糖尿病のために運動をするとき、
「ゆっくり歩くだけでは意味がない?」
「汗をたくさんかいた方が血糖値は下がる?」
「息が切れるくらい頑張らないと運動にならない?」
と思う方もいるかもしれません。
運動というと、
「きついほど効果がある」
というイメージを持ちやすいものです。
しかし、糖尿病の運動療法では、必ずしも激しい運動をする必要はありません。
大切なのは、自分の体力や体調に合った運動を、安全に続けることです。
激しい運動ほど血糖値が下がる?
運動すると筋肉がブドウ糖を利用するため、血糖値の改善につながります。
しかし、
「運動を激しくすればするほど、血糖値が下がる」
という単純な関係ではありません。
運動の種類や強さ、時間、食事との時間関係、そのときの血糖値などによって、血糖値の動きは変わります。
むしろ強い運動では、体が運動という負荷に対応するために血糖値を上げる方向に働くホルモンが増え、一時的に血糖値が上昇することもあります。
運動直後の血糖値が高かったからといって、
「もっと激しく運動しなければ」
と考える必要はありません。
汗をかけばかくほど効果がある?
汗の量も、運動の効果を表すものではありません。
汗は体温を調節するために出るものです。
気温や湿度、その人の体質などによっても汗の量は大きく変わります。
たくさん汗をかいたから、
「今日は糖分をたくさん燃やした」
とは限りません。
反対に、あまり汗をかかなかったからといって、運動に意味がなかったわけでもありません。
汗の量を運動の成績表にしないようにしましょう。
どのくらいの強さで運動すればいい?
運動の強さを考える方法はいくつかありますが、一般の方には、
「少し息が弾むけれど、無理なく続けられる」
くらいを一つの目安として考えると分かりやすいでしょう。
ウォーキングなら、全力で歩く必要はありません。
最初はゆっくり歩き、慣れてきたら自分の体力に合わせて少し速くする方法でも構いません。
運動習慣がほとんどなかった方では、
「まず体を動かす」
ところから始めること自体が大切です。
「ゆっくり歩く」でも意味はある?
もちろんです。
高齢の方、体力が低下している方、これまで運動をほとんどしてこなかった方にとっては、ゆっくりしたウォーキングでも大切な身体活動になります。
速く歩くことばかりを目標にすると、疲れて続かなかったり、転倒したりすることもあります。
また、
「今日は体調がよいから少し速く歩く」
「今日は疲れているからゆっくり歩く」
というように、その日の状態によって運動の強さを変えても構いません。
毎回同じ強さで運動する必要はありません。
短い時間でも意味があります
「運動するなら30分以上やらないと意味がない」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、まとまった時間が取れないからといって、運動をあきらめる必要はありません。
10分程度歩く、あるいは生活の中でこまめに体を動かすところから始める方法もあります。
特に運動習慣がない方では、
「長く運動すること」より、「運動を始めること」
の方が大切な場合があります。
激しい運動が好きな人はしてはいけない?
激しい運動がすべて悪いわけではありません。
もともと運動習慣があり、体力があって、スポーツを楽しんでいる方もいます。
そのような方まで、すべて軽い運動にする必要はありません。
ただし、糖尿病がある場合には、治療内容や合併症によって注意点が異なります。
特に、
・心臓や血管の病気がある
・糖尿病の合併症が進んでいる
・足に傷や潰瘍がある
・関節などに問題がある
・インスリンや低血糖を起こす可能性のある薬を使用している
といった方では、運動の種類や強さについて主治医に相談した方がよい場合があります。
急に激しい運動を始めない
これまでほとんど運動していなかった方が、
「糖尿病と言われたから、明日から走ろう」
と急に激しい運動を始めることはおすすめできません。
体が運動に慣れていない状態で急に負荷を増やすと、筋肉や関節を痛めたり、体調を崩したりすることがあります。
まずは歩くことなど、取り組みやすい運動から始めて、少しずつ体を慣らしていきましょう。
最初から100点の運動を目指す必要はありません。
苦しい運動を我慢して続けない
運動中に多少息が弾むことはあります。
しかし、
胸の痛み
強い息苦しさ
めまい
ふらつき
冷や汗
いつもと違う強い動悸
などがある場合には、無理に運動を続けないでください。
運動を中止し、症状が強い場合や改善しない場合には医療機関への相談・受診が必要です。
「運動だから苦しくて当然」
と我慢しないことが大切です。
運動の強さより「続けられるか」を考える
糖尿病治療では、1回だけ非常に激しい運動をすることよりも、生活の中で体を動かす習慣を作ることが大切です。
たとえば、
「日曜日に2時間頑張って歩いて、その後は疲れて何日も動かない」
より、
「無理のない範囲で、生活の中に少しずつ運動を取り入れる」
方が続けやすいでしょう。
運動は、自分の限界に挑戦する競技である必要はありません。
運動の強さについて覚えておきたい3つのポイント
① 激しい運動ほど血糖値が下がる、というわけではありません
② 汗の量や苦しさで運動の効果を判断する必要はありません
③ 自分の体力に合った、無理なく続けられる強さを選びましょう
まとめ
糖尿病の運動療法というと、
「たくさん歩く」
「速く歩く」
「汗をかく」
「息が切れるまで頑張る」
ことが大切だと思われがちです。
しかし、運動は苦しさを競うものではありません。
特に運動習慣がなかった方では、まず少し体を動かすことから始めればよいのです。
慣れてきたら、体調や体力に合わせて少しずつ調整していきましょう。
「きつい運動」より「続けられる運動」を。
糖尿病のためだけではなく、これからも元気に生活するために、自分に合った運動を見つけていきましょう。
