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eGFRとは、腎臓が血液をろ過する力を推定した数値です。eGFRの正常値や60未満の意味、年齢との関係、クレアチニン・尿アルブミンとの違い、数値が低いときの考え方を、糖尿病専門医・腎臓専門医がわかりやすく解説します。
健康診断や血液検査の結果を見て、
「eGFRが低いと書いてあるけれど大丈夫?」
「eGFRが60未満だと腎臓病?」
「去年より下がっているけれど、このまま下がり続けるの?」
と心配になったことはありませんか?
eGFRは、腎臓の働きを知るための大切な指標のひとつです。
ただし、eGFRは1回の数値だけを見て「腎臓が悪い」「大丈夫」と判断するものではありません。
年齢や体格などの影響もありますし、脱水などによって一時的に変化することもあります。
また、糖尿病のある方では、eGFRだけでなく尿アルブミンや尿たんぱくも一緒に確認することが大切です。
この記事では、eGFRの意味や数値の見方について、できるだけわかりやすく解説します。
eGFRとは?
eGFRは、
estimated Glomerular Filtration Rate
の略で、日本語では「推算糸球体ろ過量」といいます。
少し難しい名前ですね。
簡単にいうと、
「腎臓が血液をろ過する力がどのくらいあるか」を推定した数値
と考えてください。
腎臓には「糸球体(しきゅうたい)」という小さなフィルターがたくさんあり、血液の中から不要なものを取り除いて尿をつくっています。
このフィルターが、1分間にどのくらいの血液をろ過できるかを表したものがGFRです。
ただ、実際のGFRを正確に測定するには手間がかかります。
そこで通常の診療では、血液検査で測定できる血清クレアチニン値などから計算したeGFRを、腎機能をみる指標として利用しています。
単位は、
mL/分/1.73m²
です。
検査結果には「eGFR 72」「eGFR 55」などと表示されていることが多いと思います。
eGFRの数値はどう見る?
成人のeGFRは、腎機能の程度によって次のように区分されます。
| GFR区分 | eGFR(mL/分/1.73m²) | 腎機能の目安 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または高値 |
| G2 | 60~89 | 正常または軽度低下 |
| G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 |
| G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 |
| G4 | 15~29 | 高度低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
ここで注意したいのは、
eGFRが90未満だから腎臓病、というわけではない
ということです。
たとえばeGFRが70であっても、尿たんぱくや尿アルブミンなどの腎障害を示す所見がなく、ほかに異常がなければ、それだけで慢性腎臓病(CKD)と診断されるわけではありません。
反対に、eGFRが60以上でも、尿アルブミンや尿たんぱくなどに異常が続いていればCKDに該当する場合があります。
つまり、
「eGFRだけを見る」のではなく、尿検査などと組み合わせて考えることが大切
なのです。
eGFRが60未満なら腎臓病?
健康診断で、
eGFR 58
などの結果を見て心配になる方は少なくありません。
一般に、eGFRが60未満の状態が続いていることは、CKDを考える重要な所見のひとつです。
ただし、
1回だけeGFRが60未満だったからといって、それだけですぐにCKDと判断するわけではありません。
CKDは「慢性」の腎臓病です。
そのため、腎機能の低下や尿異常などが一時的なものではなく、一定期間続いているかどうかを確認することが重要です。
また、以前の検査結果と比較することも大切です。
たとえば、
- 以前からeGFR 55前後でほぼ変わらない
- 1年前は80だったのに今回は55
- 脱水や発熱のあとに一時的に55になった
では、同じ「eGFR 55」でも意味が違います。
eGFRが60未満だった場合は、その数値だけを見て過度に心配するのではなく、過去からの推移や尿検査の結果も含めて考えることが大切です。
eGFRは年齢とともに下がる?
eGFRについて調べていると、
「年齢のせいで低くなっただけ?」
と疑問に思う方もいると思います。
腎機能は、一般的には年齢とともに低下していく傾向があります。
そのため、高齢になるほどeGFRが低い方は増えてきます。
ただし、
「年齢が高いからeGFRが低くても気にしなくてよい」という意味ではありません。
大切なのは、
- 現在のeGFR
- 以前からの変化
- 尿たんぱく・尿アルブミン
- 糖尿病や高血圧などの有無
- ほかの腎臓病の可能性
などを合わせて判断することです。
特に「去年より大きく下がっている」「数年間で少しずつ低下している」という場合には、その変化にも注目します。
eGFRが低くなる原因は?
