糖尿病の患者さんから、
「食後の血糖値が200mg/dLを超えました。大丈夫でしょうか?」
「食後は血糖値が上がって当然ではないのですか?」
「朝の血糖値は正常なのにHbA1cが高いのはなぜですか?」
「食後血糖を下げるには、ご飯を減らすしかありませんか?」
と聞かれることがあります。
食事をすれば、血糖値は上がります。
ですから、
「食後に血糖値が上がった=異常」ではありません。
大切なのは、どのくらい上がるのか、どのくらい続くのか、そしてHbA1cなど全体の血糖管理とどう関係しているのかを見ることです。
- なぜ食事をすると血糖値が上がるの?
- 食後の血糖値は何mg/dLまでならいい?
- 「食後2時間値」とは?
- 食後200mg/dLを超えたらすぐ危険?
- 朝の血糖値が良ければ安心?
- HbA1cがそれほど高くなくても食後血糖は高いことがある?
- 食後血糖が上がりやすい食事は?
- 甘いものだけが血糖値を上げるの?
- 食べる順番で食後血糖は変わる?
- ゆっくり食べることにも意味はある?
- 食後に歩くのは意味がある?
- 食後血糖が高ければ薬を追加する?
- 食後血糖を下げるために、ご飯を抜けばいい?
- 1回の高値より「パターン」を見ましょう
- 高い数字を見ても自分を責めないでください
- こんな高血糖には注意してください
- 今日覚えてほしい3つのこと
- まとめ
- 参考文献・情報源
なぜ食事をすると血糖値が上がるの?
食事に含まれる炭水化物などは、消化・吸収されてブドウ糖となり、血液中に入ります。
そのため食後には血糖値が上昇します。
すると膵臓からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖を体の細胞で利用したり、蓄えたりする方向に働きます。
糖尿病では、
インスリンの分泌が十分でない
インスリンの効き方が弱くなっている
などのため、食後の血糖値が高くなりやすくなります。
食後の血糖値は何mg/dLまでならいい?
ここで注意したいのは、すべての人に共通する一つの数字だけで判断しないことです。
血糖管理の目標は、
年齢
糖尿病の種類
治療内容
低血糖の危険性
合併症
生活状況
などによって異なります。
また、「食後」といっても、食べ始めてからどのくらい経過した時点で測ったのかによって血糖値は違います。
そのため、
「食後○mg/dLを1回超えたから危険」
と単純には判断できません。
「食後2時間値」とは?
食後血糖について話すときには、食後2時間値がよく使われます。
ただし、自宅で測定する場合には、
食事開始から測ったのか
食べ終わってから測ったのか
によって意味が変わってしまいます。
食後血糖を比較する場合には、できるだけ同じ条件・同じタイミングで測ることが大切です。
主治医から「食後2時間に測ってください」と指示されている場合には、具体的にいつから2時間と数えるのかも確認しておくとよいでしょう。
食後200mg/dLを超えたらすぐ危険?
1回200mg/dLを超えたというだけで、直ちに緊急事態というわけではありません。
たとえば、
何を食べたか
どのくらい食べたか
測定した時間
体調
運動量
などによって血糖値は変化します。
重要なのは、
食後の高い血糖値が繰り返されているか
です。
毎日のように食後高血糖が続いている場合には、治療や食事などを見直す材料になります。
朝の血糖値が良ければ安心?
必ずしもそうとは限りません。
たとえば、
朝食前 110mg/dL
であれば、「それほど高くない」と感じるかもしれません。
しかし、食後に大きく上昇している場合には、HbA1cが高くなることがあります。
つまり、
空腹時血糖だけでは、一日の血糖状態をすべて把握することはできません。
「朝の血糖値は悪くないのにHbA1cが高い」
という場合には、食後の血糖上昇が関係していないか考えることがあります。
HbA1cがそれほど高くなくても食後血糖は高いことがある?
あります。
HbA1cは、ある程度長い期間の血糖状態をまとめて見る指標です。
そのため、
食後はかなり高い
↓
その後は低くなる
というように血糖値の変動が大きい場合、その変化のすべてをHbA1cだけから知ることはできません。
特に低血糖も起こしている場合には、
「HbA1cが低いから血糖管理は完璧」
とは限りません。
HbA1cと実際の血糖値を組み合わせて考えることが大切です。
食後血糖が上がりやすい食事は?
一般に、炭水化物を多く含む食事は食後血糖に大きく影響します。
たとえば、
ご飯
パン
麺類
菓子類
甘い飲み物
などです。
ただし、
「炭水化物=悪いもの」ではありません。
炭水化物は重要な栄養素です。
糖尿病だからといって、炭水化物を極端に減らせばよいわけではありません。
量だけでなく、食事全体の内容や食べ方を考えます。
甘いものだけが血糖値を上げるの?
いいえ。
「砂糖を使っていないから血糖値は上がらない」
とは限りません。
ご飯、パン、麺類などに含まれる炭水化物も、消化されて血糖値に影響します。
反対に、
「甘くないから血糖値に関係ない」
とも限りません。
患者さんが食後血糖を考えるときには、「甘いかどうか」だけではなく、食事全体を見ることが大切です。
食べる順番で食後血糖は変わる?
