糖尿病のために運動をして、運動後に血糖値を測ってみたら、
「運動したのに血糖値が上がっている」
「一生懸命運動したのに、なぜ?」
「運動が自分には合っていないの?」
「もっと運動した方がいい?」
と驚くことがあります。
運動すると筋肉がブドウ糖を利用するため、一般には血糖管理の改善につながります。
しかし、
運動をすれば、その直後の血糖値が必ず下がるわけではありません。
特に強い運動では、一時的に血糖値が上昇することがあります。
だからといって、
「運動が失敗だった」
という意味ではありません。
運動すると筋肉はブドウ糖を使います
体を動かすと、筋肉はエネルギーを必要とします。
そのエネルギー源の一つとして使われるのがブドウ糖です。
そのため、ウォーキングなどの運動によって筋肉でブドウ糖が利用され、血糖値が下がることがあります。
また、運動を続けることはインスリンの働きを改善し、長期的な血糖管理にも役立ちます。
これが、
「糖尿病には運動が大切」
と言われる理由の一つです。
では、なぜ運動したのに血糖値が上がるの?
私たちの体は、運動中にもエネルギーを必要とします。
特に強い運動では、
「もっとエネルギーが必要だ」
と体が判断します。
すると、アドレナリンなどのホルモンの働きによって、肝臓からブドウ糖が血液中へ送り出されます。
筋肉がブドウ糖を使う一方で、肝臓からもブドウ糖が供給されるのです。
そのバランスによっては、運動中や運動直後に血糖値が一時的に上がることがあります。
激しい運動ほど血糖値が下がるわけではありません
「運動で血糖値が下がるなら、激しく運動した方がもっと下がるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
たとえば、
全力に近い運動
かなり息が上がる運動
強い筋力トレーニング
競技として行うような高強度の運動
では、体への負荷が大きくなります。
その結果、血糖値を上げる方向に働くホルモンの影響が強くなり、一時的に血糖値が上がることがあります。
つまり、
「きつい運動ほど、その場の血糖値がよく下がる」わけではありません。
運動後に血糖値が上がったら運動をやめた方がいい?
運動後に血糖値が少し上がったという理由だけで、
「自分には運動は向いていない」
とやめる必要はありません。
血糖値は、運動だけで決まっているわけではないからです。
食事の内容や時間。
薬やインスリン。
睡眠。
ストレス。
体調。
運動の強さ。
さまざまな要因によって変化します。
1回の運動前後の血糖値だけで、運動の効果を判定しないことが大切です。
「血糖値が上がったから、もっと運動しよう」は注意
運動後に血糖値が上がっていると、
「運動が足りなかったのかな」
と思って、さらに激しい運動をしたくなるかもしれません。
しかし、
血糖値を下げるために運動の強さをどんどん上げることはおすすめできません。
強い運動によって、さらに一時的な血糖上昇がみられることもあります。
また、無理な運動はけがや体調不良につながります。
血糖値は、
運動量を決めるための「罰ゲームの点数」ではありません。
数字を見て運動を追加するのではなく、予定していた運動を無理なく続けることを考えましょう。
ウォーキングでも血糖値が上がることはある?
あります。
激しい運動ほど起こりやすい現象ではありますが、運動前後の血糖値はさまざまな影響を受けています。
たとえば朝のウォーキングでは、何も食べていなくても、朝に血糖値を上げるホルモンや肝臓からのブドウ糖供給などの影響を受けることがあります。
そのため、
「軽い運動なのに血糖値が上がった=異常」
と単純には判断できません。
運動前後の数字を比べすぎない
血糖測定をしている方は、
運動前 150mg/dL
運動後 130mg/dL
なら、
「今日は成功」
と思うかもしれません。
一方、
運動前 150mg/dL
運動後 170mg/dL
なら、
「今日は失敗」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、このような評価はおすすめできません。
運動による血糖値への影響は、運動直後の一つの数字だけでは判断できないからです。
運動を続ける目的は、毎回その場で血糖値を下げることだけではありません。
運動には血糖値以外の効果もあります
運動には、
筋力や筋肉を保つ
体力を保つ
心臓や血管の健康につなげる
日常生活を動きやすくする
気分転換になる
など、さまざまな意味があります。
特に年齢を重ねると、
「HbA1cを下げるため」だけではなく、「これからも自分の足で生活するため」
という運動の意味も大きくなります。
運動直後の血糖値だけを見て、これらの効果を忘れないようにしましょう。
血糖値が高いときに激しい運動をしてもいい?
