食事と運動をもう一歩深く 第7回
「体重を減らすために、食べる量を減らしてください」
そう言われても、
「では、何をどのくらい減らせばいいの?」
と思いますよね。
ご飯を半分にする?
夕食を抜く?
お菓子を全部やめる?
毎日カロリーを計算する?
減量というと、どうしても「我慢する食事」を想像しがちです。
でも、糖尿病の食事療法は数日間だけ行うものではありません。
大切なのは、
頑張ればできる方法ではなく、普通に続けられる方法を見つけること
だと私は考えています。
まず「全部変える」のをやめてみる
「明日から食事を変えよう」
と思うと、
朝食も変える。
昼食も変える。
夕食も減らす。
お菓子もやめる。
お酒もやめる。
と、一度に全部変えたくなることがあります。
最初の数日はできるかもしれません。
しかし、それを何か月、何年と続けられるでしょうか。
私はむしろ、
「今の食生活の中で、一番変えやすいところはどこだろう?」
と考える方が現実的だと思います。
① 飲み物を見てみる
食事を減らす前に、一度確認してほしいのが飲み物です。
甘いジュース、炭酸飲料、加糖のコーヒーや紅茶などを習慣的に飲んでいる場合、そこから糖質やエネルギーをとっています。
飲み物は食事ほど「食べた」という感覚が残らないことがあります。
そのため、
食事はそれほど多くないのに、飲み物からエネルギーが入っている
ということがあります。
毎日飲んでいるものがあれば、まずそこを振り返ってみるのも一つの方法です。
もちろん、すべての飲み物を水だけにする必要はありません。
「毎日だったものを、ときどきにする」
それだけでも一歩です。
② 「何となく食べる間食」を見つける
「お菓子は絶対に食べてはいけませんか?」
これもよく聞かれる質問です。
私は、
お菓子を一生禁止することが食事療法の目的ではない
と思っています。
考えたいのは、
「本当に食べたくて食べているのか、それとも習慣で食べているのか」
です。
テレビを見ながら何となく。
仕事の休憩になると何となく。
家に置いてあるから何となく。
こうした間食が毎日の習慣になっていることがあります。
「絶対に食べない」ではなく、
量を少なくする、毎日をときどきにする、食べる分だけ小皿に出す
などの工夫もできます。
③ 主食は「ゼロ」ではなく「量」を見る
糖尿病というと、
「ご飯を食べない方がいい」
と思う方もいます。
しかし、第5回でお話ししたように、糖質は体にとって重要なエネルギー源でもあります。
ですから、
ご飯を食べるか、食べないか
という二択だけで考える必要はありません。
たとえば大盛りが習慣になっているのであれば普通盛りにする。
いつも無意識におかわりしているのであれば、まず一杯で様子を見る。
このように、
ゼロにするのではなく、自分に合った量へ調整する
という考え方があります。
④ 「健康によさそう」でも量には注意する
ここは意外な落とし穴です。
ナッツ、オリーブオイル、アボカドなどは、健康的な食事の話でよく登場します。
しかし、
健康によい食品=いくら食べてもよい
ではありません。
第5回で説明したように、脂質は1gあたりのエネルギー量が比較的大きい栄養素です。
体によい食品でも、量が増えれば摂取エネルギーも増えます。
「何を食べるか」と同時に、
「どのくらい食べるか」
も考えましょう。
⑤ 外食は「禁止」しなくていい
糖尿病になると、
「もう外食はできない」
と思う方がいます。
そんなことはありません。
外食も生活の一部です。
ただ、外食では量が多かったり、脂質や塩分が多くなったりすることがあります。
ですから、
「大盛りを普通盛りにする」
「毎回揚げ物ではなく、別の料理も選ぶ」
「セットについてくる甘い飲み物を見直す」
など、できるところを一つ変えてみます。
完璧な外食を探す必要はありません。
⑥ 食べすぎた翌日に「罰」を与えない
誕生日、旅行、忘年会。
食べすぎる日は誰にでもあります。
そんな翌日に、
「昨日食べたから今日は何も食べない」
「昨日の分を全部運動で消費しよう」
