
「栄養機能食品」

という表示もあります。

これらはすべて同じものではありません。

一定の制度に基づいて機能を表示できる食品ではありますが、

糖尿病を治療する医薬品という意味ではありません。

「トクホだから薬の代わりになる」

とは考えないようにしましょう。健康食品には、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品などの区分がありますが、いずれも医薬品とは別のものです。

「糖の吸収を抑える」と書いてあれば安心?

食品の中には、食後の血糖上昇を穏やかにすることを目的としたものがあります。

しかし、

それを摂れば、食事量を気にしなくてよいわけではありません。

たとえば、

「このサプリメントを飲んだから、甘いものを多めに食べても大丈夫」

とは考えない方がよいでしょう。

糖尿病治療では、一つの食品だけを見るのではなく、

食事全体
運動
体重
薬
睡眠や生活リズム

などを合わせて考えることが大切です。

サプリメントでHbA1cを下げることはできる?

健康食品の中には、血糖値との関連が研究されている成分もあります。

しかし、

糖尿病の治療薬と同じレベルでHbA1cを確実に下げることが確認されているとは限りません。

研究があったとしても、

対象者が少ない
使用期間が短い
製品や摂取量が違う

などによって、その結果をそのまま日常診療に当てはめられないこともあります。

「研究で効果があった」

という広告を見るときには、

その研究が本当にその商品について行われたものなのか

という点にも注意が必要です。

「自然由来」なら副作用はない?

これはよくある誤解です。

自然界には、体に強く作用する成分もたくさんあります。

したがって、

天然=安全

ではありません。

健康食品によっては、

肝臓
腎臓
消化管

などに影響することがあります。

また、アレルギーを起こす可能性もあります。

「食品だから副作用はない」

とは考えないようにしましょう。

サプリメントと糖尿病薬を一緒に飲んでもいい?

組み合わせによっては注意が必要です。

サプリメントや健康食品に含まれる成分が、

薬の作用を強める
薬の作用を弱める
吸収に影響する

可能性があります。

特に、

糖尿病薬
血圧の薬
血液を固まりにくくする薬
免疫に関係する薬

などを使用している方では、確認が必要なことがあります。

健康食品も含めて、飲んでいるものを医師や薬剤師に伝える

ことが大切です。

健康食品は「薬ではないから言わなくていい」?

むしろ、伝えてください。

患者さんから、

「これは薬ではなくサプリメントなので、言わなくてもいいと思っていました」

と言われることがあります。

しかし診療では、

ビタミン剤
ミネラル
漢方・生薬系の商品
プロテイン
健康茶
海外から購入したサプリメント

なども重要な情報になることがあります。

受診するときには、

「薬以外に飲んでいるものがあります」

と伝えてください。

商品名が分からなければ、容器や写真を見せてもよいでしょう。

腎臓病がある方は特に注意

糖尿病のある方では、腎機能が低下していることがあります。

腎臓の働きが低下していると、

健康な方では問題になりにくい成分でも、体内にたまりやすくなる場合があります。

また、

カリウム
リン
マグネシウム

などを含む製品にも注意が必要な場合があります。

特に透析治療を受けている方では、

**「健康に良さそうだから」

という理由だけでサプリメントを始めるのは避け、主治医や管理栄養士などに相談することをおすすめします。**

ビタミンなら多くとるほどいい?

ビタミンも、

多ければ多いほど健康になるわけではありません。

不足している場合には補充が必要ですが、必要以上に摂取しても意味がないことがあります。

脂溶性ビタミンなどは、過剰摂取による問題が起こることもあります。

また、複数のサプリメントを使用すると、

「それぞれの商品に同じビタミンが入っていた」

ということもあります。

複数の商品を組み合わせる場合には特に注意しましょう。

「糖尿病によいお茶」はどう?

健康茶や特定の植物成分について、

「血糖値によい」

と紹介されることがあります。

日常の飲み物として楽しむ程度であれば問題がないものもあります。

しかし、

大量に濃くして飲むことや、治療薬の代わりにすることはおすすめできません。

また、植物だからといって安全とは限りません。

腎機能や使用している薬によっては注意が必要なものもあります。

海外のサプリメントは大丈夫?