ここは注意が必要です。
血糖値が高いと、
「運動して下げよう」
と思うことがあります。
しかし、高血糖のときに激しい運動をすればよいとは限りません。
特に、
強い口渇
吐き気や嘔吐
腹痛
強いだるさ
脱水
いつもと違う呼吸
意識がおかしい
などがある場合には、運動を控えて医療機関への相談が必要です。
糖尿病性ケトアシドーシスなど、緊急性の高い状態が隠れている可能性があります。
1型糖尿病の方など、ケトン体の確認について主治医から指示を受けている場合には、その指示に従ってください。
高血糖を運動で無理に下げようとしないことが大切です。
血糖値を下げるためなら軽い運動の方がいい?
ウォーキングなどの無理のない有酸素運動は、多くの方が取り入れやすい運動です。
だからといって、
「激しい運動は糖尿病に悪い」
ということでもありません。
体力があり、持病や合併症などに問題がなければ、スポーツや強度の高い運動を楽しんでいる糖尿病の方もいます。
大切なのは、
その人に合った運動を安全に行うことです。
糖尿病だから好きなスポーツをすべてやめる必要はありません。
筋トレで血糖値が上がっても意味はある?
筋力トレーニングでも、強度によっては運動直後に血糖値が上がることがあります。
しかし、それだけで筋トレに意味がないとは言えません。
筋肉を維持することは、ブドウ糖を利用する体の機能だけでなく、将来の生活機能を保つうえでも大切です。
運動直後の血糖値と、長期的な運動の価値は分けて考えましょう。
運動後の血糖上昇が何度も続く場合は?
同じような運動をするたびに大きく血糖値が上がる場合や、高血糖が長く続く場合には、
「運動だから仕方がない」
と決めつけないことも大切です。
食事、薬、インスリン、運動の時間や強さなどが関係している可能性があります。
記録がある場合には診察時に主治医へ見せると、血糖変化を考える手がかりになります。
薬やインスリンを自己判断で増減しないようにしましょう。
「汗をかいた量」で効果を判断しない
「たくさん汗をかいたから、今日は血糖値が下がるはず」
と思うこともあります。
しかし、汗の量は気温や湿度、体質などにも左右されます。
汗をたくさんかくことが、糖尿病の運動療法の目標ではありません。
運動は苦しいほど効果があるわけでもありません。
「今日はあまり汗をかかなかったから意味がない」
と考えなくても大丈夫です。
運動と血糖上昇について覚えておきたい3つのポイント
① 運動をすると、血糖値が一時的に上がることがあります
② 特に強い運動では、血糖値を上げるホルモンなどの影響を受けることがあります
③ 運動直後の血糖値だけで、運動の成功・失敗を判断しないようにしましょう
まとめ
「糖尿病には運動がよい」
と聞いて運動したのに、血糖値が上がった。
それを見れば、
「せっかく頑張ったのに」
と思うのは自然なことです。
しかし、運動中には筋肉がブドウ糖を使う一方で、体は必要なエネルギーを確保するために肝臓からブドウ糖を供給します。
特に強い運動では、その影響によって一時的に血糖値が上がることがあります。
だから、
「運動後に血糖値が上がった=運動が無駄だった」ではありません。
また、
「血糖値が高い=もっと激しく運動しなければ」でもありません。
運動の価値は、一回の血糖値だけでは決まりません。
血糖管理だけでなく、筋肉、体力、心臓や血管、そして将来の生活を守ることも運動の大切な目的です。
運動を血糖値の数字だけで採点しない。
無理なく、安全に、長く続けられる運動を大切にしていきましょう。
