糖尿病の合併症とは?

糖尿病では、血糖値が高い状態が長く続くと、少しずつ血管や神経に負担がかかります。

糖尿病の難しいところは、血糖値が高くても、初めのうちはほとんど症状がないことがあるという点です。

「痛くない」「苦しくない」からといって、体への影響がまったくないとは限りません。

高血糖の状態が長く続くと、目、腎臓、神経、心臓、脳、足など、さまざまな場所に合併症が起こることがあります。

しかし、ここで大切なのは、

「糖尿病になったら必ず合併症になる」ということではありません。

血糖をできるだけ良い状態に保ち、さらに血圧や脂質、喫煙などにも注意しながら治療を続けることで、合併症のリスクを減らすことができます。

糖尿病治療の大きな目的は、単に血糖値やHbA1cを下げることではありません。

将来の合併症をできるだけ防ぎ、健康な人と変わらない生活の質と寿命を目指すことです。

糖尿病の合併症にはどんなものがあるの?

まず知ってほしい「3つの合併症」

糖尿病の合併症として、まず知っておきたいのが、

① 目(糖尿病網膜症)
② 腎臓(糖尿病性腎症)
③ 神経(糖尿病性神経障害)

の3つです。

これらは、主に細い血管が長い間高血糖の影響を受けることで起こるため、**「細小血管合併症」**と呼ばれます。

昔から「し・め・じ」と覚えることもあります。

し:神経
め:目
じ:腎臓

ただし、糖尿病で注意しなければならないのは、この3つだけではありません。

心臓や脳などの太い血管にも動脈硬化が起こりやすくなります。


① 目 ― 糖尿病網膜症

目の奥には「網膜」という、ものを見るために重要な組織があります。

高血糖の状態が長く続くと、網膜にある細い血管が傷つき、糖尿病網膜症を起こすことがあります。

注意したいのは、初期には自覚症状がほとんどないことがあることです。

「よく見えているから大丈夫」とは限りません。

進行すると視力が低下し、重症の場合には失明につながることもあります。

そのため、糖尿病と診断されたら、血糖管理だけでなく定期的に眼科で眼底を診てもらうことが大切です。


② 腎臓 ― 糖尿病性腎症

腎臓には、血液から不要なものを取り除くための細い血管がたくさんあります。

高血糖が長く続くと、この血管が傷つき、腎臓の働きが少しずつ低下することがあります。

初期には症状がほとんどなく、尿アルブミン(尿蛋白)などの検査で初めて異常がわかることがあります。

進行すると慢性腎臓病(CKD)となり、さらに腎機能が低下すると透析などの腎代替療法が必要になる場合があります。

だからこそ、症状がなくても、尿検査と血液検査で腎臓の状態を定期的に確認することが重要です。


③ 神経 ― 糖尿病性神経障害

高血糖の状態が長く続くと、神経にも障害が起こることがあります。

特に足先から、

しびれる、ピリピリする、痛い、感覚が鈍い

といった症状が現れることがあります。

一方で、「痛くない」ことが必ずしも良いとは限りません。

足の感覚が鈍くなると、小さな傷や靴ずれに気づかず、傷が悪化してしまうことがあります。

そのため糖尿病では、日頃から自分の足を見ることも大切な治療の一つです。

糖尿病は「心臓」と「脳」にも関係する

糖尿病では、目・腎臓・神経だけでなく、心臓や脳の血管にも注意が必要です。

高血糖の状態が長く続くと、血管が傷つき、動脈硬化が進みやすくなります。

さらに、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満などが重なると、動脈硬化の危険性はさらに高くなります。

動脈硬化が進むと、

心臓では、狭心症や心筋梗塞
脳では、脳梗塞

などを起こすことがあります。

これらは命にかかわることもあるため、糖尿病治療では血糖だけを見るのではなく、血圧やコレステロール、喫煙なども含めて管理することが大切です。


足の血管にも注意が必要

動脈硬化は心臓や脳だけでなく、足の血管にも起こります。

足へ流れる血液が少なくなると、

歩くとふくらはぎが痛くなる、足が冷たい、傷が治りにくい

といった症状が現れることがあります。

これを**末梢動脈疾患(PAD)**といいます。

糖尿病では、先ほど説明した神経障害によって傷に気づきにくくなることもあります。

そこに血流の低下や感染が重なると、小さな傷が重症化することがあります。

そのため、「足を見る」ことは糖尿病の大切な自己管理の一つです。

合併症は「症状が出てから」では遅いことがある

糖尿病の合併症の難しいところは、初期にはほとんど症状がないことがあることです。

目が見える。
腎臓の痛みもない。
普通に歩ける。

それでも、体の中では少しずつ変化が進んでいることがあります。

だから糖尿病では、

「症状が出たら検査する」のではなく、「症状がないうちから定期的に調べる」ことが大切です。

血糖やHbA1cだけでなく、眼底検査、尿検査、腎機能、血圧、脂質、足の状態などを定期的に確認していきます。


今日覚えてほしい3つのこと

① 糖尿病は、目・腎臓・神経だけの病気ではない
② 心臓・脳・足の血管にも影響する
③ 症状がないうちから合併症を調べることが大切

糖尿病治療の目的は、単にHbA1cを下げることではありません。

合併症をできるだけ防ぎ、健康な人と変わらない生活の質と寿命を目指すことが、本当の目標です。