体脂肪1kgを減らすには?―「約7,000kcal」をどう考えるか

食事と運動をもう一歩深く

食事と運動をもう一歩深く 第4回

「あと3kgやせてください」

健診や診察で、こんなことを言われた経験はありませんか。

でも、

「3kgって、具体的にはどうやって減らせばいいの?」

と思いますよね。

食事を半分にするのでしょうか。

毎日1時間走るのでしょうか。

それとも、ご飯を食べなければよいのでしょうか。

今回は、体脂肪とエネルギーの関係を、少しだけ数字を使って考えてみます。

体脂肪1kgには、どのくらいのエネルギーがある?

よく使われる目安として、

体脂肪1kgを減らすには、およそ7,000kcal程度のエネルギー差が必要

と考える方法があります。

「7,000kcal!」

と聞くと、とても大きな数字に感じます。

でも、ここで大切なのは、

7,000kcalを1日で減らす必要はない

ということです。

むしろ、そんなことを目指してはいけません。

1か月に分けて考えてみる

仮に、体脂肪を1か月で約1kg減らすことを考えてみます。

7,000kcalを30日で割ると、

1日あたり約230kcal

です。

つまり考え方としては、

毎日少しずつ「入ってくるエネルギー」と「使うエネルギー」の差を作り、それを積み重ねる

ということになります。

ここまで数字を小さくすると、少し現実的に感じませんか。

230kcalを全部「食べない」で作る必要はありません

ここがとても大切です。

「では毎日230kcal分、食事を減らせばいいんですね」

とは限りません。

第3回でお話ししたように、エネルギー収支には、

食事から入ってくるエネルギー

と

体が使うエネルギー

の両方があります。

ですから、

食事を少し見直す + 日常生活で少し多く動く

という組み合わせも考えられます。

食事だけを大幅に減らすより、無理なく続けられる方も多いでしょう。

「たった100kcal」でも意味がある?

「100kcalくらい減らしても、意味がないのでは?」

と思うかもしれません。

でも、毎日続けば話は変わります。

1日100kcalなら、

30日で3,000kcal

になります。

もちろん、人間の体は計算式どおりに単純に変化するわけではありません。

それでも、

小さな違いでも、長く続けば大きな違いになる

という考え方はとても重要です。

これは、私がヒルクライムをしていたときにも感じていたことです。

ヒルクライムでも「一気に」はうまくいきません

レース前だからといって、短期間に食事を極端に減らせば、体重計の数字は下がるかもしれません。

しかし、それで練習する力が落ちたり、筋肉まで減ったりすれば、肝心の自転車のパフォーマンスが低下します。

ヒルクライムでは、

体重が軽いこと

と同時に、

ペダルを踏む力を保つこと

が必要でした。

だから、単純に「食べなければよい」という話ではありません。

糖尿病の減量でも同じように、

短期間で大きく落とすことより、健康を保ちながら続けられる方法を考える

ことが大切です。

「1か月で1kg」は絶対的な目標ではありません

ここで誤解してほしくないのですが、

糖尿病の患者さんは毎月1kg減らさなければならない

という意味ではありません。

1か月1kgという数字は、今回エネルギーの考え方を理解するために使っている一例です。

減量が必要かどうか、どのくらいの速度が適切かは、一人ひとり違います。

体格、年齢、筋肉量、治療薬、合併症なども考える必要があります。

そもそも、減量する必要がない方もいます。

「7,000kcalなら必ず1kg減る」でもありません

もう一つ重要なことがあります。

人間の体は電卓ではありません。

「7,000kcalの赤字を作ったから、必ず体重がちょうど1kg減る」

というものではありません。

体重は水分によっても変化します。

減量が続けばエネルギー消費量も変化します。

食事量や活動量を完全に正確に測ることも難しいものです。

ですから、

約7,000kcalという数字は、減量を考えるための目安

として使うのがよいでしょう。

毎日カロリー計算をしなくてもいい

ここまで読むと、

「これから食べるものを全部計算しないといけないの?」

と思われるかもしれません。

必ずしもその必要はありません。

むしろ、毎日の生活の中にある「少し」を探してみます。

たとえば、

「何となく飲んでいた甘い飲み物を見直す」

「習慣になっていた間食を少し変えてみる」

「大盛りを普通盛りにしてみる」

「エレベーターだけでなく、ときどき階段を使う」

「少し遠回りして歩く」

などです。

一つ一つは小さな変化です。

しかし、

小さいから意味がないのではなく、小さいから続けやすい

とも考えられます。

運動で「食べた分を帳消し」にしなくていい

「今日は食べすぎたから、その分を全部運動で消費しなければ」

と考える必要もありません。

運動には、単にエネルギーを消費する以上の意味があります。

筋肉でブドウ糖が利用されやすくなること、インスリンの働きを改善すること、筋力や体力を保つことなどです。

運動を、

食べたことへの罰

にしてしまうと、長続きしにくくなります。

食事も運動も、

より健康な体を作るための二つの方法

として考えた方がよいでしょう。

体重が止まっても「失敗」ではありません

減量を続けていると、最初は順調に体重が減ったのに、途中からなかなか変わらなくなることがあります。

すると、

「同じことをしているのに、もうやせなくなった」

と焦ってしまいます。

しかし、体重は一直線に減るとは限りません。

水分の変動もありますし、体重が減るにつれて体が必要とするエネルギー量も変わってきます。

一時的に体重が変わらなくても、

すぐに「もっと食事を減らさなければ」と考えないこと

も大切です。

数日ではなく、もう少し長い期間で変化を見ていきましょう。

目標は「7,000kcal」ではありません

今回、あえて数字を使いました。

しかし、本当に覚えてほしいのは「7,000」という数字そのものではありません。

大切なのは、

体脂肪は一晩で増えたわけではないし、一晩で減らす必要もない

ということです。

毎日の小さな食事の工夫。

毎日の小さな活動。

それを積み重ねていく。

これは、Ikegishi Diabetes Noteで大切にしている、

「頑張る治療から、続けられる治療へ」

という考え方にもつながります。

今回のポイント

体脂肪1kgを減らすために必要なエネルギー差は、およそ7,000kcal程度が一つの目安として使われます。

これを1か月に分ければ、1日あたりでは約230kcalです。

しかし、

230kcal食べてはいけない

という意味ではありません。

食事と活動の両方を少しずつ見直し、無理のない差を長く積み重ねていく。

そして筋肉をできるだけ保ちながら、余分な体脂肪を減らしていく。

この考え方が大切です。

ところで、ここまで「エネルギー」の話をしてきましたが、

同じエネルギーなら、何を食べても同じなのでしょうか?

「糖質を減らせばやせる」

「脂質を減らす方がいい」

いろいろな話を聞きます。

次回は、いよいよ糖質・脂質と体脂肪の関係を考えてみましょう。


次回

糖質を減らせば体脂肪は減る?―糖質・脂質・エネルギーの関係

糖尿病というと、

「まず炭水化物を減らさなければ」

と思う方も多いでしょう。

糖質は血糖値に大きく影響します。しかし、血糖値を上げることと、体脂肪が増えることはまったく同じ話なのでしょうか。

第5回ではここを整理します。


医療情報について

この記事は、糖尿病の食事療法・運動療法および体重管理についての一般的な医学情報を提供するものです。「体脂肪1kgあたり約7,000kcal」は実際の体重変化を正確に予測する公式ではなく、エネルギー収支を理解するための概算です。

減量の必要性や適切な目標は、年齢、体格、筋肉量、身体活動量、治療内容、合併症などによって異なります。極端な食事制限は行わず、必要に応じて主治医や管理栄養士にご相談ください。