糖尿病の薬にはどんな種類がある?飲み薬・注射薬の違いをわかりやすく解説

糖尿病の患者さんから、

「糖尿病の薬は種類が多くて、何が違うのか分かりません」
「友人と違う薬を飲んでいますが、どちらの薬が強いのですか?」
「注射になったら糖尿病が重症ということですか?」
「薬が2種類、3種類と増えて大丈夫でしょうか?」

と聞かれることがあります。

確かに、糖尿病の薬にはたくさんの種類があります。

しかし、薬の名前を全部覚える必要はありません。

まず知ってほしいのは、

糖尿病の薬は、すべて同じ方法で血糖値を下げているわけではない

ということです。

それぞれ働き方が違うため、その人の糖尿病の状態や年齢、体重、腎臓や心臓の状態、低血糖の危険性などを考えながら薬を選びます。

そもそも、なぜ糖尿病の薬が必要なの?

血糖値を下げるうえで重要なホルモンがインスリンです。

2型糖尿病では、

インスリンを出す力が低下することと、
インスリンが効きにくくなること

が組み合わさって血糖値が高くなります。

さらに、食事からの糖の吸収や、肝臓から血液中へ放出される糖、腎臓から尿への糖の排泄なども血糖値に関係しています。

糖尿病の薬は、こうした異なる仕組みに働きかけます。糖尿病情報センター

糖尿病の薬は「強い・弱い」だけではありません

患者さんから、

「この薬は強い薬ですか?」

と聞かれることがあります。

しかし糖尿病薬は、単純に「強い薬」「弱い薬」と分けるより、

どこに、どのように働く薬なのか

を考えた方が分かりやすいでしょう。

大きく考えると、

  • インスリンを出しやすくする
  • インスリンを効きやすくする
  • 糖の吸収や排泄を調節する
  • インスリンそのものを補う

といった方法があります。糖尿病情報センター

① インスリンを出しやすくする薬

膵臓からインスリンを出しやすくする薬です。

代表的なものに、

DPP-4阻害薬
SU薬
グリニド薬

などがあります。

同じ「インスリンを出す」薬でも、働き方は同じではありません。

たとえばSU薬やグリニド薬では、低血糖に注意が必要です。

一方、DPP-4阻害薬は血糖値が高いときにインスリン分泌を促すため、単独では一般に低血糖を起こしにくいという特徴があります。糖尿病情報センター

② インスリンを効きやすくする薬

インスリンが体内にあっても、十分に働きにくい状態をインスリン抵抗性といいます。

この状態を改善する方向に働く薬があります。

代表的なのが、

ビグアナイド薬(代表的な薬:メトホルミン)
チアゾリジン薬

です。

メトホルミンは主に肝臓から糖が過剰に放出されるのを抑えるなどして血糖値を下げます。

薬によって注意する副作用や、使用できる腎機能などが異なるため、定期的な検査も重要です。

③ 糖の吸収をゆっくりにする薬

**α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)**は、腸で糖質が消化・吸収される速度を遅らせ、食後の急激な血糖上昇を抑える薬です。

食後血糖を改善するため、基本的に食事の直前に服用します。

また、この薬を使用している人が低血糖を起こした場合には、砂糖ではなくブドウ糖で対処する必要があります。

薬によって「いつ飲むか」が大切なのは、このように作用の仕方が違うためです。

④ 尿に糖を出す薬

SGLT2阻害薬は、腎臓で糖が再吸収されるのを抑えて、余分な糖を尿中へ排泄することで血糖値を下げます。糖尿病情報センター

この薬は血糖値だけでなく、患者さんの状態によっては心臓や腎臓を守る効果も考慮して使用されるようになっています。

一方で、尿量の増加や脱水、尿路・性器感染症などに注意が必要です。

発熱、嘔吐、下痢などで食事や水分が十分にとれないときには特に注意が必要なので、シックデイ時の対応をあらかじめ主治医に確認しておきましょう。

⑤ GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬

最近よく耳にするようになった薬です。

GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は、血糖値が高いときにインスリンを出しやすくするなど、複数の作用によって血糖値を改善します。