食べる順番によって、食後の血糖上昇が緩やかになる可能性があります。
たとえば、野菜などを先に食べる方法が知られています。
ただし、
食べる順番だけで、食事量を気にしなくてよくなるわけではありません。
野菜を先に食べたから、その後のご飯やデザートをいくら食べても大丈夫、ということではありません。
食べる順番は、食事療法の一つの工夫として考えるとよいでしょう。
ゆっくり食べることにも意味はある?
早食いでは、短時間に多くの食事をとりやすくなります。
ゆっくり食べることで、食事量を調整しやすくなることがあります。
「食後血糖を下げるために30回噛まなければならない」
というように厳密に考える必要はありません。
まずは、
食事を急いで流し込まない
ことを意識する程度でもよいでしょう。
食後に歩くのは意味がある?
食後の軽い身体活動は、食後血糖の上昇を抑えるのに役立つことがあります。
必ず長時間運動する必要はありません。
すでに別の記事で紹介したように、食後に短時間歩くことも選択肢の一つです。
ただし、
インスリンを使用している
低血糖を起こす可能性のある薬を使用している
足に傷がある
体調が悪い
などの場合には注意が必要です。
食後高血糖を下げるために、無理に激しい運動をする必要はありません。
食後血糖が高ければ薬を追加する?
食後血糖が高いというだけで、自動的に薬を増やすわけではありません。
まず、
どの時間帯に高いのか
食事内容はどうか
空腹時血糖はどうか
HbA1cはどうか
低血糖はないか
現在どの薬を使用しているか
などを確認します。
そのうえで必要であれば、薬の種類や量、使用する時間などを主治医が検討します。
食後の数字を見て、自分で薬やインスリンを追加しないでください。
食後血糖を下げるために、ご飯を抜けばいい?
おすすめできません。
「食後血糖が上がるのはご飯のせいだから、ご飯を食べなければいい」
と考えるのは単純すぎます。
極端な炭水化物制限や食事制限によって、
必要なエネルギーが不足する
体重が減りすぎる
筋肉量が減る
治療内容によっては低血糖を起こす
などの問題が生じることがあります。
特に高齢の方や痩せている方では注意が必要です。
食後血糖だけを下げることが糖尿病治療の目的ではありません。
1回の高値より「パターン」を見ましょう
食後血糖を見るときに大切なのは、前の記事と同じくパターンです。
たとえば、
朝食後だけ高い
夕食後だけ高い
麺類を食べた日に高い
外食した日に高い
食後に歩いた日は上がりにくい
などです。
こうした傾向が分かれば、生活を大きく変えなくても改善できる部分が見つかることがあります。
血糖測定は、
食事の「合格・不合格」を判定するものではなく、自分の血糖値の特徴を知るための道具
として使いましょう。
高い数字を見ても自分を責めないでください
食後血糖を測ると、
「こんなに上がったのは食べ方が悪かったからだ」
と落ち込むことがあります。
しかし、食後血糖には、
食事だけでなく
インスリン分泌
インスリンの効き方
運動
体調
薬
なども関係しています。
高い数字は、
「失敗した」という判定ではなく、「こういうときに上がりやすい」という情報
です。
その情報を次の治療に生かせばよいのです。
こんな高血糖には注意してください
食後に一時的に高くなることと、危険な高血糖は分けて考える必要があります。
高血糖が続き、
強い口渇
尿が非常に多い
吐き気・嘔吐
腹痛
強い倦怠感
水分がとれない
いつもと違う呼吸の苦しさ
などを伴う場合には、早めに医療機関へ相談してください。
特に意識がもうろうとしている、反応がおかしい、強い呼吸困難がある場合には緊急の対応が必要です。
今日覚えてほしい3つのこと
① 食事をすれば血糖値が上がるのは自然な反応です
② 1回の食後血糖だけではなく、HbA1cや空腹時血糖と合わせて「繰り返すパターン」を見ることが大切です
③ 食後血糖を下げるために、自己判断で薬を増やしたり、食事を極端に減らしたりする必要はありません
まとめ
食後に血糖値が上がること自体は異常ではありません。
大切なのは、
「どこまで上がったか」という一つの数字だけではなく、その血糖上昇が繰り返されているか、全体の血糖管理にどう影響しているかを見ることです。
朝の血糖値が良くても、食後に大きく上昇している場合があります。
一方で、食後に一度高い数字が出ただけで、糖尿病が急に悪化したわけでもありません。
食後血糖が高いと、
「ご飯をもっと減らそう」
「食事を抜こう」
「薬を追加しよう」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、まず必要なのは原因を知ることです。
食事の内容や量、食べ方、身体活動、薬などを一緒に見直していきます。
そして血糖値は、
あなたの食事を採点する数字ではありません。
自分の血糖値の特徴を知り、無理なく続けられる治療を考えるための情報として利用していきましょう。