eGFRが低くなる原因はひとつではありません。
慢性腎臓病(CKD)
糖尿病、高血圧、腎炎など、さまざまな原因によって腎機能が長期間にわたって低下することがあります。
このような状態を慢性腎臓病(CKD)と呼びます。
糖尿病や高血圧はCKDと深く関係しています。
脱水などで一時的に低下することもある
eGFRは必ずしも一定ではありません。
たとえば、
- 発熱
- 下痢・嘔吐
- 食事や水分を十分にとれていない
- 暑い時期の脱水
- 感染症
などをきっかけに、腎機能が一時的に悪化することがあります。
原因が改善すると腎機能がある程度戻ることもあります。
薬の影響
薬によって腎機能やクレアチニン値が変化する場合もあります。
ただし、
eGFRが下がったからといって、自己判断で薬を中止することはおすすめできません。
腎臓を守る目的で使われる薬でも、開始後にeGFRが一時的に変化する場合があります。
気になる場合は、処方している医師に確認してください。
eGFRが急に下がったら?
eGFRでは「現在の数値」だけでなく、どのように変化したかを見ることも重要です。
たとえば、
70 → 68 → 67
と推移している場合と、
80 → 55
と短期間で低下した場合では、考え方が違います。
急に腎機能が低下した場合には、脱水、感染症、薬剤などを含め、原因を確認する必要があります。
「去年よりかなり下がっている」という場合は、現在の数値だけを見ず、以前の検査結果も主治医に見せるとよいでしょう。
eGFRとクレアチニンは何が違う?
血液検査では、
クレアチニン(Cr)
という項目もよく見かけます。
クレアチニンは筋肉でつくられる老廃物で、主に腎臓から尿へ排泄されます。
腎臓のろ過する力が低下すると、クレアチニンが血液中にたまりやすくなります。
そのため、血清クレアチニンは昔から腎機能を見るために使われています。
そして日本人成人では、このクレアチニン値に年齢や性別などを加えて計算したものがeGFRです。
つまり、
クレアチニン:血液中で実際に測定する値
eGFR:クレアチニンなどから推定した腎臓のろ過能力
という違いがあります。
クレアチニンは筋肉量などの影響も受けるため、数値だけで単純に腎機能を判断できない場合があります。
そのため実際の診療では、クレアチニンとeGFRを合わせて確認します。
eGFRと尿アルブミンは何が違う?
ここは糖尿病のある方には、ぜひ知っておいていただきたいところです。
eGFRと尿アルブミンは、どちらも腎臓の状態を知るために重要ですが、見ているものが違います。
簡単にいうと、
eGFR:腎臓がどのくらい血液をろ過できているか
尿アルブミン:腎臓のフィルターからアルブミンが漏れていないか
を確認しています。
そのため、
eGFRが正常範囲だから尿アルブミンも正常、とは限りません。
逆も同じです。
特に糖尿病のある方では、eGFRだけでは腎臓の状態を十分に評価できないことがあります。
だからこそ、
血液検査のeGFRと、尿検査の尿アルブミンをセットで考える
ことが大切です。
関連記事:尿アルブミンとeGFRは何が違う?糖尿病の腎臓を守るために知っておきたい検査
eGFRと尿たんぱくは何が違う?
尿たんぱくも腎臓の状態を知る重要な検査です。
健康診断では、
「尿蛋白(-)」
「尿蛋白(±)」
「尿蛋白(+)」
などと表示されることがあります。
eGFRが腎臓の「ろ過する能力」を表すのに対して、尿たんぱくは本来は血液中にとどまっているはずのたんぱく質が尿に漏れていないかを調べています。
したがって、
「eGFRは問題なかったから、尿たんぱく+でも大丈夫」
とは限りません。
逆に、尿たんぱくが陰性でもeGFRが低下している場合があります。
腎臓の状態は、一つの検査だけでなく複数の検査から考えていきます。
関連記事:尿たんぱくと尿アルブミンは何が違う?
糖尿病の人がeGFRを確認する理由
糖尿病は、腎臓病と深い関係があります。
高血糖の状態が長く続くと、腎臓の細い血管や糸球体に負担がかかり、腎臓に障害が起こることがあります。
ただし、糖尿病があっても腎臓の異常は初期には自覚症状がほとんどないことがあります。
「むくんでいないから大丈夫」
「尿も普通に出ているから腎臓は問題ない」
とは限りません。
そのため、症状が出てから調べるのではなく、
定期的な血液検査と尿検査で変化を確認すること
が重要です。
また最近では、典型的に尿アルブミンが増えてから腎機能が低下する場合だけでなく、アルブミン尿が目立たないままeGFRが低下していく糖尿病の方もいることがわかっています。
そのため糖尿病のある方では、
eGFRだけ
でも、
尿アルブミンだけ
でもなく、両方を見ることが大切です。
関連記事:糖尿病になると腎臓が悪くなる?糖尿病と腎臓病の関係
eGFRを守るためにできること
「eGFRを上げるには何を食べればいいですか?」
と聞かれることがあります。
ただ、腎臓病の治療では、
eGFRの数字を一時的に上げることだけを目標にするわけではありません。
大切なのは、
これから先の腎機能低下をできるだけゆるやかにすること
です。
そのためには、原因や状態に応じて、
- 血糖を適切に管理する
- 血圧を適切に管理する
- 禁煙する
- 適切な体重を保つ
- 必要に応じて食事を見直す
- 腎臓を守る効果が期待できる薬を適切に使用する
- 定期的にeGFRや尿アルブミンを確認する
などが重要になります。
糖尿病やCKDの治療では、SGLT2阻害薬など、血糖値を下げることだけでなく腎臓を守ることも考えて使用される薬があります。
ただし、必要な治療は腎機能や年齢、糖尿病の状態、血圧、尿アルブミンなどによって異なります。
「腎臓に良いから」と自己判断で薬やサプリメントを始めるのではなく、主治医と相談しながら考えていきましょう。
関連記事:SGLT2阻害薬はなぜ腎臓を守る?