食欲を抑えたり、体重を減らしたりする作用もあります。

注射薬が中心ですが、GLP-1受容体作動薬には飲み薬もあります。

単独では低血糖を起こしにくい薬ですが、ほかの糖尿病薬との組み合わせによっては低血糖に注意が必要です。

また、吐き気、下痢、便秘などの消化器症状がみられることがあります。注射薬にはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬があります。糖尿病情報センター

⑥ インスリン

インスリン製剤は、体に不足しているインスリンそのものを外から補う治療です。

1型糖尿病ではインスリン治療が基本となります。

2型糖尿病でも、

インスリンを出す力が低下している
血糖値が非常に高い
感染症や手術などで一時的にインスリンが必要

など、さまざまな理由で使用します。糖尿病情報センター

したがって、

「インスリンを使う=糖尿病が重症になった」

と単純に考える必要はありません。

必要なインスリンを補うための治療方法の一つです。

なぜ人によって薬が違うの?

ここが糖尿病治療でとても大切なところです。

同じ2型糖尿病でも、

インスリンを出す力
インスリン抵抗性
年齢
体重
腎機能
心臓病の有無
低血糖の危険性
生活スタイル

などは一人ひとり違います。

そのため、

「あの人にはこの薬が効いたから、自分にも同じ薬が一番いい」

とは限りません。

現在の糖尿病治療では、血糖値だけを見るのではなく、その人の全身状態を考えて薬を選択します。日本糖尿病学会のガイドラインでも、病態や治療歴、個別の血糖管理目標などを考慮して薬物療法を判断することが示されています。日本デザイン学会

薬が増えるのは糖尿病が悪化したから?

必ずしもそうではありません。

働き方の異なる薬を組み合わせることで、それぞれの特徴を生かして血糖値を改善できる場合があります。

また、糖尿病の薬を選ぶ目的は、単にHbA1cを下げることだけではありません。

患者さんによっては、

低血糖を避ける
体重への影響を考える
腎臓を守る
心臓への効果を考える

といった点も治療選択に関係します。

薬の数だけを見て、

「3種類だから1種類の人より重症」

と考える必要はありません。

薬を飲んでいれば食事や運動は必要ない?

薬を使用していても、食事や身体活動は糖尿病治療の大切な部分です。

ただし、

「薬を飲んでいるから、その分もっと厳しく食事制限や運動をしなければならない」

ということでもありません。

薬、食事、運動を別々に考えるのではなく、生活全体の中で無理なく続けられる治療を組み立てていくことが大切です。

自分の薬の名前を知っていますか?

糖尿病の薬をすべて覚える必要はありません。

でも、自分が使っている薬の名前は知っておくことをおすすめします。

「白い糖尿病の薬を飲んでいます」

だけでは、ほかの医療機関を受診したときや災害時などに、正確な薬が分からないことがあります。

お薬手帳を持っておくのも大切です。

また、薬によって低血糖やシックデイ時の対応が異なります。自己判断で中止したり、量を変えたりせず、分からないことは主治医や薬剤師に確認しましょう。糖尿病情報センターも、治療薬を自己判断で極端に減量・中止しないよう案内しています。糖尿病情報センター

今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病の薬は「強い・弱い」だけではなく、それぞれ働き方が違います

② 薬は血糖値だけでなく、年齢、体重、腎臓・心臓の状態、低血糖の危険性なども考えて選びます

③ 薬が増えたりインスリンを使ったりしても、それだけで「糖尿病が重症」と考える必要はありません

まとめ

糖尿病の薬には多くの種類があります。

名前を全部覚えようとすると難しく感じますが、

インスリンを出しやすくする
インスリンを効きやすくする
糖の吸収や排泄を調節する
インスリンそのものを補う

と考えると、少し分かりやすくなります。

そして糖尿病治療で大切なのは、

「一番強い薬を選ぶこと」ではなく、「その人に合った薬を選ぶこと」です。

薬の種類が増えても、インスリンが必要になっても、それを「治療の失敗」と考える必要はありません。

糖尿病の状態は時間とともに変化します。

その時々の体の状態や生活に合わせて、無理なく安全に続けられる治療を主治医と一緒に考えていきましょう。

参考文献・情報源

1.日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024

2.日本糖尿病学会.糖尿病治療ガイド

3.糖尿病情報センター.血糖値を下げる飲み薬

4.糖尿病情報センター.血糖値を下げる注射薬