と考える必要はありません。
一回の食事ですべてが決まるわけではないからです。
食べすぎたと思ったら、
次の食事からいつもの食事に戻す。
それくらいに考えてみましょう。
糖尿病治療では、
一回の完璧さより、長期間の習慣
の方が重要です。
カロリー計算は役に立つ。でも全員に必須ではない
第4回では、体脂肪1kgとエネルギーの関係を説明しました。
エネルギー量を知ることは、食事を理解するうえで役立ちます。
しかし、
毎食すべてを計算しなければ糖尿病の食事療法ができない
わけではありません。
数字を記録することが好きな人には向いているでしょう。
一方、それが大きな負担になる人もいます。
そんな場合には、
「いつものご飯を少しだけ減らす」
「毎日の甘い飲み物を変える」
「間食の回数を減らす」
といった、行動で決める方法もあります。
ヒルクライムでも「続かない減量」は意味がありませんでした
ヒルクライムレースでは、体重が軽い方が有利です。
だからといって、レースまで毎日空腹を我慢し続ければよいわけではありません。
練習するためのエネルギーも必要です。
筋肉も維持したい。
そして何より、無理な方法は長く続きません。
そこで、
「何を全部やめるか」ではなく、「どこなら少し調整できるか」
を考えることが大切になります。
糖尿病治療では、さらに長い時間軸で考える必要があります。
レースにはゴールの日がありますが、
糖尿病との付き合いには「この日まで我慢すれば終わり」という日はありません。
だからこそ、続けられる方法が大切なのです。
「80点を続ける」という考え方
食事療法というと、100点を取らなければいけないように感じるかもしれません。
でも、
100点の食事を3日間続けてやめてしまうより、
無理のない食事を長く続ける方が、結果として大きな違いになる
ことがあります。
今日は少し食べすぎた。
運動もできなかった。
そんな日があっても構いません。
翌日からまた戻ればよいのです。
食事療法は、
失敗しないことではなく、戻れること
も大切です。
自分の「一つ」を探してみる
この記事を読んだからといって、明日から全部変える必要はありません。
まず一つだけ探してみてください。
「これなら少し変えられそう」
というものです。
甘い飲み物かもしれません。
間食かもしれません。
ご飯の盛り方かもしれません。
外食の選び方かもしれません。
人によって違っていいのです。
そして、それが普通になったら次の一つを考える。
小さな変化を積み重ねる。
これが、続けられる食事療法につながります。
今回のポイント
減量のために食事を見直すとき、
「何を禁止するか」から始める必要はありません。
飲み物、間食、主食の量、外食など、今の生活の中から変えやすいところを一つ探してみましょう。
そして、
一回の食事より長期間の習慣を見る。
完璧を目指すのではなく、続けられる方法を探す。
それがこのサイトで大切にしている、
「頑張る治療から、続けられる治療へ」
という考え方です。
ここまで第3~7回では、主に「食べる側」から体重管理を考えてきました。
次回からは、もう一方の主役、
「動くこと」
へ進みます。
次回
有酸素運動で脂肪は燃える?―ウォーキングと自転車をどう考えるか
「脂肪を燃やすなら20分以上歩かないと意味がない」
そんな話を聞いたことはありませんか?
では10分のウォーキングは無駄なのでしょうか。
そして、ウォーキングと自転車では何が違うのでしょう。
第8回では、私自身が長く続けてきた自転車も例にしながら、有酸素運動と体脂肪・血糖の関係を説明します。
医療情報について
この記事は糖尿病の食事療法・体重管理について一般的な医学情報を提供するものです。適切な食事量や減量目標は、年齢、体格、身体活動量、糖尿病治療薬、腎機能、栄養状態などによって異なります。
インスリンや低血糖を起こす可能性のある薬を使用している方、腎臓病などで食事療法を行っている方、低栄養や体重減少がある方は、自己判断で食事量を大幅に減らさず、主治医や管理栄養士にご相談ください。