eGFRが低いときは何科を受診する?
健康診断などでeGFRが低いと言われた場合、
「何科に行けばいいの?」
と迷うかもしれません。
まずは、かかりつけ医がいる場合には相談してみてください。
糖尿病のある方であれば、糖尿病を診てもらっている医師に検査結果を見せるのもよいでしょう。
そのうえで、
- eGFRの低下が進んでいる
- 尿たんぱく・尿アルブミンが多い
- 血尿がある
- 原因がはっきりしない
- 腎機能が大きく低下している
などの場合には、腎臓内科で詳しい評価が必要になることがあります。
受診が必要かどうかはeGFRの数字だけで決まるわけではありません。
「現在のeGFR」「変化の速さ」「尿検査」「原因」をまとめて考える
ことが大切です。
まとめ|eGFRは「1回の数字」だけで判断しない
eGFRは、腎臓が血液をろ過する力を推定した大切な指標です。
ただし、
eGFRが少し低い=すぐに腎臓病が進行する
というわけではありません。
一方で、
症状がない=腎臓は大丈夫
とも限りません。
大切なのは、
- eGFRがどのくらいか
- 以前と比べてどう変化しているか
- 尿たんぱく・尿アルブミンはどうか
- 糖尿病や高血圧があるか
を合わせて考えることです。
特に糖尿病のある方では、
「eGFR+尿アルブミン」
の両方を定期的に確認しておくことが、腎臓の変化を早めに見つけるために重要です。
検査結果を見て不安になったときも、1回の数字だけを見て必要以上に心配する必要はありません。
まずは過去の結果と比べながら、主治医と一緒に確認していきましょう。
よくある質問(FAQ)
eGFRが60未満なら腎臓病ですか?
eGFRが60未満であることはCKDを考える重要な所見ですが、1回の検査だけで判断するわけではありません。過去からの推移や尿たんぱく・尿アルブミンなども合わせて評価します。
eGFRが70なら正常ですか?
eGFR 70はGFR区分ではG2に該当します。ただし、eGFRだけでCKDかどうかが決まるわけではありません。尿検査や基礎疾患、過去からの変化なども合わせて判断します。
eGFRは年齢とともに低くなりますか?
一般的に腎機能は年齢とともに低下する傾向があります。ただし「年齢のせいだから大丈夫」と一律に判断することはできません。eGFRの変化や尿検査なども確認することが重要です。
eGFRは回復することがありますか?
脱水など一時的な原因によって低下している場合には、原因が改善するとeGFRが戻ることがあります。一方、慢性的な腎障害では完全には元に戻らない場合もあります。1回の数値ではなく経過を見ることが大切です。
【内部リンク:新規記事「eGFRは回復する?下がった腎機能が戻る場合・戻りにくい場合」公開後に挿入】
eGFRとクレアチニンはどちらを見ればいいですか?
どちらか一方だけではなく、両方を確認します。クレアチニンは血液中で測定する値で、eGFRはそのクレアチニン値などから腎臓のろ過能力を推定したものです。
eGFRが正常なら腎臓は大丈夫ですか?
必ずしもそうとは限りません。eGFRが保たれていても、尿アルブミンや尿たんぱくなど腎障害を示す所見がある場合があります。特に糖尿病のある方では、血液検査と尿検査の両方を確認することが大切です。
参考文献・参考資料
- 日本腎臓学会 編.CKD診療ガイド2024.東京医学社,2024.
- 日本腎臓学会 編.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,2023.
- 日本腎臓学会 編.患者さんとご家族のためのCKD療養ガイド2024.東京医学社,2024.
- 日本糖尿病学会 編・著.糖尿病診療ガイドライン2024.南江堂,2024.
- 糖尿病情報センター.糖尿病の慢性合併症「腎症」.
- KDIGO. Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療を行うものではありません。検査結果や治療については、主治医・医療機関にご相談ください。