インターネットでは海外のサプリメントを簡単に購入できます。

しかし、国内の商品と同じ基準で考えられない場合があります。

製品によっては、

成分量が分かりにくい
表示とは異なる成分が含まれている
医薬品成分が混入している

といった問題が報告されることもあります。

「海外で人気だから」

「口コミが多いから」

だけで安全性を判断しないことが大切です。

SNSや口コミの「これで糖尿病が治った」は信じていい?

インターネットでは、

「これを飲んだらHbA1cが下がった」
「薬をやめられた」

という体験談を目にすることがあります。

しかし、一人の経験だけでは、

本当にその商品のおかげなのか
食事や運動も変わっていたのか
薬も使っていたのか
一時的な変化なのか

は分かりません。

体験談は医学的な効果を証明するものではありません。

健康食品を選ぶときには、広告や口コミだけではなく、信頼できる情報源を確認することが大切です。消費者庁も、広告のキャッチコピーや利用者の体験談だけを信用しないよう注意を促しています。

高いサプリメントほど効く?

価格と効果は比例しません。

「1か月3万円もするのだから、よく効くはず」

とは限りません。

高価であっても、糖尿病の治療効果が証明されているとは限りません。

健康食品を始める前には、

その費用を何年間続けるのか

という点も考えてみましょう。

場合によっては、その費用を食事や運動、歯科受診、靴など、ほかの健康管理に使う方が役立つこともあります。

サプリメントを使う前に確認したい5つのこと

健康食品を始める前に、次の点を確認してみてください。

① 何を目的に飲むのか

「なんとなく健康に良さそう」ではなく、目的をはっきりさせます。

② 本当に不足しているものなのか

血液検査などで不足が確認されている場合には、医療として補充した方がよいこともあります。

③ 現在の薬と一緒に使って問題ないか

医師や薬剤師に確認してください。

④ 腎臓や肝臓の病気がないか

持病によって注意すべき成分があります。

⑤ 効果が分からないまま何種類も増えていないか

一度、現在使用している健康食品を整理してみましょう。

サプリメントを始めたら記録しておきましょう

健康食品を利用する場合には、

商品名
成分
摂取量
始めた日

を記録しておくとよいでしょう。

その後、

血糖値
体調
腹痛
下痢
発疹
かゆみ

などに変化があれば、医師や薬剤師に相談してください。消費者庁も、健康食品の利用状況や体調変化を記録することを勧めています。

サプリメントを飲むなら薬を減らしてもいい?

これは避けてください。

健康食品を始めたからといって、

糖尿病薬を減らす
インスリンを減らす
処方薬を中止する

ことを自己判断で行ってはいけません。

血糖値が改善した場合には、その結果を主治医に伝えたうえで治療を見直します。

「サプリメントを始めたから薬をやめる」ではなく、「血糖値や体の状態を見ながら必要な治療を考える」

ことが大切です。

健康食品に頼りすぎなくて大丈夫です

糖尿病になると、

「何か特別なものを食べなければ」
「血糖値を下げる食品を探さなければ」

と思ってしまうことがあります。

しかし糖尿病治療の基本は、

特別な食品を探し続けることではありません。

毎日の食事
続けられる運動
必要な薬
定期的な検査

を組み合わせることです。

消費者庁も、健康維持・増進の基本はバランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養であり、健康食品はそれらに代わるものではないとしています。

今日覚えてほしい3つのこと

① サプリメントや健康食品は、糖尿病治療薬の代わりではありません

② 「天然」「トクホ」「機能性表示食品」だから絶対安全・確実に効く、とは限りません

③ サプリメントも、使用していることを主治医や薬剤師に伝えましょう

まとめ

糖尿病に関連するサプリメントや健康食品はたくさん販売されています。

中には、食後血糖などについて研究されている成分もあります。

しかし、

健康食品だけで糖尿病を治療することはできません。

また、

「天然だから安全」
「高価だから効果が高い」
「口コミが多いから信用できる」

とも限りません。

健康食品を利用するときには、

本当に必要なのか、現在の薬と一緒に使って安全なのか

を確認することが大切です。

そして、

「このサプリメントを飲んでいます」

と主治医に伝えることを遠慮する必要はありません。

糖尿病治療で大切なのは、特別な健康食品を探し続けることではなく、

毎日の生活と必要な治療を、無理なく長く続けることです。

参考文献・情報源

  • 消費者庁「健康食品(一般の方向け)」
  • 消費者庁「健康食品Q&A」「健康食品5つの問題」
  • 厚生労働省「いわゆる『健康食品』のホームページ」